摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

中山(478m)・・・兵庫県宝塚市

自宅からは北東に穏やかな山並みを遠望できる。だがどれ一つとして

同定出来ないでいる。それもちょっと残念な話だと思い、それらしい

山を歩いて見ることにした。まず一番手近な中山連山を歩いてみよう。

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阪急夙川駅から中山観音駅に降り立つ。運賃は230円。神戸市バス

普通区の料金より少し高いだけ。なのに来たのは二人共初めてである。

世間知らずにもほどがあるな。駅からは数分で中山寺の山門に着いた。

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境内も伽藍もとにかく綺麗。古い建造物もあるがピカピカって感じだ。

カラッとした明るい雰囲気のお寺である。妊婦さん向けか石段の横に

エスカレーターがある豪華さ。中でも青い塗装の五重塔が目を引いた。

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境内に神道風の社殿もあるし、ストゥーパもある。名物の蓮ごはんを

食べさせるレストランや茶屋もあって、安産祈願に来れば一日楽しめ

るようになっている。さながらテーマパークかのような印象を受ける。

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中山頂上には奥の院を経由するのが分かり易いよう。境内にハイカ

向けの道標はなかった。古い石柱に是より十八丁とある。江戸時代の

一丁は約109mなので約1962m。看板の約2kmとも符合する。

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境内から尾根を進むと思いきや、一旦谷筋に下りて対岸の斜面に参道

が伸びていた。住宅街の際をコンクリートで固められた階段道が続く。

此処が苦しかった。風の通りが悪く暑い。息が上がり心臓がバクバク。

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やがて花崗岩の有れた道となるが、思ったよりも細く狭い参道である。

どうも参道は地元のハイカーに余り利用されていないよう。その内に

枝道が合流して来て、段々に道が太くなって来た。諸所に石仏が有る。

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やがて道標に導かれ夫婦岩園地に入ると立派な東屋が設けられていた。

東屋の温度計を見ると24度だが、二人共背中まで汗だく。でも高齢

のご夫婦が涼しい顔をして登って来られる。それほど展望は良くない。

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毎朝登山という感じの方と沢山すれ違う。皆さん鍛えておられるのか、

我々のように汗まみれでなく、スタスタ歩いておられる。分岐に到着。

山頂には右の道が近いようだが、奥の院も見ておきたいので経由する。

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ちょっと変わった石柱。是より南東は放生地。捕えた生き物を放して

慈悲行をする場所という意味だろうか。寺院の参道というと抹香臭く、

陰気な雰囲気の所が多いのだけど、此の道は終始明るい雰囲気がある。

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天候のせいもあるんだろうが、最初に見た中山寺の絢爛豪華な様子も、

影響していると思う。何しろ安産祈願の寺であるから、そもそも暗い

要素はない訳だ。十七丁には滝場があって、厄神明王が祀られている。

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でも路傍にある石仏の頭部が削られ、セメントで直してあるのが怖い。

明治初期の廃仏毀釈によるものではなかろうか。道は登るにつれ広く

立派になり、車道に飛び出るとハイカーの声が響く奥の院に到着する。

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一枚板の立派なベンチに腰掛け休憩。涼しい風が吹き抜け気持ち良い。

朱塗りの社殿の前に賽銭箱、鈴緒が下がっており狛犬もいる。しかし

窓は寺院造りで大香炉がある。此処は神社なのか、寺院なのだろうか。

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祀られている厄神明王自体が、神なのか仏なのか曖昧な存在のようだ。

奥の院から一登りすると主稜線に達したようで、穏やかな道となった。

ぐっと人も少なくなり静かな山歩きとなる。明るい雑木林の中を進む。

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登山道は夫婦岩からの道とも再び合流して、緩やかなアップダウンを

繰り返す。461標高点も通過するが展望は無かった。三叉路に道標。

眺望良しとあるが信用して良いかな。樹木が伸び裏切られる事が多い。

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5分ほど(体感的には結構長い)樹林の中を下って行くと、展望所に

出た。180度のまずまずの展望。まあ来て良かった。今日は霞んで

いるが、空気が澄んでいればと思う。甲山と武庫川の流れが印象的だ。

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天宮塚の分岐に戻って山頂を目指すと、右手にフェンスが現れて来た。

道標は多くて迷わないが、公設・私設と織り交ぜて統一感は全くない。

平行する道や脇道が多すぎて、公設道標だけでは追い付かない状況だ。

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中山頂上に到着。中山最高峰と呼ぶ向きもあるが、同じような標高が

長く続くだけで、ピークが幾つもあるという訳ではない。小広い平地

には三角点と私設山名板しかない。寺の裏山としてはあっさりしてる。

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北側が存外に景色が良い。北摂から丹波にかけての山々が同じような

標高で連なっている。どれ一つとして同定できない。谷を挟んだ尾根

にはゴルフ場の芝生が見えている。大宝塚ゴルフクラブと云うらしい。

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頂上到着は10時30分。昼食には早いので林檎一個の小休止に留め、

