晴天が続いたのに山に行く気にならず、ネットで人の山行記録を見て
過ごしていた。ヤマップで岡本にある西天上谷の記事を二件拝見する。
打越山に突き上げる短い谷だが幾つか滝があるようだ。行ってみよう。
昨日まとまった雨が降った。このコースなら土曜日だが人出も少ない
だろう。JR摂津本山駅下車、天上川から西天上川に沿って西へ歩く。
甲南大学西校舎の辻で山に向かって、北校舎と墓地の間の道を上がる。
階段の右側から入渓するらしいが、柵はどこも切れていない。最上段
まで上がって戻って来てしまった。写真の街灯番号13063の外側
に踏跡らしきがあったので、柵を乗り越えて斜面に入る。不審者だな。
頼りない踏跡が上方に続いているので追って行く。右下には大きくて
新しい堰堤が見えている。拝見した記事は何れも新堰堤をスタートに
されているが、この急斜面を下るのは怖いのでそのままへつって行く。
天端を石で化粧された堰堤が現れる。河床には降りず右岸斜面を斜上
して行く。この付近は投棄されたゴミが多く散乱し、とても不快な所。
左岸の崖上には倉庫らしき建物がある。とても山に入った気はしない。
二つ目の堰堤。ぐさぐさの斜面は歩き辛い。堰堤の銘板を見たいけど
左岸側にあるので諦める。というのも此の谷の名前を確かめたいのだ。
西天上谷という名前の他に、大谷川という名を付記した記事があった。
帰宅してからネットで調べてみると、八幡谷を源流とする天上川とは
別に大谷川が海に流れ込んでいたらしい。三つ目の堰堤はとても巨大。
この付近については思い出したくもない。ずっとラジオを聴いている。
巨大堰堤を越えてようやく入渓する。右岸尾根に十文字山へ至る道が
あるので、この辺りに下って来れないものか。ここまで全く遡行価値
が無いどころか不快でしかなかった。家族が一緒なら非難轟々だろう。
小さな石積み堰堤が二つ続く。さて今日は岡本六丁目から西天上川に
沿って歩いてきた。この人工的な川によって大谷川を含め三本の川が
今の天上川に合流させられているよう。つまり西天上は後付けの名前。
更に検索すると、今日歩いた岡本九丁目に西天上川の起点を示す標柱
があるそう。そこより上流が行政的には大谷川のよう。すると西天上
谷の名が怪しくなる。三つ目の石積み堰堤。左岸を小さく巻いている。
ようやく滝らしきが現れた。1m程の段差が三つ連なる。滝壺の水が
濁っているのが気になるが、両岸が立って中々の雰囲気。左岸側壁の
脆い様子が何とも。こういう箇所では水心を歩くのが一番安全だろう。
三段目の滝が割と大きな釜を持っていて面白い。それにしても濁った
水は何でだろう。特に難しい所も無くて普通に越えられたが、下半身
が濡れてしまう。財布もスマホもポケットに入れたまま。何とか無事。
ヤシの木みたいな植物が一本。この辺りから六甲や摩耶の谷の中では
一風変わった感じの谷だと思い始める。岩は花崗岩だと思うんだけど
どれも苔むして色も暗い。昨日の雨で濡れているし、曇天だからかな。
二つ目の滝。高さ4m程。イヤホンを外しスマホや財布を仕舞い込む。
左岸にバンドがあるが浮き岩多く脆そうで怖い。此処は水中に足場が
あるので、右岸をへつって滝身に取りつくと頭から水を浴びて抜ける。
すぐに次の小滝が現れる。やはり水心に取りき、後は手足を動かして
いると落口に抜けた。水が流れている所は岩は固くて順層。足拵えは
ジャガーシグマ。前回捨てるつもりが家族が洗っていたのでもう一度。
さて三つ目の滝の上には卵型の巨岩。此処には古い取水施設が有った。
以降はしばらくゴーロの積み重なる河原が続く。堰堤や単調な河原の
写真を何枚も載せているのは、その距離感を記録しておきたいからだ。
核心部の三つの小滝の通過に要した時間は20分足らず。それも足の
遅いハムが写真を撮ったり、スマホなどを出し入れしながらの時間だ。
それに対し前後の堰堤群や河原歩きの長さは、遡行価値を考える指標。
どれか一つでも抜けるとガラガラ崩れそうな岩の積み重なりが現れる。
右側を抜けたのだが、掴んだ岩がスッポリと抜けそうで慌てて戻した。
この日に多少なりとも腕力を使ったのは、此処の通過だけだったかも。
巨岩の上を歩くようになるが水は岩の下を流れており、音からすると
源流まではまだ遠そう。両岸の尾根は低く明るい。摩耶山に比べれば
打越山自体の傾斜が緩やか。まだ大した標高でないのに笹原が現れる。
再び水流が地表に現れる所にあったツタに絡まれた大木。水の濁りや
少々変わった植生が、以前に歩いた沖縄や香港の沢を思い起こさせる。
梅雨時の気候も彼の地と良く似ている。六甲山系では個性的と言える。
再びゴーロの上を歩いたりして進むと、粘土質の土砂が堆積する所に
至る。なるほど濁りの原因はこの粘土にあったようだ。多少の量なら
水が穿ち地表を流れそうだが、両岸から常に供給されているのだろう。
その粘土層と相性が良いのか一面の笹原となっている。完全に伏流し
ているので遡行は諦める。地図は見ていないが主稜線まで相当距離が
ありそうな地点。どうも摩耶山や、近くの荒地山付近とも勝手が違う。
遡行終了点からは右岸の踏跡を辿る。落葉に隠れているが人が歩いた
