旅行最終日は、泊まっている宿の早朝散策ツアー(無料)に参加する。
レセプションに6時に集合。参加8名。マイクロバスに乗って王ヶ鼻
へ行く。歩くと片道4kmもあるので連れて行って貰えるのは嬉しい。
だが残念ながら、美ヶ原は濃霧に覆われている。王ヶ鼻まで未舗装の
車道が続いている。電波塔の下に駐車して5分も歩けば王ヶ鼻に着く。
但し標高点(2008)は鼻先ではなく、電波塔近くに打たれている。
板状節理が発達した岩盤に石仏が並んでいるが、これらは木曽御岳を
向いている。美ヶ原からは日本百名山の内42山が見えるという中で、
御岳山は必ずしも目立つ山ではない。でもそこは信仰のゆえであろう。
新しい案内板があるが、個人が勝手に設置した物らしい。環境省等が
撤去を求めたが応ぜずそのままという。2014年の御岳山の噴火で
息子さんを亡くされた方だそうで、あまり強く言えなかったのだとか。
宿の方からそんな案内を受けていると、ガスが流れ北アルプスの山影
が見えて来た。頭上には青空が見えている。しばらくで再び濃いガス
に巻かれるが、雨雲ではなく湧き上がった朝霧に覆われているようだ。
山上の3軒の宿はいずれも同様のツアーを催行していて、15分づつ
時間をずらしているらしい。我々と入れ替わりに王ヶ頭ホテルのお客
さんが大勢やって来た。少人数の方が快適なのは当然で得した気分だ。
路傍にウスユキソウ(エーデルワイス)があると、宿の方に教わった。
高山植物では唯一名前を知っている花だが、季節外れで花弁が歪な形
をしていて、自分達では分からなかったろう。昨年は利尻島でも見た。
晴れていれば王ヶ頭にも寄る予定だったが、濃霧で中止し帰路につく。
牧柵近くに黒毛の牛がいる。この牧場で見る牛は全部メスで、オスは
3ヶ月程に育つとドッグフードにされるとか、他の牧場はどうなのか。
宿に戻ったのは7時25分で、すぐ朝食の時間。その後は風呂に入る。
ガスが晴れて正に展望風呂。湧出温度10度ながら温泉と認定されて
いるそうだ。10時前にはチェックアウトして荷物を預かってもらう。
送迎バスは12時30分発。それまで時間を潰すのに牛伏山に行こう。
宿から500m歩いて、山本小屋ふる里館前から直線的に歩道がある。
標高差は60m足らず。山上は広い草原で何処が最高所か分からない。
ところで家族は遠い昔に一度山本小屋に泊まったという。でも昨夜の
宿だったか思い出せないという。山上に美ヶ原高原ホテル山本小屋と
山本小屋ふる里館がある。どっちだったのかという疑問が生じた訳だ。
帰宅後一週間ネットで調べまくったが、答はこの時持っていた昭文社
地図昭和57年版にあった。執筆は山本小屋の二代目主人山本峻秀氏。
そこには山本小屋、美ヶ原高原ホテル、高原荘他2軒が記されている。
家族が泊まった山本小屋は、位置から現在の山本小屋ふる里館の方だ。
改築されており思い出せなかったのも当然の事。現在の経営は山本家
から譲り受けたのか、高原荘(現在の王ヶ頭ホテル)の小澤家である。
我々が泊まった美ヶ原高原ホテルは昭和37年の落成で、以後に改築
されていない。当時は観光旅館だったものが古びて山小屋風になった
と言えよう。この山上に壮大な人生ドラマがあったようで興味が残る。
茫漠とした牛伏山だが展望はすこぶる良い。360度と言ってよいが、
やはり近くの北アルプスに目は行く。白馬岳は薄っすらと雪化粧して
いるようだ。一方家族が見ているのは、ひときわ高い五龍岳であろう。
北側にもっと白く雪を被っている山がある。すぐに気付けなかったが
火打山のようだ。その左手前の尖峰は高妻、乙妻。右側に高い妙高山。
とすれば左端に大好きな雨飾山が見えるはず、目を凝らすが分らない。
牛伏山の頂上には30分いたが、まだ時間があるので昨日女の子二人
が騒いでいた所に行ってみよう。途中の牧場越しに見る槍穂の稜線に、
なぜだか映画「シェーン」のラストシーン Grand Teton を思い出す。
塩クレ場からアルプス展望コースを15分歩いて、岩のテラスに到着。
此処も良い展望台だ。いつも摩耶山で新穂高やシェール槍を見ている
ハムには眩しい景色である。思っていたより松本市街は東の山に近い。
そうこうしていると12時になった。宿に戻る途中で、編笠山の横に
薄っすらと富士山が見えた。これで美ヶ原からの展望は全て楽しめた。
すっかり満足して松本への送迎車の中では、二人とも眠気に襲われる。
神戸への飛行機は18時30分発、時間があるので神戸空港で貰った
松本城の無料入場券を使いに行く。緊急事態宣言明けで観光客は多い。
長い時間待って入ってみたものの、外から見るだけで充分という感想。
空港行きのバスに乗った途端、雨が降り始める。あまり天候に恵まれ
たとは言えないが、計画通り行動できたので良しとしたい。神戸帰着
してから自宅へ戻る時刻が早くて驚いた。運賃が安ければ又乗りたい。