先に進むことにした。東側に少し下ると、頂上北面の様子が見え驚く。

穏やかに見えたが北側は赤土の崖だった。だから景色が良かったんだ。

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頂上から冗長な道が続く。両側にフェンスが続いてる。中山五月台の

宅地と大宝塚ゴルフクラブの敷地に挟まれている事を意識させられる。

昔からある道の通行権が確保されているのだろうと、勝手に想像する。

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ようやくフェンスが途切れると風化した花崗岩の道となる。振り返り

中山の頂上を遠望する。3km弱も歩いて来た。時刻は11時13分。

朝が早かったので、そろそろお腹が空いてきたが良い休憩場所が無い。

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ゴルフ場を望む展望岩場に到着した。正式名称かどうか分からないが

三日月岩と云うそうだ。良い休憩場所のようだが、木陰が無く日差し

がキツイので先へ進もう。見えているゴルフ場は宝塚けやきヒルCC。

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歩いて行くと変なものを見かける。キノコ型のベンチかなと思ったら、

測量の為の基準点を守る保護板だった。周囲の土砂が流された結果だ。

周囲の地形も同じように変化している訳で、役立つのかと心配になる。

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登山道はゴルフ場敷地の縁を進むようになる。この辺りは退屈だった。

家族は頂上から中山寺に戻った方が、良かったかと思っていたらしい。

蒸し暑い中、ダラダラとしたアップダウンが続いてちょっと嫌になる。

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良い休憩地が見つからない。高圧鉄塔下はフェンスに囲まれていたり、

草が繁茂していたり休む気にならない。四等三角点が道の脇にあった。

ピーク名は満願寺西山というらしいが、点名最明寺と云いややこしい。

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路傍にハギの花を見るようになる。中山寺からの登りでも同じような

標高の所に多かった。前方に鉄塔が二本近接している。上空では高圧

電線がクロスしているよう。そんな所に休憩に適した石積みが有った。

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12時20分やっと昼食が摂れる。いや普通の時間だった。なんだか

お腹が空いて仕方ない。トルティーヤでベランダで採れたきゅうりと

残り物のキーマカレーを巻いて来た。これもブリトーって言えるかな。

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休憩した場所も展望が良い。右側に伊丹空港が近くに見える。山間に

阪神高速新猪名川大橋という斜張橋が印象的だ。土地勘が全く無く、

何処からが川西で、何処が池田なのか分からない。その向こうが箕面

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ようやく道が本格的に下り始めると、風化した花崗岩の岩尾根となる。

名前は付いていないようだが、ずいぶんと長く続くし急峻な所もある。

フリクションは極めて良いが、小石が多くあって石車には注意したい。

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露岩帯の終点で振り返る。最後は30度位あるかな。九十九に下って

来れるので手を使うような所は無いが、知らずに縦走してきた高齢者

には難しいかもしれない。ここまでの平易な道との違いが大きすぎる。

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更に露岩帯の下が、粘土質の道で滑り易い。雨水に穿かれ足場も悪い。

峠状の所に降り立てば、東側に新興住宅街が間近に迫っている。だが

阪急山本駅には西へ下って行く。また山奥に引き戻されるような感じ。

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谷川に板が渡してあるだけの橋。体重の軽い家族でも随分しなってる。

対岸にいる方は躊躇していた様だが、ハムが渡りきると体重を聞いて、

同じだと言われ安心したのか渡られた。ちょっとしたアトラクション。

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不思議な雰囲気の橋と門が現れた。既視感が有る。まるで韓国の山に

いるよう。最初に慶尚北道金烏山を思い出すが、他にも似たような

所が有ったと思う。橋は渡らず左側の奥にあるという滝を見に行こう。

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コンクリートで固められた歩道を上流に3分も歩けば、滝に突き当る。

この流れは先程見た新興住宅街を通っている。なので水質は良くない。

最明寺滝というが、こんなに立派な滝があるとは思いもよらなかった。

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一番奥の洞窟には不動明王役行者が祀られているようだが、土台に

ハングルが記されている。なるほど韓国寺なのかと雰囲気に納得する。

高価な仏花が飾られているので、信者は相当多いのだろうと思われる。

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北条時頼が出家して最明寺入道として修行したので、その名が付いた

そうで、現在の信仰と名前の由来とは一致していないように思われる。

滝自体は10m程だが、両岸の岩が発達していて、一見の価値はある。

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橋を渡り下流へ下って行くと、宝教寺という韓国寺があった。此方が

滝場の管理もされているのだろう。釈迦誕生日用の提灯が参道に吊る

されている。この後は淡々と下って行けば自然と阪急の駅に到着する。

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阪急電車山本駅に13時48分到着。中山観音駅を7時43分に出発

したので6時間も掛かっている。普通の人なら4時間位だろう。両の

登山口に見所が有って冗長さも緩和される。まずまずのハイクだった。

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