摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

摩耶山 木ノ袋谷支流から608ピークへ

4月14日に長峰山の西尾根を下った時、対岸の寒谷北尾根に薄紫の

ドットが見えていた。コバノミツバツツジに違いない。比較的に開花

時期が遅い所なので、翌週にも行ってみたいと思いつつ叶わなかった。

連チャンで行くのは難しく、しばらく休んで体力の回復を待つ必要も。

空いた日は天気が悪かったり、京都北山にシャクナゲを見に行ったり。

23日は日曜日だが抜けるような青空。混むだろうけど行ってみよう。

JR摩耶駅から永峰堰堤下まで来ると新しい看板があった。なんとも

奇怪な内容である。そう思う理由は後述するとして、看板に記された

その道迷いとは、杣谷峠を目指す人が東谷に入ってしまう事であろう。

登山口からすぐの東谷渡渉点。右側にある公設道標の位置が良くない。

足元に気を取られて道標を見ないままに、左側の東谷に進む人が多い。

この正面に杣谷方向を示す道標一つあれば防げる道迷いだと思われる。

この日も東谷方向で聞こえていたハイカーの声が、杣谷を進むうちに

後ろを追ってきたので、一度間違えて東谷に進み引き換えされたよう。

堰堤上の岩場で休憩していたら、英語で会話される一団がやって来た。

日曜日だけに10分ほど休んでる間に数組通られた。標高の低いこの

付近はモチツツジの盛期だ。コバノミツバツツジは一輪も見かけない。

花よりも新緑の美しさの方が際立っている。さてボチボチ行こうかな。

淡々と歩いて木ノ袋谷出合に到着。水量が意外に多い。最近そんなに

雨が降った記憶がない。すぐゴーロが積み上がり水流は見えなくなる。

スニーカーのまま進み最初の堰堤を左岸から越える。体の動きが鈍い。

最初に現れる支流が今日の目的。もし名前を付けるなら木ノ袋谷右岸

第一ルンゼかな。出合には二段の滝。前回に登れなかったので今日は

フェルトシューズを持参。でも倒木が邪魔して難しそうだ。止〜めた。

スニーカーのまま下段の滝を巻くが、朽ちかけの立木が多くて慎重に。

というか木を掴みにいく事自体よくない。相当に衰えてしまっている。

上段の滝は外傾気味で手も足も出ない。右岸の凹状から巻き上がろう。

柔らかい土砂の詰まった凹地。倒木が沢山あって厄介そう。どの木も

手掛かりにはならない。それどころか触るとズルズル下ってきて邪魔。

キックステップよろしく、スニーカーを蹴り込んで這い上がっていく。

滝の上に上がると見覚えあるドラム缶。ひしゃげた薬缶は記憶にない。

おそらく昭和50年代の治山ダム建設時の残留物だ。ちょうどハムが

神戸に出てきた頃で、六甲山に入ると盛んにダム工事が行われていた。

タイヤも落ちている。溝がしっかり残っていて古タイヤって感じじゃ

ないんだけど、何に使うつもりだったんだろうか。さて前回来たのは

5年前。この辺りでは前方に何が現れるかドキドキワクワクしていた。

今回二度目なので結末を知っている。最初の滝を越えれば難所はない。

一見すると二俣のような所に来た。左俣からは土砂が押し出している。

右俣の方の奥にテラテラと濡れた岩が光っている。ここは右俣に進む。

光っていたのは階段状の小滝。スニーカーでも難なく上がっていける。

S字状に谷が屈曲していて行く先が見通せない。次に何が現れるかと

不安と期待。沢歩きの根本的な楽しさを一瞬だが思い出させてくれる。

小滝が3つあるがすぐに終わってしまう。前回はもう少し距離もあり

高度感も感じたように思ったが何とも呆気ない。上流は岩屑が詰まる。

5年前も同じ状況だったろうか。落石が増えて埋まったんじゃないか。

そんな事も考えるが確証はない。急峻な谷に巨木が林立する所に来た。

ここも前回は幽翠な雰囲気を感じたが今回はそうでもなかったりする。

谷はもっと広いと思ってたし、巨木の数ももっと多かったように思う。

岩屑の積み重なりは不安定。うっかりすると崩れてきて足を潰しそう。

どんどん新しい岩が落ちてきているという事かな。右岸の岸壁が白い。

これら岩屑の供給源なんだろう。一歩一歩という感じで進むしかない。

この倒木はとても印象深かった。大きな倒木が真っ二つに折れていて

何が起こったのかとと考えたもの。それが5年ですっかり朽ちている。

そりゃ人間の方も衰える訳だ。此処を通過すれば源頭まではあと少し。

最後は若干傾斜が上るが松葉の積もった階段状。この谷を登る妙味は

抜けた先が標高点の打たれたピークだという事につきる。谷を詰めた

先が頂上って中々ない。大抵は谷が斜面に消えたり尾根になったりだ。

更にその608m標高点の一帯はコバノミツバツツジの密生地である。

最盛期には一面が薄紫の色に染まる。一週間いや10日遅かったかな。

頭上は黄緑色の若葉ばかり。地面には名残の花びらが沢山散っている。

それでも一株だけ花を残してくれていた。もう散る寸前の風情である。

寒谷を挟んで掬星台。前回はここから寒谷に下り山寺尾根に登り返し

たが、もうそんな元気は残っていない。オテル・ド・摩耶へ抜けよう。

しかし尾根上には昼食休憩するのに適当な所がない。尾根道を外れて

東斜面の岩塔まで下ろう。消えつつあるダム建設時の作業路を拾って

下降する。咲いたばかりのシロバナウンゼンツツジ越しに望む長峰山。

思い出深い寒谷北尾根の岩塔の頂部。微風快晴で気温もちょうど良い。

チョコパイとジュースの簡素な昼食。しばらく寝転がったりして休む。

同じ時刻に、家族は自宅でスマホの位置情報アプリを見ていたらしい。

ハムが全然動かなくなったので、落ちたんじゃないかと思ったらしい。

単に電波が途切れただけかも。一時間動かなかったと言うがそんなに

長くは休んでいない。ちょうど同じ標高に六甲線の高圧電線が見える。

標高が上がると花弁を残したコバノミツバツツジがチラホラと現れる。

この尾根にはヒカゲツツジも自生しているが、全く花は残っていない。

シロバナウンゼンツツジはこれからが盛期。木ノ袋尾根が良いだろう。

尾根道を辿って行き着くのは廃業したオテル・ド・摩耶のジャグジー

このまま第二の廃墟ホテルになってしまうのか。ハイカーや観光客で

賑わう掬星台。展望台にも寄らず通り抜けて山寺尾根を下ってしまう。

登山口まで戻ってきた。この注意看板を立てる前に、道迷いの主因の

渡渉点に分かり易い道標を作るべきだろう。正に本末転倒だと言える。

この看板は消防局で、道標は森林整備事務所だからってオチだろうか。


今日のBGM 


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