摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

雙ヶ岡から成就山を経て衣笠山へ・・・京都市右京区

京都での散歩にハマっている理由は、何と言っても美味しいランチだ。

基本的に和食の修業した人が独立し食堂を始められる事が多いようで、

洋風料理でもベースにしっかりした日本料理の基本が押えられている。

ランチなら千円程度でいただける。そういった食堂の多さでは京都に

勝る所はないかに思える(知らんけど?)。この日は太秦映画村前に

安くて美味しい食堂があると聞いて、阪急松尾大社駅までやって来た。

目的の食堂へは徒歩40分位のよう。松尾大社には背を向けて桂川

渡ると梅宮神社という看板を見かける。立ち寄ってみると立派な神社。

酒造の神様だとか。さらに北西に進んで広隆寺に立ち寄ったりもした。

京都にはまだ々知らない大きな寺社があるもんだ。ようやく到着した

太秦映画村は思っていたより新しい建物。全く関心はないので今後も

入場する事はないだろう。その真向いの食堂で美味しい昼食を頂いた。

いかにも観光地って立地なのに全然そんな気配もない。それも京都の

一面だったりする。さて此処からが本題。JR山陰線の高架を潜って

北西に向かうと低い丘が見えて来る。その麓には民家が密集している。

丸太町通りと高架の国道162号線が重なって複雑な交差点。何度も

横断歩道を渡ってようやく丘の麓に辿り着いた。前回はもう少し東の

三の丘登り口から入ったけど、その昔は此方も正式な入口だったよう。

最初は石段。続いて丸木の土留階段もあったが、その後は怪しくなる。

あまり利用する人は多くないよう。まあ高みへ上がれば必ず遊歩道に

突き当る。数分の徘徊で三の丘登り口からの広い道に合流することに。

三の丘を越えて二の丘に向かう途中にある岩場。メインルートにある

唯一のアトラクション。まあ普通に歩ける。大きいのだが名前はない。

大文字山北面のように適当な地名を付けて喜ぶ京都人ばかりじゃない。

二の丘頂上近くにある私製看板。京都らしく英語のみの記載であった。

御室寺の帰りに散策する観光客が多いよう。この上が風倒木帯なので

入らないようにって事らしいが、現在はその倒木処理は終わっている。

前回は倒木がゴロゴロしていた二の丘。現在は何やらパラダイス風に

なっている。いつも誰か居そうな雰囲気だけど、この日は人影がない。

樹幹越しだが市内を一望。少し北に下ると比叡山方面の展望所もある。

一の丘(標高116m)に到着。徒然草第五四段で坊主どもが稚児と

遊んだのはこの辺りかと思ったり。低俗な話である。古典何てそんな

もの。もっとも吉田兼好はこの丘の西麓の庵で晩年を過ごしたそうな。

そんな歴史とは全く関係なく雙ヶ岡の麓は住宅で埋め尽くされている。

嵐電の御室駅まで出て一の丘を振り返る。ちょうど三人組の外国人が

雙ヶ岡に向われた。先は長い電車の通過を待つ事なく仁和寺に向かう。

仁和寺の境内は基本的には入場無料である。なので二王門から西門へ

抜けようとしたら中門の所でチケットをチェックされていた。早くも

御室花まつり(3月18日から5月7日)で500円の入場料が要る。

まだ桜は咲いていないだろうにと思うが余計なお世話。仕方ないから

二王門に引き返し境内の西側の道へ回り、成就山の登山口に向かった。

コロナ禍が収まって、一番の御堂には御朱印書きの方がいらっしゃる。

此の道を歩くのも四回目である。市街地から気軽に足を運べる割には、

展望も良い。何より人が少ないのが一番。御堂が八十八か所。それに

各々の仏像があり拝見できるので退屈しない。何かしらの発見がある。

先週も来たのだがコバノミツバツツジの株が多く。今週位が見頃かと

またやって来たという訳だ。なので今回も御堂を全部回れる事はせず、

端折れる所は飛ばして歩いて行く。ツツジは稜線に乗ってから現れる。

今朝咲いたばかりのようなコバノミツバツツジ。周囲の下生えは全て

この種なんだけど咲いている株自体はまだ少ない。勇み足だったかな。

