摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

金鳥山(338m)の桜並木

自宅の窓からも、山肌に桜が咲いているのを遠望できるようになった。

今年は花弁にボリュームが無いので、満開はもう少し先かもしれない

と思いつつも空いた金曜日に、金鳥山の桜並木を見に行こうと決めた。

天気予報は明日・明後日の方が断然良いのだが、混み合う休日に山を

歩く気はしない。芦屋市立体育館前まで来ると北向きの通りが桜並木。

つい誘われJR線まで北上する。高曇りで冴えない空模様なのが残念。

上りコースを決めずに家を出て来たが、並木や民家の庭に桜を追って

歩いていると前方に魅力的な坂道が現れた。行き着く先には桜の大木。

こうなると甲南女子高の横に出るので、自ずと魚屋道を歩く事になる。

坂の上には桜の大木が三本並んでいた。東灘区との境は分かり難いが、

いまだ芦屋市内だ。此処から東へ進むと甲南女子高校に突き当るので

階段道を上がって迂回する。さらに住宅街を西進すれば魚屋道登山口。

此処にも桜の大木がある。既に満開だがなぜかボリューム感に欠ける。

背景の空が曇りだからかも知れない。この付近から尾根に向かう事も

出来そうだが、公のルートは小さな堰堤を一つ越えて更に谷奥に進む。

本来の魚屋道と尾根道の分岐。谷沿いの道には「難路」と注意書きが。

元々魚を運搬するのに毎日使っていた道が、昔から難路だったはずが

ない。通行が減って沢水で道が崩れやすくなっただけ。尾根道に進む。

ハラハラと花弁が落ちて来るので見上げると、頭上には山桜の大木が、

盛んに花を咲かせていた。やはり背景が曇り空ではさっぱり映えない。

此の先で古い地すべり観測器の残骸を幾つか見る。もう朽ちてゴミだ。

山中に公用に供する為に施設を作る。用が終ると放置してゴミと化す。

それを行政自ら容認しているのでは、山にゴミを捨てる人は減らない。

琵琶湖バレイのカーレーターとか、六甲ロープウェイの山頂線もそう。

尾根道は間伐されているので視界が広い。大木もあるが多くは最近に

植樹された若い木。上りには此の道か、あるいは薬大尾根を使おうと

思っていた。対岸の尾根がそれだが同じく桜の木が点在しているよう。

蛙岩からの本来の魚屋道と合流すると、六甲らしい落ち着いた林相と

なる。下生えにコバノミツバツツジが点在する。例年ならサクラより

遅くに開花するかと思っていたが、標高の関係もあり一概に言えない。

薬大尾根道との分岐まで来た。写真では分りにくいが本庄山東斜面が

桜のの木で埋め尽くされていて見事だ。普通は山の桜は群生しないが、

10本以上の大木が重なり合って、谷間から頂上付近まで覆っている。

風吹岩は避けて脇道で横池南側の尾根に出る。少し下り雄池の様子を。

睡蓮の葉は枯れて少なくなっている。5月にまた新しい葉が萌え出て

花を咲かせるのだろう。池畔には2組のハイカーらが休憩されていた。

まっすぐ雌池には向かわず尾根の高みを目指す。それにしても静かな

日である。ここまで数組のハイカーにしか出会っていない。平日とは

云え珍しい。家族は気の利いた人達はお花見に行っているんだという。

何だかボーっとした景色。もう黄砂が飛んできているのかもしれない。

横池を堰き止めているこの尾根には、展望の良い岩が幾つも点在して

いる。だが休憩適地でないので、横池に比べると立ち寄る人は少ない。

10m離れた別の展望岩に立つ。家族が摩耶山が見えると言っている。

打越山の東面にも桜の木がポツポツ見えているがそれほどの数でない。

このまま尾根筋を西進して行けば、自ずから雌池の西端に降り着いた。

雄池に増して雌池はさらに静かだ。いつもなら人影を見てクサガメ

寄って来るのにその気配もない。池畔を通行する人、西側の土手上を

打越山方面に向かう人の姿もない。休憩後にはやっと空が青くなった。

さて元の魚屋道を下って本来の目的である金鳥山の桜並木を目指そう。

本庄山から少し下に廃墟化した鉄塔がある。米相場の旗振り用に作ら

れたそうだ。戦時中に供出されなかったのは監視塔に転用されたかも。

更に下ると開放的な草地に出た。こんな所があったかな?。どうやら

ここも高圧鉄塔の建替え工事現場だったよう。ヘリコプターで資材を

運ぶ為に広範囲に伐採されたよう。ニョキニョキ伸びてる木は何だろ。

一瞬タラの木かと思ったが、幹が緑色なので違う。ネットで調べると

カラスザンショウ(烏山椒)。堰堤上によくあるトゲトゲの木の幼木。

若芽も実も食用に出来るそうだが、弱毒性だし食味もイマイチらしい。

そうこうする内に桜並木が始まる。ソメイヨシノなので自然ではなく

人工的に植林されたものである。そのぶん割り引いても十分綺麗だし

下界の桜並木のような人混みはない。平日とは云え人の気配も少ない。

見上げれば青い空に淡いピンク色が映える。よく見ると幹が折れてる。

ヒョロヒョロと縦に伸びた木が多い。古木という印象ではないけども

実は年老いて弱っているのかも知れない。ときおり花弁が舞い落ちる。

さて金鳥山の頂って何処だろうか。地理院地図に打ってある標高点は

今日歩いた道より西方にある。しかし神戸の人が金鳥山という時には

此の広場を指すんじゃないかな。諏訪山と同じく山名というより地名。

その辺りは勝手な想像でまたお叱りを受けそうだ。広場の端まで行き

下り斜面の桜花の重なりを眺める。此の並木道を歩くのに上りと下り

どちらが良いだろう。ハム的には桜と海や市街が一度に見える下りだ。

山道のように見えてコンクリートで固められた石段が保久良神社まで

続いている。既に山歩きという感じではなくなった。桜の季節以外は

好んで歩く事はないように思う。というか他の季節に歩いた事はない。

保久良神社も本殿には寄らずに下ろうと思ったが、大鳥居から伸びる

薄暗い参道の奥にピンクの輝きを見て気が変わる。枝垂れ桜が満開だ。

前回は四月の中旬で終わりかけ、前々回は本殿に寄らず梅園を下った。

今年はソメイヨシノに少々ボリュームが感じられない。それに比べて

小ぶりな花弁が泡立つような姿は見事だ。せっかくの景色だけど実は

ずっとメマトイに付き纏われて煩わしくて仕方ない。そろそろ下ろう。

大鳥居から下は舗装された車道となるが、関係者以外通行禁止なので

のんびり歩いて降りれる。もちろん路傍には桜並木が延々続いている。

焼肉店に寄ったらメニューが変わり実質値上げ。現実に引き戻された。


今日のBGM 


www.youtube.com