この日は前日まで、どの山を歩こうか迷っていた。寒かったら嫌だな
とか、ランチに行きたい店があるので12時過ぎには里に下りたとか。
ガイド本で判断付かず、ネットで最近の様子を検索すると見事に解決。
近鉄大阪線の榛原駅に8時到着。阪神尼崎駅と近鉄鶴橋駅で乗り換え
するもストレスは全くない。駅の南側は鄙びた景色。北側は大規模な
マンションが直結。昭和以前と平成の風景がハッキリ分かれる宇陀市。
駅前に菟田野行きバスが停車していたが、目的地の比布までは9分の
乗車で410円と高い。なので1時間歩く事にする。市役所前を過ぎ
芳野川沿いに南下して行くと8時33分発のバスが追いこして行った。
快晴の空の下のんびり歩るくのも悪くない。気温も低くなく10度位。
振り返ると既知の山々。左から、鳥見山、貝ヶ平山、香酔山、額井岳。
のんびり歩いていると農家風に仕立てた豪邸が現れる。ちょっと凄い。
それやこれやで大して退屈もせずに約1時間の車道歩きを終えられた。
その昔にテレビCMで有名になった北海道の地名と、同じ漢字表記の
バス停に到着する。ここでバス道を離れる。老人ホームと同じ方向へ。
比布からバス道を離れて東へ向かって進むと、伊那佐山登山道を示す
新しい看板が現れた。この右手には登山駐車場という看板も有ったり。
ハイカーにウェルカムな様子が伺える。これはごく最近作られたよう。
コンクリートで出来た竹橋の東詰めには、やはり新しい案内図がある。
これによれば先ほど見かけた豪邸は、ロート製薬創業者の生家だとか。
この図を見てコピーしてきたガイド本の存在をすっかり忘れてしまう。
山頂まで十七丁から始まる丁石もある。新設された立派な道標もある。
この山路の集落はとても美しい所であったが、予定があり先を急いだ。
まあ余所者がウロウロも出来ないし。写真も遠慮して撮れず少し残念。
山に入ると檜の人工林となる、変化には乏しいが古い道標石や丁石が
次々現れ無聊を慰めてくれる。左嶽大明神・右やたきと記されている。
滝でも有るのかと一瞬思ったが、地図を確かめると集落の名であった。
今回利用したガイドブックは定番の分県ガイド「奈良県の山」である。
帰宅してから気づいたのだが、この道も下山した道もこのガイド本は
全く触れていない。これだけ古くから歩かれている道を無視している。
概念図にさえ掲載されていないのだ。何か理由があったか知れないが
ガイド本を信用できない証左の一つ。見所の無かった登山道だけども、
主稜線近くになって10m程の高さの岩場が現れた。今にも崩れそう。
数日前に降雪があったようで、榛原市街地でも日陰に雪が残っていた。
意外に山に入っても雪は見なかったが、標高が上ると路傍にチラホラ
見るようになる。人工林が終わり明るくなった。主稜線まであと少し。
主稜線に乗ると天狗岩展望所への道標があったので立ち寄ってみよう。
南へ下る事3分足らずで、展望台と云うには視界の狭い露岩帯に至る。
本では伊那佐山では唯一の展望と紹介されていたのでゆっくり楽しむ。
残念ながらどれ一つとして同定できる山はない。遠くは大峰だろうか。
さて分県ガイド「奈良県の山」を読むと、魅力を感じない山域だった。
それが昨日ネットで検索してみると、道標等が新しく整備されたよう。
それならと急遽この山に来ることに決めた、まあ此処までは悪くない。
天狗岩を後にして主稜線を北に向うと、10分ばかりで頂上に着いた。
立派な神社がある。地元行事で登山されたか絵馬が沢山掛かっている。
東側隅に狭いながらも展望があり、金属製の俯瞰図が設置されている。
ところが遠望できる山の名前が記されていない。つまり登山者向けで
なく、地元の人達が我が町の施設を再認識する為にある案内板のよう。
神社の陰にある三等三角点を確認し、北側にある井足(いだに)岳に
向かう。山頂からいきなり心細い道になる。伊那佐山だけを目指して
登拝される方が多いのだろう。鞍部に下ると東西に林道が通じていた。
伊那佐山頂上から主稜線は細尾根が続いた。展望もないし変化もない。
おまけに檜の人工林が続くので退屈この上ない。足元も安定しないし
新しくできた道標が無ければ、ハイキングコースとは到底思われない。
井足岳が近くなると道幅が広くなった。歩き難い細尾根が続いたので
ホッと一息つく区間。ここまで快調に歩いて来たが、それにはそれで
理由がある。起点となった近鉄・榛原駅の標高は307mもあるのだ。
実際の標高差というと、三宮から神戸市街地の背山を歩いている感じ。
植林帯を抜けると西側に大きな施設が見えて来た。老人ホームらしく
標高440mに位置している。一度入ったなら自力で外出は不可能だ。
井足岳の山頂に差し掛かると、突然とんでもなく急峻な斜面となった。
地理院地図からは全く読み取れない。麓から見上げて緩やかな稜線と
思っていたので少々驚いた。息を切らして登り詰めると井足岳の頂上。
あれだけ急峻な斜面を登りきったが、頂上は尾根の途中という感じだ。
最高所より一段下の平地に、山名板を兼ねた新しい道標が立っていた。
宇陀市設置の地籍図根三角点があるので、標高550mは間違いない。
時刻は正午。宇陀警察署前の食堂で昼食を摂りたい。本来なら休憩を
入れるところだが、さっさと下ってしまおう。新しい道標の指示通り
西側の道に入る。此の道も分県ガイド「奈良県の山」に記されてない。
西北に下って行くとすぐ展望所に出る。岳山という私設標識が道標に
括りつけてある。南側の眺望があり先ほど居た伊那佐山が見えている。
歩いて来た細尾根は全く感じられず、緩やかな主稜線に見えて不思議。
どんどん下って行くと広い農地に飛び出た。振り返ると三角形の山塊。
なるほど岳山って感じ。この後は昭和に出来たであろう新興住宅街を
抜け宇陀川を渡って榛原の旧市街に入る。目的の食堂には13時到着。
今日のBGM・・・I Can Dream About You
往きの近鉄電車の中でFMラジオを聴いていたら、視聴者からのリク
エストで此の曲が流れた。ストリート・オブ・ファイヤー(1984)
の挿入歌。傑作と思う映画だったので、この一日頭の中で流れていた。