摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

家督山(246m)・・・島根県 海士町

知夫里島の来居港から西ノ島の菱浦港にやって来た。島前島後の中で

最も港湾施設の充実している港。一言で云うと旅行者の居場所がある。

さておき時刻は11時。今夜の寝ぐらの明屋海岸に行くには早すぎる。

グーグルマップで近くに家督山という丘があり、僅か2件のコメント

しかないが歩けそうと知る。それならばとターミナル内の観光協会

明屋海岸でのキャンプ申請と荷物預かり(いずれも無料)を願い出る。

加えて家督山(あとどさん)への道を尋ねる。そこの参道と指さされ

たのをハムは桟道と勘違い。ターミナル西側の丸木階段を上った眺め。

充実した観光施設が並ぶ。参道とは下に見えるカラー舗装の道だった。

丸木階段の道は観光炭焼き窯で終り。また下って行く。まだ間違いに

気付いておらず道なりに進んで行く。車道まで降りるとホテル併設の

グランピング施設があったり、でも引き返す気にもならず更に進むと、

枝葉に隠れているが家督山を示す道標があった。この時は間違いない

と思い込んでいる。地理院地図なら明白な事だがグーグルマップでは、

この車道も表示されていない。とりあえず道標に従って歩いて行こう。

ようやく家督山が見えて来た。左側は高校とその寮。右側は放牧地だ。

青い海と対岸の西ノ島が。しばらくは気持ちの良い車道歩きだったが、

山中に入っても一向に道の傾斜が上らない。ひたすら回り込んで行く。

すると三叉路があり家督山についての案内板があった。此処で初めて

道を間違っていた事に気付く。下から上がって来る道の先には人家も

見えている。記載の標高が誤っている。まあ案内板なんてこんなもの。

いよいよ登って行くかと思いきや、まだまだ平坦な道が続いた。いや

少し下るような箇所もあって、このまま下ってしまうのかと思ったり。

グーグルマップ頼りで、地理院地図を見るという発想が全く無かった。

また三叉路があって今度は上に登って行く。牛馬止めの溝があるから

此処からは公共牧野だろう。因みに此の溝は一般にテキサスゲートと

呼ばれている。ニホンジカにも有効らしくこれから利用が進むだろう。

伐採作業をされていた人に「今日は暑いから気を付けてください」と

優しく見送られる。確かに気温は30度近いと思われ。作業用道路を

ひとしきり上ると緩やかな主稜線に出る。色々な草花が繁茂する牧野。

最初に目に付いたのが此の花。調べるとニワゼキショウ(庭石菖)と

云いアヤメ科なんだって。北米由来の帰化植物であるとか。つまりは

雑草の範疇らしい。山野草が好きな人には興味の対象ではないのかも。

ハムも特に草花が好きな訳ではないが、小さな花でも群生して景色を

作っていればキレイだと思う。高山植物のように希少な花でなくても

十分楽しめる。ただし牧草地なので牛が好んで食べるかは別の問題だ。

自然の山のように来年の同じ頃に又来ても、同じ草が生えているとは

限らないだろう。緩やかな作業路はまるで遊歩道のように続いて行く。

気温は高いが爽やかな風が吹き抜ける。思いもかけず大当たりの山だ。

山頂下の牛が放牧されているエリアに来た。向こうに見える山並みは

海を挟んだ西ノ島。あそこへ行けば内海が見えて綺麗だろうが牧柵が

あるので入れない。路傍には牛に倒されないよう柵に囲まれた地蔵様。

牧野から針葉樹の植林帯に入り、しばらくで山頂に至る。大国主命

祀る家督神社。周囲から牛が入らないように有刺鉄線で囲まれている。

しばし木陰に座り込んで小休止。飴を舐め水を飲めばジュースの代り。

時刻は12時45分、キャンプ場行きのバスは15時45分発なので

たっぷり時間はある。山の祠は一番高い所に作られると思っていたが、

南側にある車両の回転地の方が若干高いよう。帰る前に寄ってみよう。

僅かな高みを求め藪に入って行くと、三等三角点が草に埋もれていた。

1974年以降は観測されていないという。点名は山名と同じ家督山。

そろそろ下ろう。バスに乗る前に今晩の食料の買い出しも済ませねば。

周囲を海に囲まれた山だが、意外に海原を見渡せる所は多くなかった。

山頂から牧野に出る前に見えたのは、南側の知夫里島だろうと思われ、

来居港のターミナルが視認できる。左側の高みが赤ハゲ山に違いない。

牧野へ降りて来た。此処は牧柵に囲まれた中に牛がいるので怖くない。

牛の方でも我々をあんまり気にしてないよう。牛糞って全く匂わない。

出来立ての物もそう。チベットで家の壁にするというのも納得出来る。

同じ道だが下りの方が爽快。時間的に花を楽しむ余裕があるのが理由。

色んな種が現れるので違う花を見る度に、立ち止まっては写真を撮る。

恐らく風で運ばれた種子だろうが、牧草地なのに良いのかと思うほど。

これはジャケツイバラ(蛇結茨)。摩耶山長峰山でも堰堤上で見る。

花は可憐だが幹や枝に鋭いトゲがあって、通過するのに難渋する木だ。

伐採跡に生えたごく幼い木のようだが、花房の大きさは一人前である。

この黄色い花は何かな。隠岐にはオキタンポポとかオキノアブラギク

という固有種があるが区別がつかなかった。此の山では種ごとに群生

して、次々に違った景色を作っているのがハムの好みに正に合致する。

この群生も実際はキレイだったんだけど。写真が下手で伝わらないな。

さて話題はこの島の港湾施設の名前、キンニャモニャセンターと云う。

誰もが意味を知りたいと思うはず。だが島民に尋ねるのはタブーとか。

旅行ではグーグルマップのクチコミを参考にするけど、総じて評判の

良い海士町で此の点だけ批判の的。飲食店や公共施設で意味を尋ねる

が、誰もちゃんと教えてくれずにイライラしたまま帰る観光客が多い。

これはマテンマ?。ハムも意味を知りたいと色々調べてみたが憶測や

推測の記事しか見つけられない。民謡の一節である事は間違いないが、

風除けで来航する北前船が伝えたもので、海士の言葉ではないらしい。

つまり海士町の人にとっては、調子付けの歌詞にすぎなく意味はない

というのがハム調べの結論。「金も女も無い」というのが最有力説だ

が、そう思って歌っている島民はいないだろう。これはノイバラかな。

黄色い花はハハコグサ(母子草)じゃないだろうか。北海道で数多く

見た気がする。とにかく「キンニャモニャ」ってどう意味ですかって

聞かれても、優しい島人も面倒で真面目に答える気はしないのだろう。

なのに島中にキンニャモニャが溢れている。食堂の箸袋にまで民謡の

歌詞が書いてあるし、港にはキンニャモニャで踊るの像まであるのだ。

海士町港湾センターとかなら、観光客のモヤモヤも生じないと思うが。

菱浦のみち13番の案内板がある三差路から集落へ下る。御倉神社と

いう荘厳な社がある。此処への道が観光協会の方が言われた参道だと

理解する。それでも家督山(あとどさん)を歩く事が出来て良かった。



今日のBGM


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