摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

赤壁(あかかべ)・・・島根県 知夫村

昨夜は一晩中強風が続いたが、扉のある屋内に居たので寒くなかった。

建物の軋む音が時おり人の話し声に聞こえて、誰かいるのかと思って

外に見に行ったりする。4時半には薄明るく5時ちょうどに日が昇る。

東側に見えているのは中ノ島の木路ヶ崎。風は昨夜よりは弱くなった。

少し下った平坦な所に牛が集まっているが、山頂目指して上って来る。

その理由は後で分る。フランスパンで朝食を済ませてとっとと下ろう。

6時には軽トラの周りに、牛が沢山集まっている様子が遠くに見えた。

その軽トラと擦れ違うが、荷台に配合飼料らしきケースが積んである。

美ヶ原に塩クレ場という所があるが、同じく塩等の牛が好む物だろう。

だから牛が山頂に集まって来てたのか。その後も同じような軽トラを

何台も見たが、荷台の大きさの割に飼料ケースの数は少ない。農家が

自分の飼う牛だけに与えるんだろう。まあ以上は全て想像なんだけど。

昨日歩いて来た古海(うるみ)と赤壁(あかかべ)との分岐まで来た。

もう一方は仁夫(にぶ)集落を経て村役場のある方向。ハムは昨日の

疲れで赤壁には寄らず来居港に帰りたかった。だが家族が同意しない。

言われてみれば確かに時間を持て余す。遠回りになるが赤壁に寄ろう。

昨日の夕方よりも牛が道路の近くに集まっている。やはり農家さんの

配合飼料も待っているのかな。まあいつも牧草ばかりじゃ飽きるよね。

赤ハゲ山の頂上を振り返って見る。香港の山がそうだが草地の山って

標高以上に立派に見える。コンクリートの箱は、牛の水飲み場である。

展望台の階下に説明版があったけど、知夫里島全体に水は豊富らしい。

おっとタヌキだ。昨日はすぐ隠れたが、今日は一定の距離を保ちつつ

此方を気にしている。此の道は観光客が良く通るので、餌を貰ったり

してるのかも知れないな。村としてもタヌキと共存共栄したいそうだ。

二匹目のタヌキは逃げて行くものの、アザミの陰から此方を見て居る。

農産物に対する食害は深刻らしいが、動物愛護団体の抗議等で駆除は

止めたとか。これほど増えると少々駆除しても効果を生じないだろう。

幼くて好奇心旺盛なのか、3m程まで近づいても逃げない。ごめんね。

もう行くよ。将来ウサギの大久野島のように、タヌキに逢える島だと

フランス人観光客が押し寄せるかもしれない。今朝見たのは二匹だけ。

水は豊富なのに土壌が水はけがよすぎるので、農地には向いてないの

だとか。山頂から一時間かけて降りて来た。ずっと緩やかな車道なの

で疲れは少ないが、仁夫への上り返しが心配。赤壁の分岐に到着する。

赤壁は地元ではアカカベ又はアカダキだと各種広報に記されているが、

島根県作成の道標のローマ字表記はセキヘキ。案内板や道標の誤りは

摩耶山でも色々あるので信用できず、本稿は知夫村の広報記事に従う。

遊歩道の先に断崖がある。山で岩壁を見ているので大きさは驚かない。

早朝なので光が当たってなくて色は冴えないが、確かに赤い壁である。

朝の連ドラのロケ地だというが、サスペンスドラマの方が似合いそう。

しばらくボーと眺めていた。まあ観光名所なので来ておいて良かった。

残り少ない水を飲んだら行こうか。何となく誰か来られないかなって

期待したが、まだ午前7時台だった。誰もいない観光地は少し寂しい。

分岐に戻り仁夫に向かう。昨日の島前の最高気温は25度。この日は

28度まで上がるそうだ。上りにかかると汗が噴き出て来る。寒さに

備えて衣服を多めに持ってきたが、もう少し減らせたかもしれないな。

赤ハゲ山への最短コースとの三叉路に到着。道標が海側に向いている。

風の強い所で丸い支柱に道標類を締め付けるとこうなる。武奈ヶ岳

西南稜の道標も同じだ。誰かの悪戯とかは穿った見方。設置方の問題。

単調な車道歩きなのでそんな事を思ったり。軽トラックが次々上って

来る。荷台にはやはり配合飼料らしきケース。ようやく仁夫が見えた。

ここまで牛小屋や資材置き場等は有ったけど、人家は一軒もなかった。

仁夫集落の中央で自動販売機発見。思わず一本購入し二人で飲み干す。

此の先の集会所前にはバス停がある。村営バスが運行されているとは

知らなかった。8時20分に便があったようだが、時刻は8時40分。

仁夫から岬を越える。振り返ると赤ハゲ山。頂上展望台も見えている。

此の先では、電動マウンテンバイクに乗った観光客と二度擦れ違った。

一人は昨日同じフェリーに乗ってた人。こんな事がこの後何度もある。

飛行機で島後に来て、島前を観光するとほぼ同じ行程になってしまう。

なので同じ人に何度も会ったりする。一人旅の人が思ったよりも多い。

ようやく村役場のある中心地が見えて来た。大きな建物は学校だろう。

現在全校生徒32名の知夫小中学校。離島の学校とは思えない立派さ。

7名を限度とした離島留学生も募っている。ホームステイではなくて

全寮制。今なら親の強制でなくて、自ら希望して来る子もいるだろう。

峠を越えて来居港に向かう。この山越えの道沿いに消防支所や駐在所。

新しい保育所もあったりする。利便性の良い土地は限られるのだろう。

知夫里島の水の豊富さの象徴である河井の湧水。下って行けば来居港。

港に着いたのが9時40分。中ノ島の菱浦港へ行く便まで1時間近く

ある。フェリーターミナル2階で待たせて貰う。自販機のコーヒーで

一息ついた。今回の旅行の目的はほぼ遂行。残りは日程の消化となる。