摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

摩天崖(257m)・・・島根県 西ノ島町

隠岐旅行二日目の朝。ゲストハウスの部屋は東向き。朝日が差し込み

目が覚めた。共用のシャワールームはあるが、観光ホテルの大浴場も

利用できる。6時を待って朝風呂を頂きに行った。往復10分の散歩。

島前を経由して、本土の七類港へ向かうフェリーは8時30分の出航。

隠岐というと丸い島後島を思い浮かべるが、その他に島前と呼ばれる

三島がある。どちらかというとこの島前の方に隠岐らしい風景がある。

西郷から島前へ二等運賃は一律1600円。昭和に戻ったかのような

カーペット敷きの船内はバス三台分の観光客と、遠足の高校生で満員。

中ノ島の菱浦港を経由して、西ノ島の別府港で彼らと一緒に下船する。

観光協会で大荷物を預け(1個200円)身軽になり町営バスを待つ。

フェリーの入港に合わせて国賀行きのバス(1乗車200円)がある。

終点で下車すると国賀海岸の駐車場。これが嬉しい驚き。というのも

時刻表には国賀としか記されてない。そもそも町民の為のバスなので

国賀という集落があって、そこからは海岸まで歩くんだと思っていた。

フェリー下船から荷物預け、バス乗下車はスムースで離島と思えない。

観光協会のサイトも島内移動は、レンタカーや電動レンタサイクルが

推しで町営バスは外部リンクが貼ってあるだけ。こんなに便利だとは

思わなかった。此処から一旦海際に降りて、摩天崖へ向けて登り返す。

観光協会って何だろう。外国でよくお世話になるインフォメーション

と同じように思っていたが、調べてみると日本の場合は少し違うよう。

観光業者が資金を出し合って作った営利団体という形態が多いらしい。

地方自治体が主体の所もあるそうだが、隠岐の島と西ノ島に関しては

前者のようで、自ら経営するレンタサイクルは宣伝しても、町営バス

の案内は小さくなるのも当然だ。利用者としては認識しておきたい所。

町営バスの停留所名が観光客に分かりやすい国賀海岸ではなく、国賀

なのも観光業者に対する配慮なのかも。最初はレンタサイクルでしか

行けそうになく一台3000円の出費と西ノ島の宿泊を覚悟していた。

それが200円の運賃で11時前にスタート出来た。これで本日中に

知夫里島まで足を延ばせそうだ。快晴や絶景よりも先に日程や予算を

考えてしまう貧乏性は仕方ない。牛馬の柵を歩行者用の階段で越える。

通天橋と呼ばれる地形。海岸べりから見るよりも大きくて迫力がある。

ところで驚いたのは我々のいる所より上まで、各種の海洋ゴミが吹き

上げられていること。とても大きな発泡スチロール製のブイ等もある。

伸びやかな牧草地と海の組み合わせ。この風景は香港の山と似ている。

狭隘な大都会の香港だが、水源確保が最優先で山野が保護されてきた。

隠岐に放牧されているのは肉牛だが、香港には野生の水牛が沢山いる。

摩天崖が見えて来た。高さ257mの海蝕崖だとか。海が蒼くて綺麗。

ただ景色が何となくボンヤリしている。最初は自分の目が悪いのかと

思ったが家族も同じように見えるという。どうやら黄砂の影響らしい。

やって来た駐車場方向を振り返る。青い観光バスが停まっているよう。

フェリーに同乗していた団体かな。国賀浦を挟んで屏風岩から鯛の鼻。

礼文島を思い出すような最果て感だ。牛馬はアザミを食べないみたい。

摩天崖へはまだまだ。昨日の疲れが残っていて体が重い。時間的にも

余裕があるのでゆっくり進もうよ。でも家族は気持ち良い所になると

何故か足が速くなるという分り易い人。逆に退屈だと極端に遅くなる。

もちろん今日は気分良く歩いているらしい。巨大な岩塊と見えていた

摩天崖も実は深い谷間があった。遊歩道沿いでは二つ見る事が出来る。

改めて地理院地図を見ると崖記号がW字形に記されている。凄い地形。

牛と馬が仲良く集まっている。長閑そうに見える風景だけど結構怖い。

家族は牛からかなり離れた所を歩いて行った。鋭い角を持った二頭の

牛は人相というか牛相が極悪。尻尾を振ってはオラオラと睨みつける。

摩天崖の最高所に到着する。時刻はちょうど正午。恐らく此の辺りが

地理院地図に257mの標高点が打たれている所。やって来た証拠に

ベタな記念写真を撮っておこう。観光客は数名ぐらいで意外に少ない。

海からの西風が強い。家族は海に背を向け風に寄り掛かろうとするが、

あんまり上手くいかない。北側の草地に座り込んで昼食。宿で朝食の

代わりに貰ったアンパン。昨日クイニーアマンを買った店の品だった。

そろ々下りに掛かろう。車道に出るには牛馬の間を抜けねばならない。

怖いかなと思ったが、さっきの牛とは大違い。いたって穏やかな表情。

南西に見えているのは焼火山(たくひさん)452m。秀麗な山容だ。

摩天崖の駐車場から車道にでる。深い溝に鉄骨が簀子状に設けられて、

車や人は通れるが牛馬は出れない。調べてみると西ノ島や知夫里島

牧草地は公共牧野だとか。なので観光の用にも供されて我々も歩ける。

ちなみに西ノ島には947頭の肉用牛がいるらしい。全て子牛を生産

する繁殖経営で肥育経営は行われていないとか。加えて隠岐には解体

業者はないそうだ。島で食べる隠岐牛は本土から逆移入してるのかな。

これから歩く道が平坦な尾根に一直線に伸びている。自転車で走れば

さぞや気持ち良いだろう。自動車のCMにも使えそうなロケーション。

再び訪れる事があればレンタサイクルで島内を走り回るのも良いかも。

分岐が現れた。右へ下れば国賀海岸に戻るし、直進すれば由良に下る。

一本早いバスに乗るなら右だけど、下調べしてなくてコースタイムが

分からない。それに真っすぐ伸びている道を歩く方が気持ちよさそう。

そんな曖昧な理由で由良への道を選んだ。振り返れば摩天崖の後ろ姿。

西ノ島には54頭の肉用馬がいるという。牛は冬季は牛舎に入れるが、

馬は通年放牧だそう。食事を邪魔してはいけないと離れて通り過ぎる。

直線的な道を進むと由良の集落が見えて来た。遠く対岸には知夫里島

三つの島に囲まれた内海を「島前カルデラ」と云い噴火口であるとか。

つまり現在はその外輪山に立っているらしい。峠からは九十九に下る。

由良車庫のバス停に到着したのは13時13分。別府港に行くバスは

8分前に出ていた。次のバスまで1時間半ある。此処で待つのも退屈。

家族が来るときに立派な図書館を見たという。そこまで歩いて行こう。

途中で由良比女神社に立ち寄ったりして、図書館まで35分も掛かる。

島のコミュニティセンターを兼ねた素晴らしい施設。観光で来て一日

此処で本を読んで過ごしても良いなあ。一時間ほど読書させてもらう。

いかあ屋という名で初めお洒落な飲食店かと思った。行こうよという

意味の西ノ島弁から名付けられたそうた。バス停は表通りから離れた

集落内にあった。14時54分のバスに乗り15時15分に別府港着。