生駒山地の東に低い山並みが南北に伸びている。一般的に矢田丘陵と
呼ばれている。南北に19kmもあるが最高所は340mにすぎない。
丘陵と呼ばれるだけに、遠目に見るとほぼ平坦なスカイラインである。
阪神尼崎駅で奈良行き快速急行に乗車し、生駒駅で普通に乗り換えて
東生駒駅で下車する。築堤の上にある駅で外観は新神戸駅に似ている。
昭和43年開業、当時は相当モダンな雰囲気の駅舎だったに違いない。
東生駒駅から矢田丘陵登山口までは徒歩10分。初めて降りた駅だが
その高級住宅ぶりに驚いた。芦屋で云うと六麓荘とまではいかないが
岩園町ぐらいの邸宅が並んでいる。駅に近くて利便性では遥かに勝る。
マンションの間が登山口。此処から稜線まで階段道が続く。この日の
一番苦しい部分だ。とはいっても10分弱で主稜線に到着してしまう。
東生駒駅の標高が135mもあり、主稜線に出た所が210mなのだ。
登りきると巨大な排水タンクや電波塔。この先にはゴミ焼却場もある。
北向きの道標に展望台って記されているが、距離が分からず往復する
のは止めたが、後でグーグルマップを見ると至近であったので大失敗。
まあ生駒山が見えるだけだったようだが、ちょっと残念。というのも
此の先で眺望に期待できる箇所は限られている。南下して行くと右は
ゴミ焼却場、左は道路で山に入った感じはしない。さてどうなるのか。
つかのま樹林帯を歩くと突然に交通量の多い自動車道路に飛び出した。
信号も横断歩道もない。県道だがすぐ東に阪奈道路のインターが有る。
車列が途切れるのを待って渡ると、そこは帝塚山大学の正門脇だった。
学生は横断しないのかと思ったら、構内にバス停があるので渡る人は
少ないよう。椚(くぬぎ)峠という風雅な名前の場所だとは後で知る。
緩やかなアップダウンの道。植林帯は現れず雑木林が続くのは嬉しい。
路傍に神武峯と記された私設道標を見る。藪道を入ると12cm角の
四等三角点(点名・山ノ奥)があった。或る意味珍しい。四等は三等
の倍の数あるはずだが、普通に山歩きしていて余り見かけた事がない。
黄葉にはまだ早かったよう。緑色から黄緑色に変わりつつあるところ。
此処までトレイルランナー二人に出会っただけ。日曜日なのに少ない。
住宅街が山際に迫っているので、散歩する人がいても良いと思うけど。
榁木峠に出て来た。榁(ムロ)は杜松(ネズ)の古名であるのだとか。
此の道は一度横断した事がある。縦走路は少し西側に下った所に続く。
峠道には農家が数軒残っており、収穫した穀類を天日干しされていた。
峠の西側斜面が田畑になっているが、ハイカーが侵入するのを極端に
嫌っておられるよう。やたら進入禁止の貼紙が有る。何か有ったにの
だろう。榁木峠以南は道標等の雰囲気が変わる。行政区域が違うのか。
林道状の広い道を辿って行くと東屋の有る場所についた。北側の藪の
中に340mの標高点が打ってあり、一応そこが矢田山最高所である。
まほろば展望休憩所と云い、奈良県営の矢田山遊びの森の施設だそう。
その名に反し展望はごく僅かだが、若草山の草原が明瞭に視認できる。
という事は奈良市街や県庁も見えているはずで、そこを狙って伐採さ
れたのだろう。東屋でオニギリ3個の大休止。少し寒く上着を羽織る。
展望所から少し南側に移動すると立派な展望台があった。高さは8m。
これも県の施設だ。周囲も植栽されて綺麗な園地になっている。但し
ベンチ等の施設が無いのが残念に思われる。とりあえず登ってみよう。
周囲の木々が高くて展望は西側の一部のみで、生駒山が見えるように
伐採されている。後から奈良県のサイトを見ると「頂上にふさわしく
360度の奈良県が見渡せます」って書いてある。ちょっとどうだろ。
まだ々新しい施設だし周囲の木々の様子から見て、完成当初も展望は
そんなに眺望は良くなかったはず。展望台の設置からホームページの
更新まで業者に丸投げって感じ。まあそんなに期待していた訳でなし。
榁木峠以南は日曜らしく、ハイカーやトレイルランナーに良く出会う。
南僧坊谷池という溜池を右に見ながら南下する。もう少しすれば紅葉
も見頃かな。道は広く気楽に歩けるので単調さはそれほど苦痛でない。
ダラダラと林道状の道を歩いて行くと展望所に着く。ここも奈良県の
設置した施設で国見台展望台という名が付けられている。名前の通り
奈良盆地を見渡せる眺望が有る。北は若草山、南は畝傍山まで見える。
意外だったのは正面に、9月30日に歩いた貝ヶ平山がスクッとした
姿で見えていた事。歩いた感じでは、もっとなだらかだと思っていた。
それにしても奈良盆地は建物で埋め尽くされている。これも予想外だ。
さらに南下すると松尾山の頂上への分岐が現れる。左側は松尾寺への
下山路。ひとまずは頂上へ行ってみよう。一投足で頂上に飛び出たが
NHKの電波塔が狭い山頂を埋め尽くしている。南西隅に二等三角点。
東側で少し眺望を得られるが写真に残すほどでもない。急峻な建設用
道路の上端で小休止。このまま南下して行くと法隆寺に至る。これは
これで魅力的なルートだが今日は大和郡山に宿泊するので向かわない。
松尾寺まで下って来た。綺麗な瓦屋根の伽藍が並ぶ大きなお寺である。
名前は今まで知らなかったが参拝客も多い。ちょうど七五三で訪れた
家族もいらした。中々に人気のあるお寺である。以下車道沿いに下る。
振り返るとどこまでも緩やかな稜線が続く矢田丘陵。此の先はずっと
舗装路歩き。1時間半ほどでJR線や近鉄線の近くに来ると田んぼの
間に金魚池を幾つも見るようになる。これもまた興味深いフィナーレ。
今日のBGM