サクラのように一斉に満開になるという訳でないので何とも言えない。

四十八番の西林寺。成就山の頂上とされる所で、西側の眺望が開ける。

平日だが連休の中日なのでハイカーの姿は多い。全行程で十数組ほど

出会った。頂上より少し下った路傍のベンチの方が展望は遥かに広い。

そのベンチからの眺め。石清水八幡と天王山の間に見える高層ビルは

どこなのか。後の生駒山系が霞んでいるとハルカスに思えなくもない。

どうやら淀川の向こう京阪樟葉駅前の42階建てマンションのようだ。

五十二番の太山寺下で参詣道を外れ車道を横断する。先週は蕾だった

ツツジが咲いていた。車道の擁壁には石段があり、そこから尾根上に

でる。幅の広い山道がある。マウンテンバイクで走る人が多いようだ。

やがて四差路に行き着く。よくみると五差路である。一番目立たない

一条天皇陵への道に入る。しばらくで左下に宇多天皇陵が見えて来る。

この付近は天皇陵が集中している。その参道を利用し歩いて行く訳だ。

前回来た時に道を誤った所。西側ピークに上ったが違うと帰って来た。

二度目なので山腹を巻く道に入って行く。北側の谷には木工所らしき

大きな建物がある。今も人の往来が多いと感じる里山らしい道である。

円融天皇火葬塚の裏側に突き当る。石畳を表側に回り込んで参拝する。

塚の前からは立派な参道があるので、一條天皇陵に向けて下って行く。

前回は裏側から抜けて衣笠山方向に向かったが今回は表に回ってみる。

なかなか眺めの良い御陵だ。石庭で有名な龍安寺の東側の道を辿れば

此処に至るらしい。きぬかけの路の散策途中に立ち寄るのも良いかも。

参拝を終えた後は御陵の北東角へ。明瞭な山道が東側へと続いている。

入口に小さな私製道標が衣笠山を示すが、無くとも間違いようがない。

すぐに分岐が現れる。左へ行く緩やかな道は主稜線を越え衣笠幼稚園。

直進する急峻な道は山頂へ向かう。左へ行くと大回りなので直進する。

しかし膝が痛んでいる家族にとっては、この急登は結構堪えたらしい。

とは言え休みつつも10分も掛からず衣笠山の頂上に着く。これまで

いつも人の姿の有った頂上だが、時刻が遅いせいか珍しく誰もいない。

比叡山から大文字山にかけての眺めが良い。樹林の先に金閣寺が佇む。

西日だと黄土色に見えるのが残念。むしろ早朝だと金色に輝いている

かも知れない。時間に余裕があれば、ボーっとしていたい場所である。

それでも15分程はいた。今日の宿は市役所の近くだ。山を下りても

一時間以上歩かねばならない。そろそろ行こう。展望所から直線的に

下って行く踏跡に入る。正規の道ではないだろうがよく踏まれている。

どんどん下って行くとフェンスに突き当る。これは立命館大学の第一

バイク置き場である。北側に行けば衣笠幼稚園前に下れるが、南側へ

フェンスに沿って進んで行く。バイク置き場とは言ってもすごく広い。

やがてきぬかけの路に下り着く。ちょうど通りかかったインパウンド

な観光客を驚かせてしまう。道路を挟んで斜め前が立命館大学の正門。

華やか衣装を着た学生で一杯。どうやら今日は卒業式だったみたいだ。

正装した父兄の姿も多く見られる。我々の世代だと大学生はもう大人。

入学式、ましてや卒業式に、両親が参列するなんて考えられなかった。

まあ昔話をしても仕方ない。此処から南東に進んで平野神社に寄ろう。

門前の「魁」という名の枝垂れ桜がほぼ満開となっていた。この木が

咲くと京都の桜シーズンが始るという。ただし平野神社内の他の桜は

まだまだという感じ。ここにも立命館大学の卒業生と父兄が多くいた。

卒業証書を手に桜の前で記念写真を撮られる。あまりお邪魔も出来ず

思ったような写真も撮れない。東側の歩道から三分咲きの大木を撮る。

平野神社からは一条通商店街。更に南東へ路地を繋いで御所へ向かう。

旧有栖川邸の塀ごしに見事な枝垂れ桜をみるが、下立売御門から入り

目に入った出井の枝垂れ桜は一段と優美な姿であった。観光客に加え

大きなカメラを持った方も多い。例年より季節が早く進んでいるよう。