このところ旅行を計画する度に、天候に恵まれない。阪急からJRに
乗り換えた嵐山では晴れていたが、亀岡駅に着くと深い霧に覆われて
いる。だが今日は9月30日、ある理由があって予定は変えられない。
阪急電車は金券ショップで買った株主優待券で300円。嵯峨嵐山駅
から亀岡駅までも200円とまずまずだが、登山口の赤熊バス停まで
の京阪京都バスが700円と高く、日帰りではもったいないって思う。
亀岡駅から出たバスは高校生で一杯。我々は35分も掛る赤熊バス停
で下車するが彼らは乗ったまま。何処まで通学するんだろうと要らぬ
心配をする。バス停近くに道標があり山に向かう。解りやすい登山口。
半国山が地域住民に愛されていることが良く分かる案内板。というの
も、略図ではあるがコースやバス停の位置、音羽川の流域が正確に描
かれている。その事は後で実感する。登山口の標高は約170mある。
獣除けフェンスを抜けると左手に堰堤が見えた。今回もあえて詳しい
遡行記録などは調べずに来た。それほど難しい谷ではなさそうなので
知らない方が楽しいはず。少し早いようにも思うが入渓してしまおう。
フェンスに虻(アブ)が多いとの注意書きがあった。だが今日の気温
だと出会う事はないだろう。水温は冷たく感じないが、積極的に濡れ
ようとは思わない。標高700mの山にしては水量が少なくないかな。
その原因は2基目の堰堤にあるかも知れない。左岸から乗越えようと
思ったが、水抜きが割合大きい。岩も詰まってないので抜けれるかも。
まず家族はザックを背負ったまま。ハムはザックを前に抱え通過する。
堰堤上流の堆積地を過ぎると、ようやく水量も増えて谷らしくなった。
この谷を知ったのは、今年8月に小学生の沢登り体験会が行われたと
いう新聞記事を読んだからにすぎない。はたしてどの程度の谷なのか。
前方に雰囲気のある斜滝が見えてきた。左岸の登山道から滝を観る為
に、道も降りてきているので、此処から入渓するのが良かっただろう。
この後も赤熊コースの登山道が谷に沿っており、いつでも逃げられる。
傾斜の緩いこの滝は、踝(くるぶし)を濡らすぐらいで歩いて行ける。
夏なら積極的に水心を歩いてみたいが、今日の気温ではそんな気も起
こらず。右岸はやや傾斜があるが、左岸は比較的緩やかな斜面が続く。
此処までもそうだったが、一段と河原の岩が大きくなった。摩耶山よ
りも約70mも高い標高ながら、谷の傾斜は一向に上がらない。それ
故に巨岩の積み重なりの通過にも、苦労することもなく歩いて行ける。
もう一つの特質は水質がすこぶる良い。近くには湯の花温泉があるが、
何か関係があるのかも知れない。想像にすぎないが、鉱物質が多くて
藻の発生が抑えられているのかも知れない。一枚岩をへつって行く所。
ただし冗長な感も否めない。小学生の沢登り体験会も、下流から谷を
通して歩いたのではなく、ごく短い区間で行われたのだと思う。しか
もその場所はまだ先なんだろう。音羽渓谷という程の滝場は続かない。
ようやく3mほどの小滝が現れて退屈から逃れられる。六甲山のよう
な花崗岩でない事だけは分るが、何という岩質なんだろう。特にフリ
クションが良いとは思わないが、脆い所がほとんどないのが好ましい。
今までよりも一段と大きな岩が、河原の中央に転がり、その奥に滝が
見えている。谷を塞ぐ巨岩の裾を潜る様にして進んでいくと、前方が
少し広がって二条の滝が流れていた。だが思ったよりも大きくない滝。
と云うと失礼だが、梅雨時の水量の多い時に来れば、印象は違うはず。
ここは濡れるのを嫌って、向かって左側の流れに沿い上がって行った。
盛夏なら技術に応じて、色々な登り方ができそうな滝ではあるのだが。
