摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

交野山(341m)・・・大阪府交野市

京都のお気に入りの食堂の日替わりランチに、新メニューが登場した。

これが事の始まりで、ちょうど京都の宿の割引クーポンも配信された。

食事だけではコスパが良くないので、どこかの山歩きを加えてみたい。

当日になり、大阪北浜の食堂も魅力的な日替わりメニューだったので、

立ち寄って行こう。という訳でスタート地点の京阪河内森駅に着いた

のは12時45分。色々ルートはあるけども最短コースを選んでみた。

駅を出て山裾の住宅街を北へ歩いて行くはず。と思ったら北向きには、

三本の道が分かれている。横尾忠則の作品を思い出してしまう。さて

どの道を行くのやら。案内なくネットで調べて左端の道を進んで行く。

立派な旧家が並ぶ路地を抜け、酒蔵の横で府道7号線に出て北上する。

関西創価高校を過ぎると、葡萄や柿の果樹園が続く。直売所が幾つも

並んでいるので、季節に来て買い求め山の上で頂くのも楽しいと思う。

今日は交野市の観光マップを頼りに歩いている。昨年にほしだ園地に

行った時に貰った物で、それによると石仏の道がメインコースみたい。

でも少し先の「みはらしの道」の方がネーミングから魅力的に思えた。

神宮寺集落を抜けて倉治公園に脇から山に向かう。この辻には道標は

無かった。此処へはJR片町線の津田駅からの方が近い。ただ運賃が

京阪より高くなる。天気予報では午後から晴れだったけど暗い曇り空。

交野山の北には国見山。南には旗振山、龍王山と並んでいる。普通は

幾つかのピークを踏んで一日コースにされるようだ。でも今日は時間

がないので最短コースを選んだ。山に入る前の畑の風景にホッとする。

林道の脇にやっと「みはらしの道」を示す道標がある。しかしながら

案内図は無いのでパンフレットを持っていなければ、この道が何処へ

至るのか判らない。単に交野山を目指して来たハイカーには不親切だ。

交野山里山ゆうゆう会の拠点がある。市や府の依頼を受けて交野山の

整備をされているよう。この種の活動はややもすると森林の私物化を

招きかけない。岡本八幡谷パラダイス化や、再度山の過度の伐採が例。

だが交野山では上手く機能しているようだ。森林公園として清浄さが

保たれていて好感が持てる。帰って同会のホームページを拝見すると

詳細な樹木名も図表にされており、それを手に歩いてみたいと思った。

最初は樹林の中を土留め丸木階段の急登が続いた。みはらしの道って

本当なのって思う頃に空が広くなる。尾根に乗る場所に新緑が美しい

大木が立つ。同会の図表によると、ブナ科のアベマキという木らしい。

尾根に乗ると名前に相応しい見晴らしが広がった。なかなか良い感じ。

此の道を南に下ると石仏の道へ出る。こだちの道という名だが機会が

あれば歩いてみたい。緩やかな道を進んで行くと路傍に展望台がある。

大阪市街地方向の眺めが良い。ハルカスから梅田のビル群まで一望だ。

この展望台の設計も秀逸である。下り階段状になっていて展望だけで

なくてベンチとしての機能も持っている。正式には林内作業場だとか。

諸所にモチツツジが開花している。やや暑苦しい感じがして好きな花

ではないがそれなりの彩りではある。ゆうゆうの会ではミツバツツジ

の植栽もされているそうだ。もう少し早ければ山桜も楽しめたようだ。

展望台からも緩やかな道が続いたが、こもれびの道とやすらぎの道が

合流する所に初めて交野山を示す道標があった。これは登山口にある

べきかと思うんだがどうかな。ここから再び傾斜が上がり急登となる。

高圧鉄塔があり広く伐採されている。此処も展望が良く名に恥じない。

なぜかパイプを組み展望所らしき場所も確保されているが、高圧線が

視界に入りやや落ち着かない。立ち止まらず頂上まで行ってしまおう。

少し濃い色のモチツツジが咲いていた。もしかするとミツバツツジ

交配種(ミヤコツツジ)かとも思ったが、単に周囲が暗いせいだろう。

此の先で小ピークを越えて行く。一旦鞍部に下って再び登り返すよう。

思っているよりも山頂は遠い。神宮寺の標高が60mであり頂上との

比高差は約280mにすぎない。登山路に沿って送水菅が続いている。

何だろうかと思っていたが、この形状からすると防火用水に違いない。

