起きるとボタン雪が舞っていた。夜半に降り出したらしく宿の窓から
見える階下の屋根に10cm程も積もっている。晴れるようなら早く
出ようと思っていたが、断続的に激しく降り続け空は暗いままだった。
結局チェックアウトの11時まで部屋にいた。という訳でミニハイク。
行ってみたいと思っていたが短すぎるコースなので、交通費を掛ける
のも勿体ないなと思っていた所だ。雪が積もっていれば悪くなかろう。
市営地下鉄の烏丸御池駅で、国際会館駅までの料金をみると290円。
ちょっとクラッとするが、時刻的にバスでは遅くなる。まあ仕方ない。
14分の乗車で国際会館駅。地下鉄を抜けると雪国だったって感じか。
地下から出て来たので方向感覚がない。駅前の広大な公園をどちらに
進めば良いのか分からずウロウロする。結局は一番足跡の多いライン
を追って行く事にした。時刻は11時28分。人影もチラホラ見える。
幼稚園の年長位の女の子が、お母さんと一緒に雪ダルマを作っていた。
写真を撮ろうとすると「あら、うれしい!」と言われ玩具のバケツを
頭に乗せてくださる。湿った雪なので、雪ダルマは作りやすいだろう。
目的の東山は駅の南側にある。つまり地下鉄は山の下を通って北側に
抜け出たのだ。岩倉川を渡り進んで行くと、右に巨大な国際会議場が
見えて来る。1966年建設だがモダンなデザインで古さは感じない。
初めて見る宝ヶ池は思ったより大きい。東山に行くには必要ないけど
一周してみよう。同じように池の周りを散策する方は多い。雪景色に
カメラを構える方や、ソリで滑る所を探す若者達。外国人の方も多い。
しょうぶ池の橋の上にカップルいる。なんだろうと近寄って行く家族。
二人は雪玉を投げて遊んでいらしただけ。お邪魔するもんじゃないよ。
この橋の上が雪が深くて20cm程積もっていた。足元はスニーカー。
散策する人はゴム長靴の人が多い。今回の滞在で雪山歩きをする気は
なかったので、スパッツやアイゼンの用意はない。公園内なのでまあ
大丈夫とは思うが、靴の中がずぶ濡れになるのは避けられそうにない。
というのも雪はしんしんと降っているが気温は高い。歩きだすとすぐ
暑くてダウンジャケットを脱いでしまった。足元の雪もたっぷり水分
を含んでいる。雪道を歩いて30分ほど、少し靴下が濡れ始めている。
宝ヶ池を一周し公園の駐車場やトイレがある所に出る。西側にバス道
があるが、急坂で車がスリップする嫌な音が聞こえて来た。ここから
足跡が少なくなる。良く判らないが梅林園をぬけ浅い谷を詰めて行く。
谷の奥から道は左右にあったようだが、トレースは左だけだったので
それを追って行く。峠状の所へ出ると遊歩道は稜線を辿らず北斜面を
巻いている。どうやら171m標高点のある林山には寄らないようだ。
それでは退屈だと思い稜線を進んでみるが、藪に阻まれて西側斜面を
斜上する細い道に入ってしまった。先行者はおらず新雪を踏んで行く。
200m程進むと西からの遊歩道に出る。谷奥で右へ行けば良かった。
地理院地図の171ピーク。公園の案内図には林山と記してあったが
山名板などはない。今朝はまだ誰も歩いておられない。ピークは平坦
だが樹林に囲まれて展望は無い。遊歩道は広いので苦労せずに下れる。
案内板のある三叉路へ下って来た。トレースはさっき見送った北斜面
の遊歩道。案内板には山間園路と書かれている。前回歩いた大文字山
の様子から、もっと沢山の人が歩いているかと思ったがそうでもない。
平坦な主稜線を東山に向って歩いて行く。右側には樹林越しに市街が
チラホラ見えているが、写真に撮るほどではない。この山の南斜面に
送り火の一つ法の火床があるという。それを探しながら進んで行こう。
フェンスが張ってあり扉があった。稜線上にイノシシ除けとは変だな
って思ったら、コバノミツバツツジの群生地をシカの食害から守る為
らしい。多くの個人や団体の寄付金で完成したと看板に記されている。
どうやら左右から歩道に被さっているのがコバノミツバツツジらしい。
高木なので密生度は低いようだ。長峰山や摩耶山のそれとは比べ物に
ならないが、地元の人には大事なんだろう。40m程先に又扉が有る。
更に進むと南側に乱れた踏跡が有った。10mも下ればそこが法の字
の火床の上である。ただし立入りは禁止されている。宗教的な理由に
加えて、火床がやや脆弱と思える鉄製の燭台形式だからかもしれない。
火床の上からの展望はさして広くない。左に大文字山。鴨川の上流で
ある高野川。右下に見えるのは京都工芸繊維大学のキャンパスだろう。
それでも今日のコースでは唯一の展望所なので、しばらく佇んでいた。
火床から更に遊歩道を進む。分岐は沢山あるが高みへ進むトレースを
選んでいくと平坦な東山頂上に着いた。可愛いイラスト入りの山名板
が一つだけある。林山と似た様子で展望はないが通信設備が一基ある。
山頂からは東側へ下るトレースだけあったが、違うように思ったので
通信設備の電線に沿った直線的な道に入る。此処は誰も歩いていない。
既にずくずくの雪なので新雪を踏む喜びなどは全くない。北側へ下る。
しばらくでトレースと合流する。どうやら東へ下ると見えた道が迂回
して来たよう。遊歩道って自然に出来た道ではないので、どうも予測
し難い所がある。もはや道は水溜まりと化して、靴の中はびしょ濡れ。
どんどん下って行くと東側の展望が僅かにあった。叡山電鉄宝ヶ池駅
辺りだろう。向かいの小山は修学院横山。これは山の名ではなく地名
かも。晴れていればその向こうに雪を被った比叡山が見えているはず。
園地まで降りて来た。上の写真は照葉樹の並木から、雪解け水が雨の
ように降って来るので走って行く家族の図。またコケると危ないから
歩けと言っても聞かない。それほど盛大に枝上の雪が解け始めている。
再び岩倉川を渡って、地下鉄国際会館駅近くまで来ると道路上の雪は
かなり溶けていた。スタートしてから僅か2時間後でしかない。母娘
が作っていたあの雪ダルマも崩れて、気づかずに通り過ぎてしまった。
家族のザックは防水が効かず中の衣服まで濡れている。帰りは地下鉄
に比べ安いバスに乗ろう。約50分掛けて三条烏丸に戻るが、コロナ
対策で窓を開け暖房の利かない車内は寒かった。特に靴の中が冷たい。
今日のBGM