9月に入ると前線が下り、ある程度の雨が降って気圧配置が換わった。
ようやく暑さが緩んできた。人出の多い日曜日だが何処かへ行きたい。
摩耶山は混み合いそうで止め。6月に歩いた打越山の谷はどうだろう。
JR摂津本山駅で下車して西に向かって歩いて行く。甲南大学の校舎
の間を縫うような感じになる。日曜のせいか人通りも交通量も少なく
歩き易い。大学の構内にも人影を見ないのは、コロナ対策のせいかな。
地表にある大谷川の終点。水流が二分されていて、右側に二級河川の
起点を示す石柱があって西天上川となる。なら左側の水流が大谷川と
して続いているのだろうか。暗渠に入って行くので先は全く判らない。
前回はマンション下から強引に入渓したが、急斜面のトラバースの後、
ゴミの散乱する河原や大きな堰堤があって不快な行程だった。もっと
上流から入渓したい。日本山妙法寺へ通じる車道から右側の道へ入る。
林道状の突き当りに箱罠が2基設置されている。その先に浅い谷状の
地形があって、比較的傾斜が緩やかなようだ。グズグズの土砂に足を
取られながらズリ下がって行くと、対岸の大きな資材倉庫の下に出た。
上流にはまだ大きな砂防ダムが一基あった。前回は三基も越えたので、
二基分だけ上流に降り立った。他にも良い入渓点があるやも知れない
が、人目を気にしなくて良い事もあり、前回よりも好ましいルートだ。
石造りの小堰堤が三基も続くが雰囲気は悪くない。水量は前回来た時
よりかなり多い。昨日一昨日も雨が降ったが、8月下旬の豪雨の影響
が、まだ残っているのだろう。まずまず期待通りのスタートが出来た。
やがて前方に小滝が見えてくる。風化が進んでゴーロの積み重なりの
様でもある。予報では今日の最高気温は30度。流水に足を浸し乍ら
歩いている限りさほど暑さは感じない。沢歩きにはちょうど良い気候。
1m程の小滝が三つ連なってる。深い釜があるが右岸側の水中に足場
を求めれば、膝下位までの深さでへつって行ける。側壁の脆さに比べ
水心の岩は固くしっかりしているし、順層の階段状で問題なく歩ける。
三段目の滝が此の谷のハイライト。丸い釜を持っている。まるで温泉
の岩風呂のようでもある。水が濁っているのは源流部が大規模な泥地
であるせいだ。此処も右岸をへつり滝身に取りつき水心を抜けて行く。
続いて現れるのが谷の真ん中に立つ南洋風の木。どうしてこんな木が
一本だけ自生しているのか不思議ではある。谷がⅤ字状に狭まる入口
に立っている。岩屑の多い谷だが次の滝までは川床の岩盤が露出する。
二番目の小滝も見た目よりは傾斜が緩い。やはり右岸沿いにへつって
滝身に取りつく。左岸寄りは岩が脆い。家族は水流が多くてスタンス
が探しにくかったと云うが、見ている限りはよどみなく抜けて行った。
三番目の小滝も傾斜が緩い。昨年の11月に左腕を粉砕骨折した家族
だが、ようやく腕をついたり出来るようになったという。握力はまだ
戻ってはいない。10月にようやく金属プレートを抜く手術を受ける。
さあハムも続いて行こう。頭から水を被るつもりで防水はしっかりと
したはずだったが、背中に蚊取り線香をぶら下げてるのを忘れていた。
もう面倒臭くなってそのまま進む。側壁が発達して立派な滝に見える。
滝は三つで終わり。後は大きなゴーロの積み重なりが続く。此処では
少し腕力を使うが、家族は問題なく通過して行った。記憶にあるより
長くゴーロ帯が続く。木に巻き付く蔓が多い所でこれも南洋的な植生。
さて水流はまだ多いが、この上で泥地になる。もう遡行は切り上げて
右岸の踏跡を辿ろう。小休止して水を飲む。さて背中の蚊取り線香が
火が点いたままだ。ザックも乾いたままで思ったよりも濡れていない。
怪しげな踏跡を辿って行くと小さな池がある。古い石積みがあるので
人工的な池だろう。地形図に記されている池は更に上流にありもっと
大きい。今日は其処に立ち寄りたいと思っていたが分岐を見過ごした。
高圧鉄塔を通過した時点で、新池への分岐は通り過ぎている。なのに
ハムの頭の中の地図では新池の西側辺りだと思っていた。これが以降
迷走する原因である。地形図を読めない欠点を露呈することになった。
山火事注意の看板が関電の巡視路を示している。前回はこのまま進み
打越山の水平路に出たが、何となく同じ道は歩きたくなかった。少し
西側に十文字山から登って来る一般道があるはず。其方に出てみたい。
現在地を誤っていたので、西側の尾根に道があると思っていた。だが
浅い谷状を二つ越えても道は現れない。確信を持って進めば突き当る
はずだが、迷いがあるので北に登ったり南に下ったり時間を費やした。
気が付けば45分も右往左往している。意を決して西側の急な斜面を
下ることにした。すると尾根にあると思い込んでいた道が、谷に近い
所を走っていた。巡視路を辿っていれば、今頃頂上にいるはずなのに。
ぐるぐる方向を変える一般道を辿って行く。確かに打越山頂上南面は
小さいが複雑な地形である。かなり消耗してしまった。気温はさして
高くないけど、風がないので暑く感じる。汗だくになって頂上に到着。
珍しく誰もいないので此処で昼食にする。今日も500ml3本の水
を持って来ていたが、ほぼ飲み干してしまう。もう一本必要だったな。
下った打越峠では御老人達がマスクなしで三密状態。勘弁してほしい。
足早に通り過ぎて横池に到着。いつもなら渡れる雌池の岩が水没して
いる。雄池からは風吹岩をパスする脇道に入って魚屋道を下って行く。
会下山古墳から三条町に下ったのは16時過ぎ。水分は飲み尽くした。
家族と「チェリオの自販機が有ったら一気飲みしようか」「京都には
多いけど芦屋では見かけない」とか話しながら歩いていたら、なんと
最初に見つけた自販機がチェリオだった。この一本で元気を回復する。