炊飯器沢なんて名前の沢が有る訳ではない。ただ家族に何処へ行くと
言い残すのに、分り易いだろうと云うだけのこと。単独で目標にする
には短すぎる谷。それ故に継続して行くと二度言い乍ら力尽きている。
継続は諦めて杣谷道から木ノ袋尾根を登ってきた。オテル・ド・マヤ
を対岸に望む。黄色の線が昨年5月に歩いた左俣で、今日は赤い線の
中俣を辿るつもり。久しぶりの尾根歩きは風が吹き抜け意外に涼しい。
木ノ袋尾根からアゴニー坂に向かう下段の道が、トラバースを終えて
L字型に上に向かう所で小さな尾根を下って行く。数年前は作業路が
残っていたが、今は笹が周囲に比べて、少し薄いぐらいで踏跡はない。
下って行くと露地がある。木の葉越しにオテル・ド・マヤが望めるの
で位置を確認できる。此処で沢用の足拵えに変えてしまう。西側斜面
に入り下って行くと、1分も掛らず右に堰堤を仰ぎ見、水流が現れる。
そのまま次の堰堤の堆積地まで下り、左俣を登り返すのが間違いない
が、今日は途中で支沢が入る所で、中間尾根を登り返して行くと治山
ダムの天端に出る。以上、備忘の為の文章で、案内は意図していない。
治山ダムを越えると河原に、ナショナルの炊飯器が転がってる。保温
機能付きなので昭和50年代の物かな。この場所のランドマーク的な
存在だが、次に豪雨でもあれば、土砂に埋まってしまうかもしれない。
治山ダムの上流は三俣となっている。左俣は昨年5月に歩いた。一見
ナメ状だが、洗濯板のような岩盤が露出して楽しく登れる。ただ詰め
るとオテル・ド・マヤの敷地に入るので、途中から中間尾根に逃げた。
右俣はゴーロが積み重なり、奥には小滝が見える。他に比べると地味
だが、別山に突き上げているので一番流域が長そうだ。とは云っても
左俣・中俣は標高差80m前後で、右俣で100m程しかないだろう。
さて此方が中俣。炊飯器の位置から最初に目に入って印象的。前回に
見て詰めてみたいと思い乍ら、一年以上過ぎてしまった。只記憶では
この斜滝は、もっと高さがあるように思っていたが、10mあるかな。
左俣が洗濯板のような岩だったが、すぐ近くなのに中俣は特徴がない。
一昨日に杣谷源流で、ホールドとスタンスが同時に吹き飛んだ記憶が
新しくて、慎重に確かめながら登って行く。流心の岩はおおむね固い。
落ち口から見下ろす。傾斜が上がるのは最上部の2m程だけ。右側が
登り易いかと思ったが、大きな岩塊が剥離しかけてグラグラしている。
よく見ると流心に適当なスタンスがあり、まず不安なく登って来れた。
斜滝上はゴーロや土砂で埋まって伏流してしまう。左俣との中間尾根
は低いので行き交う事は可能かもしれない。というのも前回この尾根
を詰めたのだが、登るほど脆い岩尾根となり、抜けるの相当苦労した。
もう水流はないと思っていたら、黄土色の小滝が現れた。風情もなく
て残念な滝。やや外傾気味だが傾斜が緩いので越えるのは難しくない。
小滝を越えると谷はガレに埋まり伏流するが、一向に傾斜は緩いまま。
比高差を考えれば、このまま稜線に出てしまいそうだ。これなら中俣
を下降して、左俣・右俣を周回するのも現実的。但し滝を下るのには
ロープを用意した方が楽だろう。上るにつれて段々ゴミが増えてくる。
樹林の中に突如現れた大きなソファー。何だかシュールでオブジェみ
たいだが、実際は周囲にテレビやタイヤ等が数多く散乱し汚い所。麓
からガソリン代を使って捨てに来て割に合うかな。それとも山上の人。
飛び出したのは此処。オテル・ド・マヤの従業員駐車場。朝方はガス
っていたが、いつの間にか爽やかな青空が広がっている。近くの展望
岩で食事しようかと思ったが、ゴミから離れたくて天国ベンチへ行く。
急に山へ行くと言ったので、ありあわせの物で家族がピザトーストを
作り持たせてくれた。タバスコは持って来たが、コップを忘れている。
日差しはあるが、風が吹き抜けて暑くはない。のんびり昼食を楽しむ。
昼食後ふと気になって、ズボンの後ろポケットに入れた財布を見ると、
ダニの親玉の様な恐ろし気な虫がいる。君は誰?。いつからいたの?。
ロープウェイ・ケーブルで下って、水道筋商店街で野菜を買って帰る。