摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

三倉岳(701m)・・・・・広島県大竹市・・・(2016年1月3日)

三倉岳は中国地方では、最も著名なゲレンデである。かつては、

広島山岳会の本拠地として、全国に知られていた。ただ標高が、

低いこともあって、関西から訪れる人は少ない。我々も初めてだ。

この日は広島駅を8時にでて、玖波(くば)駅に9時前に到着した。

ずいぶんゆっくりなようだが、登山口の栗谷へのバスは、一日に

3本しかなく、休日の始発は9時10分。でもあるだけでも幸いだ。

久しぶりに見る、日本のバス停。当然、通過時刻が記されている。

登山口に近い栗谷支所までは、40分も掛かる。歩き始めるのは、

10時頃になるが、それで帰りのバスに、間に合うだろうか心配だ。

バスは峠を越え、ダム湖のほとりを走って、朝霧に沈んだ栗谷に

到着した。運賃も680円と高い。「広島県の山」というガイド本を

コピーしてきた。この本のコースタイムでは、5時間20分の行程。

我々の足では、休憩を入れコースタイムの1.5倍見ておきたい。

とすれば、帰りのバスに間に合うかギリギリ。写真は撮りつつも、

いつもより急ぎ足で。見上げる三倉岳は、ガスに隠れてしまった。

車道は緩やかに登っていく。広島県立自然公園の看板を行き過ぎ、

広い駐車場を右に見て三差路を曲がると、正面に三倉岳が現れた。

嗚呼息を飲むほど雄々しい。遠い昔に訪れたヨセミテを思い出した。

韓国で散々岩山は見慣れてるので、さして魅力的ではあるまいと、

高をくくっていたが、本当に感動した。朝霧が一役買っていたかも。

ところでガイド本では1時間掛るはずが、30分で到着した。あれ?。

無料とは思えないほど、良く整備されたキャンプ場を通り抜けて、

Bコースを登っていく。姫路の山でよく見るシダ藪が繁茂している。

しばらく登ると、大きな岩場が次々に現れる。どこでもゲレンデだ。

道が急かといえば、そうでもない。自然石をコンクリで固めた階段

が歩き易い。主稜線まで手を使って登るような所は一か所もない。

登るにつれ展望も得られる。どれだけのルートをとれるのだろうか。

百丈や不動、堡塁といった六甲のゲレンデとは全くスケールが違う。

七合目あたりの岩場では、練習しているグループもいた。駐車場

の様子では、3パーティぐらいしか入っていない。まだ正月の3日。

合目表示の間隔が、すごく狭く感じる。羊蹄山の記憶が残ってる。

主稜線に到着した。朝日岳へ30m・中岳へは90mって、なんて

コンパクトな道標。ここまでガイド本のコースタイムは2時間だが、

まだ1時間20分しか経ってない。決して早足で歩いた訳でもない。

分岐から5分も掛らず朝日岳頂上。大岩があるが展望はよくない。

南側のテラスに出ると、中岳を間近に望める。ここで一人の男性

が西へ下って行かれた。この日、ハイカーには二人出会っただけ。

朝日岳から分岐に戻って、中岳に向かう。ここまでは整備された

道だったのが、岩山らしくなる。とはいえ分岐から90mの道のり。

すぐに中岳頂上岩場に着いた。鎖があるが、荒天時でもなければ

頼らずとも、上り下りできるだろう。とてもフリクションが効く岩場だ。

中岳頂上に到着した。朝日岳もそうだったが、山名板等全くない。

そんな物が無くとも正に頂上である。険しいように見えているが、

掌のような凹状の岩場で、とても居心地の良い所。小休止しよう。

家族は、此処で昼ご飯にしようと言ったが、西に見える夕陽岳の

登りが控えているので、先に持ち越すことにした。これは失敗だ。

今思い返すと、この中岳頂上で、もっとゆっくりしても良かったな。

下を見下ろすと登山口の休憩舎前広場。その向こうに栗谷集落。

気温は18度近くあるだろう。風も弱く、日差しが気持ちよい正月。

ガイド本のコースタイムよりも、かなり早く登って来れたので、

そんなに先を急ぐ必要もなかったのだが、貧乏性なんだろう。

15分程で下ってしまう。もったいなかったと、今は思っている。

夕陽岳へは、とても巨大な岩の間を抜けていく。圧倒される。

やや湿り気味のルンゼ状を、木の根と鎖を頼りに登って行く。

朝日岳から夕陽岳の短い間だけが難路。それ以外は良い道。

夕陽岳直下。さっきの道標は中岳だったが、此れは中の岳。

ガイド本では、下ノ岳(朝日岳)、中ノ岳、上ノ岳(夕日岳)と

なっており、呼称が統一されてない。少々紛らわしくはある。

夕陽岳頂上は木も多少あり、絶景ではなく、西寄りの岩場が

展望がよく実質的な頂上。ここで菓子パンの昼食休憩にする。

下を見下ろすと、緩やかな岩場が続いていて、先っちょまで

行けそうだ。というか多くの人が歩いている。行ってみようか。

先端まで行って振り返る。結構急に見えるが、普通に歩ける。

もっとも下るのは少々怖くて、匍匐前進ならぬ尻餅前進だった。

先ほど休憩してた中岳が見える。それ他には得るものもない。

夕陽岳から西へ下ると、三角点のあるピークとの鞍部。潰れた

9合目小屋を横目に、細い道を登り返す。展望が無いので、本

来の山頂に登る人は少ないようで、道は整備されたものでない。

二等三角点のある三倉岳山頂。公設の山名碑も無く、展望も

ベンチも無い。一度は来ても、2度と立ち寄る人は無いだろう。

ただ9合目鞍部に戻る途中、夕陽岳の雄姿を望む所があった。

鞍部からはAコースを下ろう。やはり石をコンクリで固めた

階段が続く。滑るような所も無くて、非常に歩き易い道だ。

5合目標識の立つ所に大岩がある。天狗岩とも見晴岩とも

呼ばれているらしい。裏側に回ると、頂部に容易に登れる。

岩の上から、夕陽岳を仰ぐことが出来た。しばし見とれる。

4合目に到着。此処からはBコースへも道が伸びる合流点。

開放的な小屋がある。此処をベースにゲレンデに通うのは、

さぞや楽しいだろう。もっとも下のキャンプ場も充実している。

小屋の前からも岩峰が望める。4合目からのAコースは、

道も緩やかで、三倉岳に背を向け、のんびり下っていく。

車道に出たのは午後2時半。歩き始めてから4時間半だしか

経っていない。それに途中から、相当ペースを落としている。

まだ帰りのバスの時刻まで、1時間半以上ある。どうしよう。

バス停へ行っても何もないので、休憩舎前の広場まで戻る。

ベンチに座って、しばし名残を惜しむ。西日に照らされた岩

が白く輝く。天候に恵まれて、本当に来て良かったと思えた。

午後3時に休憩舎からは、バス停までは20分足らず。ガイド本の

コースタイムは不可思議だ。バスの本数が少ないので、その為に

躊躇する人がいると残念だ。山村だが明るい雰囲気の栗谷集落。