以降は小さいながら滝場が続いた。ここまで虻も蚊もいない。それは
良いのだが、やや季節外れかなという気もする。もしもう一度この谷
歩くなら、水量の多寡に関わらず、新緑の5月ぐらいに来てみたいな。
ようやく滝らしい滝が現れた。これが音羽の滝だろう。上下2段ある。
下段は右岸をへつると枯れたガリーがあるので、容易に上って行けた。
水量が多ければ左岸を巻く事も出来る。すぐ上に登山道が走っている。
中段で休憩する。家族が「やっと」と呟いた。どうやら高い交通費を
かけて来た割にはと思っていたようだ。でも六甲山や比良山の谷とは
雰囲気が違うし、山頂は展望が良いらしいので悪くはないと思うけど。
座って休んでいたら寒くなったようで、家族はウインドブレーカーを
着こむ。その位の気温。上段は何かの背のような右岸の岩場を辿った。
ところで今日は GoTo トラベル割引を使って、京都市内の宿に泊まる。
というのも明日10月1日からは東京都からの旅行者も見込まれるし、
地域共通券の配布も始まるので、各ホテルが宿泊代を値上げしている。
我々の泊まるホテルも、明日以降は50%以上の高値となってしまう。
というか今までが安すぎた。そんな訳で天気予報にかかわらず予定を
組んだ。朝霧が上れば日も差すかと思ったが、そのまま曇り空になっ
たよう。両岸が緩やかなので暗くないが、水流の美しさは際立たない。
音羽の滝から上流も、多少の変化は続いて楽しめた。何よりも澄んだ
水質が良い。つい裏六甲の逢山峡の濁った水と比べてしまう。堰堤が
谷の入口で2基しか無かったのも、摩耶山と比べると羨ましい限りだ。
源流域となっても水量がそれほど落ちない。案内図にも描かれていた
が、赤熊コースが山頂北側の肩に出るのに対し、音羽川を詰めて行く
と最後は山頂南側へ出てしまう。此処で遡行を止めて登山道に戻ろう。
やや上り過ぎていたようで、100m程北側へトラバースすると広い
登山道に出た。下部は路肩に石垣が組んである立派な道。かつて薪炭
を積んだ牛車が行き交ったに違いない。主稜線まで杉の人工林が続く。
遡行を終了してから約30分で主稜線に着いた。牛つなぎ広場という
名が付いている。鈴鹿で云うところの牛コバ(憩場)か。るり渓への
分岐もある。西側は大阪府能勢町や兵庫県丹波篠山市と接する辺りだ。
主稜線は幸いなことに自然林が残されていた。いや炭焼きの二次林と
言った方が正確なのかも知れない。下生えのない落葉樹林が好ましい。
緩やかな傾斜の山容なので、冬の降雪直後に登ってみるのも楽しそう。
牛つなぎ広場から約20分で頂上に到着。丹波の国が半分見えるから
半国山という名が付いたという。展望は広いので異論は唱えないでお
こう。北摂の剣尾山や、京都の愛宕山も見えるはずだが同定できない。
でも本当に774mの標高があるのかな。と疑いようもない事を思う。
感覚的には標高500m位。海から立ち上がる摩耶山とはやはり違う。
まだ13時だが下ろう。千ヶ畑15時14分のバスを逃すと2時間後。
千ヶ畑への道も最初こそ落葉樹林だったが、主稜線から外れると杉の
人工林となり、その後は広い林道を歩くようになる。登山コースとし
ては、変化もなく魅力的ではない。だが学校の遠足には向いてるかも。
千ヶ畑口のバス停には14時10分に到着し、一時間程バスを待った。
亀岡市ふるさとバス(200円)と京阪京都バス(260円)に乗り
継いで亀岡駅。JR(420円)で京都駅まで。九条通りの宿に入る。
今日のBGM・・・TLC-waterfalls(
【和訳したらベタベタの関西弁になってしまった】waterfalls(cover)iqu&coco Nakatani