まん延防止重点措置が発令される前の日曜日。11時過ぎて賑やかに
なりつつある四条大橋。何処へ行くともなく人の流れに乗っていたら、
西側にやけに低い山影が見えた。たぶん清水山の主稜線だと思われる。
このまま歩いて行き何処まで行けるだろうか。清水寺からアプローチ
しようとして、昨年には無かった進入禁止の看板に追い返された事は
記憶に新しい。暇を持て余しているので、行ける所まで行ってみよう。
四条通りを歩いて行き八坂神社に突き当る。この門が一般的には一番
知られているが、西楼門と呼ばれ正門は南側らしい。確かに入っても
正面に本殿が有るわけでない。古びた絵馬堂の前を通って北側へ進む。
いつの間にか丸山公園に入っている。この付近は著名な料亭が並んで
いて、何処までが公園通路なのか料理屋への進入路なのか分かり難い。
ひょうたん池から清水山を望む。左手奥から将軍塚には行けるらしい。
だが右手の清水山を目指していくと、山裾の長楽寺には拝観料の文字
が見えた。無料で入れそうな大谷祖廟に自然と吸い込まれてしまった。
御廟は一度参拝しているので、南側の墓地に入ってみる。存外に広い。
いや広いだけではなかった。石段をどんどん上に続いている。最上段
まで上がると、京都市街を俯瞰する展望が得られる。愛宕山の左隣に
つまり保津峡の奥には、亀岡の牛松山が意外に秀麗な姿を見せている。
墓地の最上段から山に入る道はなかったが、南側に下りながら探して
いくと、測量の為らしき切開きがあった。入ってみると急斜面を強引
に斜降して行く。最後はズリ落ちるようにして谷沿いの道に出会った。
幅も広くしっかりした道だし草刈りもされているが、現在ハイカーが
日常的に歩いている様子はない。この谷を降りて行けば高台寺の境内
に入ると思われる。通過できそうにないし敢えて確かめる気もしない。
谷沿いに登って行くと三叉路に出た。この谷川が菊渓川という名前で
あることは分るが、行先は何も記されていない。恐らく左側は将軍塚。
木橋を渡って右俣へ進む。なんで標識をペンキで汚す必要があるのか。
悲しい気分になる。進むにつれ道は広くなり、堰堤に出会うと案内板
があった。今歩いている森は高台寺国有林であり、堰堤は防火用貯水
ダムとのこと。そんな目的のダムは六甲山にはなく京都ならではかも。
貯水ダムからは林道が主稜線を越えて、東山ドライブウェイに通じて
いるようだ。峠状のところで京都一周トレイルが南北に交差してくる。
一度歩いているがその様子に覚えがない。東屋やベンチが幾つかある。
標識を見てようやく記憶が戻った。トレイルを南側に進めば清水山だ。
この先は道標に困ることはないだろう。ほんの少し進んだ所で多くの
張り紙を見る。各国語で記された通行止の標識。3年前と変わらない。
倒木によって通行止めとされているが、3年以上も処理されていない。
大文字山の大規模な倒木帯が、問題なくハイカーが通過できる状況を
思うと、清水寺が裏から入られるのを嫌がっている様にしか思えない。
暫く進むと分岐があり子安の塔を経由して清水寺に行ける。その前に
清水山の頂上へ行っておこう。展望はない上に一度訪れているのだが、
ピークを踏んでおかないとハイクとして纏まりに欠ける様な気がする。
清水山頂上一帯には杉が植林されている。此処までの雑木林に比べて
スッキリとしている。墓地から強引に入ったせいか、何となく感じて
いた息苦しさから開放される。しばらくすると頂上を示す道標がある。
トレイルから20m程入った杉林の中に三角点が有る。周囲に比べて
高い場所でもなく登頂感は全く得られない。立派な山頂碑が立っては
いるが、現在の地理院地図とは、標高が30cm違っているのが残念。
元の分岐まで戻ろうとトレイルに出ると、小さく京都タワーが見えた。
京都市内の山を歩いていると、その位置で現在位置を想像できるのが
面白かったりする。曇り空にボンヤリ霞んで見える山は同定できない。
子安の塔への分岐に入ると立派な道が下って行く。ところが何故だか
下るにつれて先細りになる。最後は普通の山道程度に。しかも倒木を
越えたりもする。主稜線の道は立派だが、西斜面の道は少々心許ない。
舗装された車道に出て来た。此処を北側に進めば子安の塔に至るはず。
南側に下れば清閑寺に至るよう。ただ市街から回って来るには交通量
の多い国道一号線を歩かねばならず、ハイクとしては魅力的ではない。
車道の突き当りには清水寺の裏門が有った。注意書きが沢山あるので
入れないかと思ったが、そういった類の看板は無いよう。脇の歩行者
用の門から入り、観光客の人影が見え隠れしている左手へ進んで行く。
すると子安の塔に着く。西暦1500年に建立され重要文化財だとか。
最近塗り直されたようで古さは感じられない。観光客が此処まで足を
運ぶのは、塔自体を見る為ではなく、此処から清水寺の全景を見る為。
境内の木々もその為に絶妙な配置となっている。紅葉の時期に来れば
さぞかし綺麗であろう。観光客の皆さんと舞台の裾へ向け下って行く。
何度か来ている清水寺であるが、今日の客層は明らかに異なっている。
何が違うかというと修学旅行生と中高年の姿が無い。若いカップルか
単独の女性ばかりが目立つ。何かのブームなんだろうか。写真の右下
に以前は無かった進入禁止の看板。やはり此方から子安塔に行けない。
産寧坂を下って行っても、擦れ違うのはカップルばかりでしかも若い。
時刻は13時35分で、四条大橋を歩き始めてからちょうど二時間だ。
思ったより簡単にミニハイクが楽しめた。まだ々歩けそうな京都旅行。
今日のBGMも