此の日は何故か朝起きても調子が良かった。前日は大岩山を歩いた後、
JR二条駅近くのビジネスホテルに投宿している。朝食付きプランだ
ったが、まずまずの美味しさ。ゆっくり頂いて早めにチェックアウト。
JR嵯峨嵐山駅に到着したのは11時。勝手知った道をブラブラ歩き
大覚寺前のバス道へ。此処に門柱があるという事は以前は境内だった
のだろう。沿道は瀟洒な高級住宅街。大覚寺の関係者のお住まいかな。
大沢池に背を向け信徒会館前を西へ進み、すぐの辻を北へ転じて行く。
つまり府道136号線(大覚寺平岡線)を辿っている。とても大きな
家が点在し、清浄で豊かな農村いや山村風景が広がる。気持ちが良い。
沿道に台杉の栽培地が現れた。庭木用に特異な形に仕立てられている。
一本から多数の幹が伸びている。此れを見て思い出したのが摩耶山の
寒谷五郎杉。なるほど稀に自然発生する姿を、庭木に模しているのか。
道なりに北へ進む。石垣が現れると嵯峨天皇陵の入口。ご近所の方が
数人で賑やかに井戸端会議されていたので、全体写真が撮れなかった。
山上陵への毎日登山をして来られた方達のようだ。立ち止まらず進む。
石段は短い距離で九十九に登って行き、しばらくで嵯峨野を見下ろす。
大沢池は樹林に隠れているが、遠くに広沢池が見えている。後で歩く
遍照寺山も見えていたが、同定できていない。それが迷う遠因となる。
山上陵までは採石が敷き詰められた階段となっている。4年前の写真
を見ると地道と丸木の土留階段なので、ごく最近に整備されたようだ。
九十九だった道が北側へ真っすぐになると、やがて陵墓が見えてくる。
嵯峨山上陵は「さがのやまのえのみささぎ」と読むらしい。方形の陵
の周囲は歩道が一周している。向かって右側の歩道に入り、西へ下る
山道に入って行く。すぐに登り返して北側が抜けた展望所に辿り着く。
愛宕山の山頂付近は雪が舞っているらしく、時折白いガスに包まれる。
控えめな私設ベンチが3基あり良き休憩場所となっている。もう少し
西側にも倒木を利用したベンチが有るが、そちらは南側の眺めが良い。
更に主稜線を西へ下って行くと京見峠に至る。真っすぐ長尾山頂上に
行かず北側にある菖蒲谷池に立ち寄ってみよう。地理院地図によると
直線距離250m程のよう。実際大して下りもせず水面が見えて来た。
南北600mと細長い灌漑用溜池。北側は嵐山ー高雄パークウェイに
接して園地になっている。冬の今は人影も無くて番犬が大声で吠えて
いるのみ。管理釣り場のようで密漁を咎める看板が周囲にやたら多い。
池の北端まで行ってみようと思っていたが、雰囲気が悪いので止めた。
西側の斜面に道が上がって行く。地図にはないが主稜線に戻れそうだ。
池畔では小雪が舞って薄暗かったのに、日が差してポカポカしてきた。
高みに向って道なりに歩いて行けば主稜線に戻る。京見峠から30分。
中途半端な寄り道だ。花崗岩の山肌にシダ藪。生育の悪い疎林が続く
様子は姫路の山を思い出させる。頂上の手前が割に急登で息が上った。
長尾山頂上に到着。三等三角点があって点名は嵯峨。倒木を利用した
簡素な私設ベンチが有る。枝を利用した脚が立体オブジェの如くある。
やや霞がかかったようで展望は冴えない。蛇行する桂川が目立つのみ。
頂上から主稜線を西側へ進み231標高点を過ぎると、正面に円頂が
見えて来る。これを遍照寺山と思ったのが迷った原因。右側に伸びる
尾根が目指していたピークだったが、改めて写真を見ても分かり難い。
後宇田天皇陵から上がって来る林道に出る。北側は住宅が迫っている。
さて京都市観光協会のサイトによると、遍照寺山は広沢池北岸に位置
する231mの山となっている。他に公式アナウンスは見当たらない。
先程見た円頂の山は標高222m、広沢池北岸のピークは167mに
すぎない。長尾山の肩にあたる所に231m標高点があるが、そこが
本当の遍照寺山頂上なのか。峠から南へ少し下ると西側に道があった。
この時はネットで見た幾つかの山行記録しか頭にない。この先に峠状
から南へ登れば遍照寺山頂上というものだ。ただ地図を印刷してきて
ないので記憶だけで歩いている。それにしては道が南側へ寄り過ぎる。
此処で間違えた。左斜面を斜上して行く道に入ったのだ。最初の内は
良く踏まれていたが段々と心細くなる。10分も歩いた所でシダ藪に
踏跡は消える。これは違うとようやく気付き元の分岐まで戻って来た。
改めてトラバース路を直進する。路傍のシダ藪が刈られて最近に整備
されている。南からの陽光を浴びて明るい。京都の里山というからに
暗い針葉樹林を予想したが全く違う。右に見える高みが目的地なのか
峠状の所から南側に緩やかな尾根を辿って行く。此れも想像とは違い
ピークハントらしさは全くない。尾根筋を逍遥するように進んで行く。
踏跡は間断なく続いているので、少なからず訪れる人々はいるようだ。
展望はほぼ皆無の藪尾根だが一ヶ所だけ北西が抜けて、愛宕山の姿を
望める所があった。手前の長尾山の連嶺と相まって形よく見えている。
他に展望所はないので、実質的に此処を頂上としても良いかと思われ。
その先で踏跡が乱れ小さな空地がある。この先の尾根は下って行くし、
恐らく此処がネットでハイカーが遍照寺山とする頂だろう。嵯峨富士
遍照寺山と書かれた私製山名板が、近くの灌木に一つ吊るされていた。
峠状に戻り下山に掛かろうとするが、行きたい南西方向には道がない。
北側の222pに上がる踏跡が顕著だが、無駄に体力を使いたくない。
よく見ると北東へトラバースする切り分け道があるので入って行こう。
急斜面を横断するような所もあったが、無事尾根道に出る事が出来た。
どうやら此の道は222pから下って来るようで、我々が歩いた道は
そのバイパスだったよう。後は良く踏まれた尾根道をどんどんと下る。
尾根は次第に方向を変えて南に向かって行く。眼下に広沢池が見える。
これからが少々問題がある。池の東側に園地が見えるが、宗教団体の
所有地であり立入り禁止。此処から直接広沢池へ下ることは出来ない。
尾根を下って行くと峠状の所に出る。園地に下る階段に立入禁止の札。
南側の展望園地にもロープが張ってあった。それを避けて東側へ下る。
公道に出ることが出来てホッとする。後は車道沿いに広沢池を目指す。
観光協会の写真には嵯峨富士と呼ばれる167mのピーク。その裏に
標高点のある222mピークが覗いてる。だが標高は231mだとか。
本当の遍照寺山の頂上は何処だろう。ただ単に寺領地を示す名前かも。