摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

由布岳(1583m)・・・大分県由布市

昔々熊本から大分まで、やまなみハイウェイを自転車で走った時の事、

由布岳の優美な山容が見事だった。一方で関西汽船の弾丸フェリーと

いう企画も知ってはいたが、日帰り往復一万円はコスパが非常に悪い。

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それがGOTO割引の対象で、プラス500円で湯布院までのバス

乗り放題なら悪くない。6時55分別府観光港着岸。バスは観光快速

ゆふりん号を利用。フェリー前バス停でもよいが交通センターへ行く。

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そこが休業してたので路線バスで別府駅へ。ゆふりん号バス停に変な

張り紙があると家族が言っている。ハムは気にしなかったが隣のオバ

さんが「そのバスは運休中、湯布院なら駅の反対側」と教えて下さる。

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7時40分、駅西口から高校生で満員の湯布院行きの路線バスに乗車。

それで事なきを得たが、ホームページもバス停も運休表示が分り難い。

時刻表にその旨、明確に表示すべきだ。8時25分由布登山口に到着。

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登山口にはトイレや休憩舎があり、既に20台近い登山客の車が駐車

していた。登山届を記入投函し、まずは牧野を進む。これから目指す

由布岳が大きい。バス停が既に775mあり、標高差800mの登山。

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日向岳自然観察路との分岐で林に入る。ここにもトイレがあり準備を

整える人も多い。我々も上着を脱いで登りに備える。合野越を目指し

良い道が緩やかに上って行く。やはり関西より暖かいように思われる。

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完璧に整備されて多くの人が歩く道なのに、紅葉に気を取られたのか、

どうも道を失ったようだ。下生えのない林はどこでも歩ける。何かが

動いた。右手に二匹の鹿がいて、道に迷った我々をじっと眺めている。

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何となく向こうだと言ってるような気がして、左手に進むと道に出た。

9時00分、合野越。味気ない道標や注意看板等が幾つも立っている。

地形図によると此処から登山道は、九十九折りを繰り返し標高を稼ぐ。

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どれほど難路かと思いきや、緩やかな道が短い間隔でターンを繰返す

とても歩き易い道だった。背の高い落葉樹の林を抜けると、段々疎林

となり光に包まれるようになる。真南を向いた斜面で夏は相当暑そう。

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展望の良い所が幾つか現れる。右手に見えるのが、おそらく九重連山

湯布院の温泉街が思ったより近くに見える。左手に雲の上に浮いてい

るのが、祖母・傾の連嶺であろう。手前には倉木山に広がる雨乞牧場。

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見上げれば由布岳の西峰と東峰。火口を挟んで聳える両者の標高差が

僅かに3mと言う不思議さ。イメージ的には優美な草山だったんだが

改めて調べてみると、活火山で大きな火口を巡る山上は険しいらしい。

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火口壁に出る手前まで九十九折りの道が続いた。体力の消耗が非常に

少ない道で楽に上がって来られた。もう少しでマタエという所に着く。

ガイド本に鞍部と記されているが、火口壁の上で山頂の一角と言える。

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10時22分、マタエに到着。鞍部と言うには余りある展望の良さが

その事を証明している。もっとゆっくりしたいと思う場所なんだけど、

次々と人が上って来られて落ち着かない。水分を少し摂って移動する。

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マタエからは西峰と東峰へ行く人に分かれる。鎖場から始まる西峰へ

向かう人の方が若干少ないようだ。それでも前後に数名おられて一定

の速度が求められる。後で思えば少しタイミングをずらせば良かった。

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岩は安定しているしフリクションも良いので、上りは鎖に頼らない方

が良いと思うが、真新しい鎖が横にあるのは精神的には良い。むしろ

気をつけたいのは他の人の様子や行動だ。不安定な人をやり過ごした。

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なぜだか急いでいる人が多い。我々も帰路を考えれば、ゆっくりして

いられないが、楽しんで歩きたいと思う。だが中々に自分達のペース

で歩けないまま鎖場を通過すると、岩場は続くが傾斜はぐっと緩んだ。

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10時45分。険しい鎖場を越えて来たのに西峰の頂上は小広い平地。

山頂としては余り魅力的ではない。東に見える紅葉真っ盛りの鶴見岳

が印象的ではあるが、風景はさして変わらない。休憩はせずに進もう。

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西峰の頂上から時計回りに火口壁を巡るコースに入る。多少道が細く

