摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

木ノ袋谷から寒谷北尾根の岩塔に直上する

5月の末から6月の始めは、とても暑い日が続いた。金曜日に雨が降り、

土曜日そして、今日の日曜日も気温が低い。天気予報は晴れのち曇り。

木ノ袋谷から、あの岩塔に直上するには、絶好の日和に違いないはず。

今日を逃すと、梅雨に入るか暑くなるかで、晩秋まで登れそうもない。

まだ韓国低山旅行の、疲れが残っているが、思いきって行ってみよう。

とはいえ長峰坂から杣谷を歩く体力も無い。やはりロープウェイで上る。

掬星台から杣谷峠経由で、木ノ袋谷出合へ下ってきた。小休止する。

水分補給して荷を軽くする。大きな岩が、積み重なっているのが見え、

一応、メットは被って行く。木ノ袋谷を下流から、遡行するのは初めて。

木ノ袋谷には多数の堰堤があって、遡行しようという気も起らなかった。

その上、午後から別山の日陰となる。陰鬱な谷という印象を持っている。

ゴーロを越すと、すぐ大きな堰堤が現れる。左岸に取り着いて乗り越す。

すぐに2番目の堰堤が現れる。かなり手前から、右岸の斜面に登り越す。

思った通り大きな堰堤の過密ぶり。ハム的には、遡行価値は無いのだが、

存外に遡行する人は多いようで、残置ロープやマーキングに、ゴミも多い。

2番目の堰堤を越した所に、右岸から流れ込む支沢があるのを確認する。

此処で簡易ハーネスを装着する。これは登攀用ではなくて撤退用である。

前方には被った滝があるので、適当な所から、右手の細尾根に取りつく。

こんなに、か細い尾根が例の岩塔に通じているとは想像だに出来ない。

かなり斜度はキツイ。立木を頼りに登って行く。幸い朽ちた木は少ない。

金曜日に雨が降ったせいか、斜面は適度に湿っている。乾燥していれば、

それはそれで落葉が滑りやすい。濡れていれば岩場が滑りやすいだろう。

埃も立ちにくいし、土砂は蹴り込めば、ステップが出来る程度に柔らかい。

だんだん岩場が多くなってきた。おおむね岩はしっかりしているのだが、

ときおり大きな岩塊がグラッと揺れたり、浮いた岩もあるので注意しよう。

岩を登るというより、岩溝に詰まった土砂の部分に、ルートを求めて行く。

こんな所を登って行く。目の前のホールドに良さそうな二つの小岩は

いずれも浮いている。我々は事前に行く手も知っており、かつ二人だ。

単独で、この岩場を登って行かれた、長峰大好きさんに敬意を憶える。

この辺りまで来ると、左右の谷に逃げるという選択肢はなくなった。

木ノ袋尾根を歩く登山者の声が良く聞こえる。此方の声も聞こえて

いるのかも。随分と変な所から声が聞こえると思われているだろう。

やがて前方が明るくなり、棘のある木もチラホラ現れ長袖を着る。

もうすぐ岩塔の基部に違いない。鋼材やワイヤーが転がっている。

かつてダム建設の為の架線場であったよう。人の気配が濃くなる。

岩塔の基部は、2・3mごとの岩場が段々となっている。土砂や

倒木の煩わしさからは解放されたが、技術的には少々難しくなる。

此の岩は何とか登れたのだが、その上の段差は越せないようだ。

岩塔の頂部はすぐそこだというのに、ノッペリした岩場が越せない。

そこで左手の岩溝にルートを求めては、立木を頼りに強引に登る。

ここに残置ハーケンがあって、家族はこれを足場に登って行った。

それにしても錆予防のためか、被膜されたハーケンを初めて見た。

登攀用なのか、或いは工事の関係者が、打ったものかも知れない。

岩溝にはヤマツツジが咲いていた。曇天にしては遠くまで見える。

岩塔に登り着いた家族は、最頂部に立ち高度感を楽しんでいる。

ハムは頂部の一歩手前から、木ノ袋谷を見下ろして感慨に浸る。

とても我々には、登れないと思っていた急傾斜の岩尾根なのだ。

この山行は、コメント欄に寄せていただいた「長峰大好き」さんが、

何度も試登を重ねられた成果に、全面的に頼ったものです。感謝。



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