季節は移ろい随分と涼しくなった。積極的に沢に入る気温ではないが
やり残した事を済ませておきたい。今年6月9日と16日に臨み乍ら
果たせなかった西谷本流。天気は晴れ、気温は23度まで上るという。
16系統のバスに乗り、ケーブル六甲下駅10時30分と遅めの出発。
前回間違った詰めの所を修正するだけなので、今日は省力バージョン
で行こうと決めている。足拵えは中敷きを2枚重ねたジャガーシグマ。
ドライブウェイ沿いの樹々は色づき始めている。六甲山は治水の為に
成長の速い照葉樹が多く植えられたけど、部分的には落葉樹林もある。
先週歩いた天草の山が照葉樹一辺倒だった事を思えば、まだましかも。
いつもは山田堰堤の上から入渓するけど、山羊戸渡の道を少し登って、
西谷一基目の治山ダムの上から入渓しようと思う。踏跡を探しながら
歩いて行くと、思っていたより大きく巻いてしまった。水量は少ない。
今日は濡れずに歩いて行きたい。小滝を左岸から巻き上り上流を見る。
二年前の台風で堆積していた土石が、多少は流れたようで6月の景色
とは少し変わっていた。奥に見える大きな倒木も葉が落ち始めている。
優美な曲線を描く5m滝。右岸に巻道があるが、この位の水量ならば
直上したほうが良いだろう。一見取りつき難そうだがホールドは多い。
滝上に連続して小さな斜滝がある。その間に白い花が沢山咲いていた。
長さが不揃いな5枚の花弁が、大の字に似ていて大文字草という和名。
ネットで調べると、ユキノシタ科ユキノシタ属という事で興味を持つ。
多年草だが時期がずれていたのか、何度も通っていながら初めて見た。
二基目の治山ダム。西谷は短い流域に7基もの堰堤がある。これらは
国が作る砂防ダムではなく兵庫県が作った物。作ったら作りっぱなし、
数多くあれば良いだろうって感じがする。どうにも好きにはなれない。
顕著な二俣の先にかかる6m滝。右岸の苔の生えた階段状から巻いた。
此処にも大文字草が咲いている。滝の飛沫を好むようだ。いつもなら
この辺りで休憩するのだが、省力バージョンが功を奏し疲れていない。
三基目の治山ダムを越えると、横幅の広い小滝がある。滝らしい滝は
これで終わり。続いて四基目のダムの手前、右岸から流れ込む小沢を
詰めると天狗塚に近い。それ故にこれまで本流を詰めることなく来た。
四基目の治山ダムを越えると、二俣の手前で右岸が大きく崩れていた。
6月9日に左俣へ誤って入った地点だが、この状態では倒木を避けて
自然と右俣に入ってしまう。山全体が崩れ易い状況にあるのだろうか。
右俣に入り五基目のダムは右岸から、六基目のダムは左岸から越える。
左俣にもう一基あるので合計七基だと思う。合ってるかは自信がない。
六基目のダムの上も大きな山抜けの跡。倒木や落石の詰まる谷を進む。
苔むした枯滝が現れ、やや風景が落ち着く。一休みしてお茶を飲もう。
この滝の上も沢床の岩盤が露出して歩きやすい所だ。先を行く家族が
ドンドン進んで行ってしまう。少し遅れて後を追ったら姿が見えない。
コールすると案の定、次の二俣で6月16日に間違えて入った左俣を
上ろうとしていた。無理もない、右俣は倒木が被さって先が見えない。
さあ此処からが初めて歩く区間。目標は神戸市立自然の家裏側の尾根。
倒木を潜っても右俣は岩が詰まっている。岩盤が露出する左俣の方が
魅力的だ。但し遠回りする分、詰めの傾斜はこちらの方が緩いだろう。
陽光が谷底まで差し込む。早朝は雲が多かったが快晴になったようだ。
何処から落ちて来たのか伐木が積み上がっている。恐らく自然の家で
切った物を投げ捨てたのであろう。このすぐ上で、また二俣が現れた。
左俣は樹木が茂って手掛かりは多そう。右俣は岩盤が露出したルンゼ。
最早どちらが本流という箇所ではないだろう。右俣は30度位の傾斜。
部分的にもう少し上がるが、20m程先では緩んでいるように見える。
表面は凸凹しているので我々でも行けるだろう。まずハムが先に行く。
安定した所で停止してから、家族に来てもらう。此処から上は傾斜が
落ちて土石や枝葉が詰まっている。ツルベで先に行った家族は左側の
尾根に上がろうとするが、イメージ的にそれはちょっと違うなと思う。
右側に岩場が見えているので、その裾を上がって行く事にする。何に
拘っているのか自分でも分からない。最後はスッキリした場所に上が
りたいだけ。前方に松の大木が見えてきた。多分あの場所と思われる。
飛び出したのは自然の家の裏道。それもピッタリ山羊戸渡との三差路。
ようやく三度目にして小さな目標を達成する。尾根に出た途端に疲れ
が噴き出した。掬星台に回るのは止めて、長峰山から下ってしまおう。
天狗塚には一人先客がいらしたが、入れ代り下って行かれた。快晴で
光が溢れているが遠景は霞んでいる。少し風があるので調理は難しい。
黒砂糖でエネルギー補給し、もう少し頑張って天狗梁で昼食にしよう。
天狗梁に来るのは一年半ぶり。相当数多くの人が訪れるようになった
らしく、道中の枝葉が切り開かれていたり、山名札が有ったりもする。
何か商業的なガイド山行に利用されているのかな。でも家族は否定的。
ハチノス谷東尾根を下る人が、迷い込むような事が無ければよいけど。
今日の昼食は利尻島の漁協ストアで買ったレトルト製品。購入時既に
賞味期限が切れていたので、そろそろ食べなきゃヤバイと持ってきた。
しっかりとタコの味がしてまず々美味しい。この種の製品は味付けが
濃いので、家で食べるより山ごはん向きだ。二人で二合完食お腹一杯。
一時間近く過ごし15時になると、陽が傾いて夕暮れの雰囲気となる。
ズルズル滑るハチノス谷東尾根を下ると、道の真ん中に架線の支柱が
立てられていた。既にワイヤーも通してある。防護柵はないが作業時
の通行はどうするのだろう。登山口に通行を制限する表示は無かった。
今日のBGM
夜中にユーチューブを見ると、CMとして放映されていた。いつもは
スキップするが、なぜか最後まで聞いてしまう。一日耳に残っていた。