なったが、ガイド本に書かれているような崩壊地には気づかないまま

下って行く。地形図から比高差100m程下るようだがあっと言う間。

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下り着いた所から岩場が続く。ところが此処でまた道を誤ってしまう。

尾根通しに歩ける箇所なのだが、岩場の裾を巻く道に入ってしまった。

余り歩かれていないので引き返すべきだったが、気分的に急いでいた。

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落ち着かないのは人が多いからでなく、自分達に余裕が無いせいかも。

前回の天草でバスに乗り遅れそうになったのが、トラウマになってる。

西峰頂上で一緒の人達は皆さん、火口壁の周回コースを来られるよう。

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それが良い選択だろう。歩く方向について規制はないが西峰の鎖場を

下りにとると、渋滞を発生させることになる。東峰の登り返しも岩場

が続いて、どんどん標高が稼げるので、さして疲労を感じずに済んだ。

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11時36分、東登山口への分岐。時間が無ければ正面登山口に戻ろ

うと思っていたが、東登山口経由で猪の瀬戸バス停へ下ることにする。

その前に東峰をピストンしておこう。要所にしかない道標が好ましい。

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マタエにあった派手な私製道標を除けば、無用なマーキングも皆無で、

とても気持ちよく歩ける。穏やかな様に見えて岩場の道が続いている。

巨岩が積みあがる中を抜けていくようにして、東峰の頂上に飛び出た。

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人の好みはそれぞれだが、もし時間が無くて、何方か一峰だけ登ると

したら東峰を選ぶだろう。例え3m低くても山頂の雰囲気は断然勝っ

ている。実際にマタエから、東峰のみをピストンする人も多いようだ。

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頂上の一段下には広場があり、多くの方が休憩されている。偶然かも

知れないが頂上は火口壁を周回してきた人。広場はピストンする人達

と変な棲み分けが出来ていた。西峰の頂上にも多くの人の姿が見える。

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時刻は12時8分、両夜行で日帰りなんて昔のスキー旅行みたいだが、

天気予報を確かめてから、船の予約を入れられた事が今回最大の利点。

但し忙しいのは間違いなくて、残り6時間で温泉も楽しみたいと思う。

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それでも東峰山頂には20分もいた。行動食のクラッカーを口にして、

下山に掛る。分岐に戻り東登山口への道に入ると、急傾斜が連続する。

別に紅葉に期待して来た訳でないので、素直にキレイだなって思える。

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何しろ先々週行った天草の山が、照葉樹と檜林だけだったので、九州

で紅葉が見れると思っていなかった。いや2年前に行った雲仙普賢岳

を忘れていた。もしかすると火山なので、植生も似ているのだろうか。

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日向岳との鞍部まではずっと下生えのない落葉樹林が続く。その間は

一人のハイカーとも出会わなかった事にも気を良くしている。紅葉の

シーズンだったからか、今日の人出は山のスケールに比して多すぎる。

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平日でこれだから週末はどんなだろう。鞍部からエコーラインの車道

に出るまでの区間も、雰囲気の良い林相が続いた。地形図上で等高線

の間隔がとても広いのだけど、歩いてみれば普通に傾斜がある山道だ。

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13時44分、東登山口に出る。此処にも10台余りが路駐していた。

仰ぎ見る鶴見岳は三つの峰に分かれている。今見えているのは南平台

だろうか。山上施設が多くあり魅力に欠けると思っていたがどうかな。

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14時00分、猪の瀬戸バス停。やっぱり運休中の観光快速の時刻が

そのまま掲示されている。10月31日からの一部再開を告げる下の

張り紙に注記してあるに過ぎない。運休は周知の事実という事なのか。

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14時22分の路線バスに乗車するが、地獄のある鉄輪には行かない。

予定していた立ち寄り湯は諦めた方が良さそう。別府駅へ戻り市営の

竹瓦温泉で汗を流す。風情のある施設だが浴槽だけで300円は割高。

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18時45分に出港。実際は1時間前に乗船手続きを求められるので、

滞在時間はそれだけ短い。由布岳は期待通りの良い山だったが、別府

まで来たなら一泊はしたいもの。慌ただしさが記憶に残る旅となった。

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今回の山行は「SANNYの青い空の下で。」さんのブログを参考に

致しました。ありがとうございます。2020年になってから更新を

されていないのが気になりますが、独創的な行程が魅力のブログです。

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今日出会った動物。合野越の手前で道を失った時、アホかいなと見て

いた鹿さん二匹。比良などで見る鹿より毛色が薄く、体形もズングリ

しているような。近づいても逃げず、キーンという警戒音も発しない。