オニヤンマの小路と合流すると急な石段道となった。休みつつも上り

きると山頂の一角に到着。先を行く家族が何か声を上げている。実は

家族には此の山の写真等は見せていない。どんな山か知らなかった訳。

頂上には観音岩と云う巨岩が鎮座している。標高341mの低山には

不釣り合いなスケール。大阪府下のハイカーには有名な存在だろうが、

ハムも最近まで知らなかった。ほしだ園地に行くときに調べて知った。

只此の山だけの為に交通費を払って来るのは、若干コスパが良くない。

ほしだ園地まで縦走して行けないかと調べたりもしたが、ゴルフ場に

遮られ快適なハイクは楽しめそうにない。なので後回しになっていた。

西側には六甲山系や北摂の山並みが印象的だ。そも々交野市の位置が

分かっていない。思っていたより京都に近いよう。北側には愛宕山

見えている。地元の小中学生には社会科の授業で訪れると良いと思う。

小さな展望案内図があった。郷土愛溢れた図でほぼ交野市の施設しか

記していない。遠望できる市外の風景を説明して、交野市の立地条件

学習する方が良いと思う。ハムは北河内って此処なのかと初めて認識。

頂上では一昨日に水道筋商店街で買ったイチゴを頂いた。やや甘みが

足りないのでグラニュー糖をかけている。昼食がボリュームがあった

のでお腹はそんなに空いていない。ビスケットは残しザックに仕舞う。

そういや大阪に出て来た時、「なおす」の意味が解らなかった。今の

若い人は使うのかな。帰りは石仏の道を歩こうと思ったが、山頂には

やまかぜの小路の標識しかない。少々思案するが他に南側の道はない。

頂上直下に鳥居が立ち小さな社があった。鋼製の祠というのも珍しい。

祠は通常山頂の眺めの良い所にあるが、風を避けて一段下にあるのは、

それなりの理由があろう。三宝荒神という名前で修験道で祀る神とか。

しっかりした石段が設置されていて、此方が表参道という感じがする。

修験道ならでは険しい道を通って、御参りする必要もあったんだろう。

ところで此の記事を書く為に調べ直すまで、かたのさんと呼んでいた。

本当は「こうのさん」と読むのが正しい。先の観光パンフレットには

ローマ字表記(The Kohno Hill)とあるだけで、かな表記は無かった。

市の読みが「かたの」なので我々のように間違える人もいるはずだが。

赤い鳥居を二つ潜ると三叉路があり石仏の道の道標が現れた。前述の

観光パンフでは山頂まで石仏の道であるような記述だし、やまかぜの

小路については全く記述がない。初心者向けには不案内な地図である。

また林内作業場と呼ばれるウッドデッキが現れた。ここは展望が無い

が実は断崖の上に建っているので、出来た当時は見晴らしが良かった

かも知れない。清浄に保たれ思わずテントを張りたくような所である。

その林内作業場の下側は岩壁となっている。少し下ってから振り返る。

此方側から登るのも悪くないなと思う。此処からは急斜面をどんどん

下って行き針葉樹林の植林帯に入る。ほどなく下に小沢が見えて来る。

木橋を渡ると舗装された林道となってしまった。おや石仏の道って

名前だったけど、此処まで一体も見ていない。林道に出ると山歩きは

ほぼ終ったような気分になってしまうので、そんなことを考えている。

だが4分も歩けば路傍に素朴な阿弥陀如来立像があった。室町時代

作だとか。道の反対側には阿弥陀三尊の摩崖仏もある。なるほど石仏

の道である。マンガで分かる仏像という本を読了し多少の興味はある。

さて小川に沿ったこの道はモミジが沢山植林されている。紅葉の頃に

来ればさぞかし美しいのではと思われる。麓の果樹園で直売の果物を

求めてハイクするのは楽しそう。交通費は掛かるけどまた来ても良い。

余り好きでないモチツツジだが中々のスケールで迫られればそれなり。

但し花期は終わりかけている。途中こだちの道のとりつきを確かめる。

森林公園の遊歩道は迂遠でイラつく事が多いが、この山では感じない。

最後に石造弥勒仏座像が見送ってくれる。鎌倉時代の作とか。柔和な

表情が一段と印象深い。山側を向いているのはどういう意味があるん

だろうか。いずれにしろ交野山のメインルートは此の道に間違いない。

再び京阪河内森駅まで歩いて戻り、枚方市駅で乗り換えて清水五条駅

河原町通りに面したホテルに投宿する。クーポン等を利用し支払額は

宿泊税込み2380円。インパウンドが戻らない限り供給過多は続く。