稲荷山に来るのは三度目。もちろん山歩きというよりは観光なんだが、
毎回何かしら興味を覚える事がある。地図を見ていると普通の山なら
此方の方がメインルートになるんじゃないかなと思われる道があった。
取り敢えず最初は王道を行こう。ＪＲ稲荷駅から大鳥居を二つ潜って
楼門前に至る。なるべく人が写り込まないように写真を撮っているが、
周囲は様々な国の観光客でいっぱい。だいぶ以前の状況に戻っている。
普通は千本鳥居を通って山頂に向かうのだけど、参拝順路であるから
登山路としては無駄にグルグル回り、谷に下ってまた登ったりもする。
此処は左側の脇参道で境内から外に出てしまう。すると普通の住宅街。
取り敢えず最初の辻を東側に上ってみると、何か奇妙な鳥居が現れた。
間あき鳥居（出世門）という札がある。稲荷大社の物ではないだろう。
稲荷山の南麓に民間信仰の滝や塚が有ったが、北麓のこの辺りも同様。
間あき鳥居は、鬼法教総神苑（鬼子母神を祀る教団とか）の敷地内に
あるようだ。盛んに御経を唱えておられるが、仏教なのか神道なのか。
この上には大日本大道教本部。その奥には阿佐田哲也大神があるとか。
更に幾つかの大神を祀る社を過ぎると、稲荷大社らしい鳥居が現れる。
此処まで目まぐるしかっただけに、落ち着いた雰囲気を感じてしまう。
それにしても大勢の観光客が下りて来られる。日本人は半分以下かも。
三ツ辻から本殿へ下る表参道では、石の鳥居の補修工事をされていた。
その為に裏参道に人が流れていたよう。もう三度目なので稲荷山自体
に物珍しさはないが、各国から来た観光客の様子は興味深い物がある。
聞こえて来るのは韓国語、英語、フランス語、たぶんタイ語とかかな。
意外に少ないのが中国語。現在は中国政府が団体旅行を規制している
からだろう。なぜか韓国人の男子だけのグループが多く目立っている。
四つ辻まで上がって来た。此処が稲荷山では一番眺望の良い所である。
英語ガイドに連れられた一行が、楽し気に記念写真を撮っているけど
信じられない気分。ピラミッドとかヒマラヤ山脈が見える訳ではない。
四つ辻の茶店では、西欧人の四人組がビールを瓶ぐち飲んでおられた。
我々にはお高いと感じる観光地価格だけど、彼らには安いんだろうな。
自分達が東南アジアを旅していた頃を思い出す。さて一ノ峰へ向おう。
三ノ峰、二ノ峰と似たような所が続くので、この看板で一ノ峰と知る。
向かいの売店が此処が山頂かとあんまり聞かれるので設けたのだろう。
確かに山名碑も三角点もない。眺望も良くないので最高峰か迷う所だ。
地図には２３３ｍの標高点が打ってあるが、何処を計測しているのか。
背後には巨岩（塚）もあるが石段を上がった辺りかと推測。そもそも
写真測量はさして精密なものではない。壇上を一回りして下山しよう。
一ノ峰から先の巡拝路は人が少なくなる。それでも半分以上は外国人。
その昔バンクバーで老人に「日本ではコーヒー一杯が６ドルするって
本当かい？」と聞かれたことを唐突に思い出した。確かにバブル期で
大津の駅前にも一杯９００円の店があったな。今では逆にラーメンが
２５ドルもするのかって聞く立場になった。安全で物価が安い位しか
日本には魅力はないと思っていたが、意外にも観光需要は続いている。
我々国内旅行者にとっては京都に日本的な雰囲気を求めることよりも、
海外の観光客を迎えて変わっていく様子も、また京都の魅力だったり。
三度目で社や塚は目新しくはない。むしろ参拝客に目がいってしまう。
御膳谷奉拝所から三条の巡拝路を離れて清滝に向かう。此処を下って
東福寺方向へ下るのが一番無駄がないと思われる。雪も残雪であるし、
曇り空であるから今日の稲荷山は、スピリチュアルな雰囲気に欠ける。
さすがにここから下では人に出会わない。車道を下っても良いのだが、
倒木の危険ありとの事で通行止めになっていた。カンカンに凍った道。
こわごわ下っていくと更衣室などある清滝の行場。そこで車道にでる。
この道を逆方向に行けば山科区だ。薬大前の盛りの良い中華料理店に
行くという計画だったが、八条通に美味しそうなお好み焼き屋さんを
見つけ気が変わった。マンボ焼きという京都独特のお好みが有るそう。
という訳で稲荷山の北麓。四ツ辻から北へ下る道との合流点まで来た。
此の道標にはいつもお世話になる。此処から太い道を選び北西方向に
下って行けば住宅街から、知らぬ間に広大な東福寺の境内の中に入る。
ＪＲ奈良線、京阪本線それに鴨川まで一気に跨ぐ東山橋（九条通）を
渡っていると頭上を大きな猛禽類（鳶）が飛んでいる。さて此の後は
熱々のマンボ焼きとデザートに中身が柔らかいカタパンで充実の昼食。
今日のＢＧＭ
