摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

赤ハゲ山(325m)・・・島根県 知夫村

図書館前からバスに乗り、再び別府港に戻って来たのは15時15分。

知夫里島の来居港行きの内航船は16時10分発なので、一時間近く

待つ。ターミナル近くのお店で、ノリ弁当1個とオニギリを二つ買う。

夕方なのでそれしか残っていなかった。隠岐の島でもそうだったけど、

海産物を扱う土産店や食堂、観光客向けの店が港近くに見当たらない。

イカの干物とか買いたかった。ターミナル2階の待合で食事を済ます。

内航船は島前の三島を行き来する定期船。客船とフェリーの2隻体制。

本数多くて全区間300円と利用しやすい。来居港まで17分の航海。

風上に向かっているので内海のわりに大きく揺れる。前方に知夫里島

知夫里島来居港。狭い海岸を埋め立て作られた港。巨大なループ橋が

離島感を演出している。ターミナル内の売店に買いたい物は無かった。

食料はカップヌードル2個とフランスパン1個。明日昼までなら十分。

スタートは16時30分。グーグルマップによると赤ハゲ山頂上まで

車道が続き、徒歩1時間49分だとか。まあ暗くなる前に着くだろう。

道路の良い南岸回りお勧めらしく、赤ハゲ山の道標は南を指している。

だが徒歩なら若干距離の短い北岸回りが良いだろう。途中集落が一つ

あるだけで交通量が少ないのも良い。海沿いの道は起伏が激しいかと

危惧していたが、崖の上を一定の高度を保って伸びており歩きやすい。

40分程歩くと道が下り始めた。降り着いた所が古海(うるみ)集落。

集落内の分岐に赤ハゲ山を指す道標があり、少しだけ気分が楽になる。

思っていたより戸数も多いし立派な御家ばかり。豊かさが感じられる。

古海から道は再び傾斜を増して行く。道が大きく渓谷を回り込む所で、

正面の山上に大きな建物が見えた。トイレや展望台という感じでなく、

昭和時代のドライブインのよう。事前に知らなかったので少々驚いた。

林道沿いにも牛が放牧されている。驚くべきことに山側の急斜面にも、

餌を求めて入る牛の道が諸所に出来ている。考える以上に行動範囲は

広い。摩耶山のシェール槍北面が、十分に牧野として利用出来た訳だ。

ウグイガ崎の分岐に到着。進めば西ノ島との海峡を望む展望台がある。

距離は200m程だけど、往復する体力も時間的余裕も残っていない。

ここから景色は一変する。一面の牧野の中を車道が延々と続いている。

この時はもう山上の一角に到着したと思っていた。ところがなかなか

山頂に着きそうにない。帰ってから地理院地図を見ると標高150m

にすぎないし、山頂まで2.5kmの距離を残す地点であると知った。

放牧された牛が沢山いる。広いので道路近くにはあまりいなかったが、

この時はヤバい雰囲気。手前に子牛が三頭。その先の道路の真ん中で

母牛が此方を睨みつけている。左端をゆっくり進んだら避けてくれた。

ところで此処までにタヌキを5回も見ている。後で調べてみると島民

約600名の島に、2000匹とも3000匹いるとも言われている。

一瞬立ち止まって「なんだお前ら」と、此方を見つめる姿は愛らしい。

先を行く家族に驚いて一度隠れたのに、又出て来て見送っている姿は

写真に残しておきたかった。タヌキって夜行性と思っていたが日没の

一時間前から行動を始めるとか。水平線は近いが夕日は中々沈まない。

南回りの道と合流すると頂上は近い。稜線に出ると強風が吹きすさぶ。

頂上には大きな建物。付随するトイレ棟も見えている。不思議な事に

来る前に調べた範囲では、この建物に関する情報は無く知らなかった。

広報写真は広大な牧野しか写っていない。いや見ていないだけだった。

二階が展望台になっているが景色は地上とさして変わらない。四方に

錆び付いた望遠鏡があり無料で覗ける。床一面が方位版になっている。

北側の眺め。変わらず霞が掛ったよう。島前カルデラと呼ばれる内海。

対岸に西ノ島がかろうじて見えている。左側に浦郷湾。右側に焼火山。

それにしても風が強く寒い。落日を見たかったがじっとしてられない。

外で幕営するのは諦め、展望台の下で一夜を過ごさせて貰う事にする。

何を見たのか知らないが、家族が明日は風速30mと言って内航船の

欠航を心配している。まあそれは杞憂だろう。軽い夕食を済ませ寝る。