固い地面が続く。人工的な石積みが現れ、少し離れて小さな池がある。
かつては池の堤だったのだろうが、土砂が堆積して池と離れたのかも。
地理院地図には新池という大きな池が記されているが、其処ではない。
とすれば此れは古池と言う事になろうか。音を立て水流が流れ込んで
いるが藪が濃いのでもう辿りはしない。普段はもっと小さな池だろう。
右岸の踏跡はやがて広い道跡に合流する。右下に広い笹原が樹間越し
に見えている。どうやら其の辺りに新池が有ったよう。右側に下って
行く踏跡もあったが、さして興味もないので見に行こうとは思わない。
高圧鉄塔に出会う。残念ながら名札がないのだが、次の鉄塔から考え
ると広田西線五一鉄塔と思われる。もう後は巡視路を楽に辿って行く
だけと思いきやそうもいかなかった。ハイカーも歩かないのか細い道。
巡視路はなんとなく東側へ向かいトラバースして行く。浅い谷に生い
茂った草に道は隠れている。頭上には高圧線が走っているので方向は
間違いないはず。いったん谷底へ下ってから対岸を登り返す道がある。
打越山って毎日歩く近所の人が沢山いて、縦横に登山道が出来ている
イメージだったけど、こんな草深い道もあるのか思う。よほど魅力の
ないコースなのだろうか。前方には次の高圧鉄塔が小さく見えている。
広田西線五〇鉄塔に着いた。東側には魚屋道の鉄塔建替え工事現場が
見えている。この鉄塔も建替えの対象なのか、伐採の許可を受けた旨
の札が下がっている。数年後に風景が全く変わっているかも知れない。
巡視路に覆いかぶさるように垂れ下がったテイカカズラ。これほどに
大きな株は見た事がない。どれだけの数の花が一株についているのか。
そういえば西天上谷にも、無数のテイカカズラの花弁が落ちていたな。
迷いやすい関電巡視路を上がって行けば、打越山頂上に着くはずだが、
展望もないゴチャゴチャした所なので立ち寄る気がしない。人の事は
言えないが、休日の昼時だと特養の食堂のような雰囲気で気が滅入る。
水平路を東側に進むと見覚えのある四差路。広い道を更に東へ進むと
八幡谷から打越峠に向かう一般道と出会う。そこからはハイカーの声
が前後に聞こえて来る。土曜日で当然だが今までの静けさとは異なる。
上がった打越峠付近が間伐されていて見違えた。そういや横池の雌池
西岸も間伐されていた。峠に出ると二組のハイカーに出会う。コロナ
対策で皆さんマスクしていらっしゃるし、挨拶も会釈や小声で済ます。
通行の多い打越峠では休まずに横池に向かう。ずっと間伐されている。
七兵衛山の道標代りの切り株に、この木は切らないという青いテープ
が巻いてある。微笑ましくもあるが、作業が終わったら外してほしい。
横池に向かって間伐された尾根筋を歩いて行くと、新しく大きな鉄塔
が立っている。新神戸線一四鉄塔なので従前にあったものが。建替え
られたよう。その基部は円頂で広く伐採されて、草が養生されている。
その為にすこぶる展望の良い場所になっている。東は六甲最高峰から、
西は摩耶山頂の電波塔群までを一望に出来る。登山道は南側を巻いて
いるので静かな場所。座るのに適した切り株もあるので昼食にしよう。
今日の昼食は昨晩のカレーの残りに大豆を加えたサモサと、餃子型は
鶏の唐揚げを入れ揚げた物。背後に見える小ピークが七兵衛山頂上だ。
それにしても気持ちの良い場所で、一時間近くいたが誰も来なかった。
新神戸線一四鉄塔から先も間伐は続いていた。横池の雌池の上に出る。
池畔で何度も休んでいるが、伐採された事もあって雰囲気が全く違う。
雌池の南側を通って雄池の畔へ。さて睡蓮の花の様子はどんなだろう。
5月25日に来た時より花の数は増えていると思うが、15時という
時刻なので閉じかけた花弁が多い。睡蓮の名の通りに夜は閉じている。
横池の睡蓮に関して言えば、12時頃に見るのが一番良いように思う。
横池からは風吹岩を避けたバイパス路を下る。さっき飲んだビールが
いけなかったのか、両足首辺りが攣って痛い。いつも膝から上なのに
初めての箇所だ。でも歩けないほどではないのでヨチヨチ下って行く。
かかりつけの医者に聞いて、芍薬甘草湯を処方して貰っているが家に
置いてある。即効性があるという話だったので救急セットに加えよう。
魚屋道の鉄塔建替え工事現場から、甲南山手駅方面の道に入ってみる。
南側から見た工事現場の様子。組み上げられているのはヘリコプター
が資材を降ろす場所かな。発着もするのだろうか。それにしても広い
範囲が伐採されている。工事終了後はまた違った風景が見れるだろう。
さて西天上谷はどうだったか。家族と一緒に歩けるかを基準にすると、
下流の堰堤群はスキップしないと難しい。それに核心部は短かすぎる。
むしろ遡行終了後に歩いた草深い道の方が、静かで印象に残っている。
地理院地図を見ると十文字山へ登る道の途中から、石積み堰堤辺りに
斜降できないかと思う。次回に機会が有れば試してみよう。大谷川は
分かったが、西天上谷が実名かハイカーの付けた通称かは不明のまま。
今日の言葉 行く河の流れは絶えずして、しかも、もとの水に
あらず。 淀みに浮かぶうたかたかは、かつ消え、かつ結びて、