摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

京都一周トレイル・東山(伏見稲荷~銀閣寺)

昨年の事だが金券ショップで、阪急全線株主優待券を4枚買っていた。

比良山にでも行くだろうと思っていたが、使わぬまま緊急事態宣言と

なった。その利用期限が5月末。少々悩んだが使わないのも勿体ない。

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緊急事態宣言は解除となったが、まだ自粛ムードは続いている。阪急

夙川駅から河原町駅へ。京阪電車に乗換えて伏見稲荷駅。近年は特に

千本鳥居がインスタ映えとかで人気の神社だが、二人とも初めて来る。

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駅前に京都一周トレイルの道標がある。番号が1で東山コースの起点。

時刻は7時40分。駅前から続く土産物屋街はシャッターが下り閑散

としているが、朝早いからかコロナ対策で休業されてるのか分らない。

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思っていたより、新しく大きな社殿。表参道にはもっと大きな鳥居が

ある。全国3万の稲荷神社の総本社という事なので当然ともいえるが、

神社本庁に属さない単立神社というのが、いかにも京都らしいところ。

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まだ早朝と言える時間帯だが、参拝客の姿はチラホラある。散歩する

地元の人も少なくはない。もう少しジメジメ雰囲気かと思っていたが、

天気も良いせいかカラッとした感じだ。まずは稲荷山の頂上を目指す。

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厳密に言うとこの辺りは、まだ千本鳥居ではなくて。この前方で鳥居

が上り下りの2列並んでいる箇所を言うらしい。しかし、その鳥居が

小さくて余り印象には残っていない。四か国語の横断幕があった事位。

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とてもキレイな境内案内図があった。稲荷山は標高233mで、この

山自体が伏見稲荷御神体という。そのせいか東山トレイルは頂上へ

寄らず途中から北へ転じる。でもせっかく来たのだから寄ってみたい。

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石造りの鳥居や祠は相当古いもので、奉納者の名を見るのも興味深い。

向かって右側のキツネは珠を大体咥えているが、左側のキツネは色々。

鍵であることが多いように思うけど、このキツネは巻物を咥えている。

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その名も四ツ辻という十字路に到着。西側に京都市南部の展望が良い。

ここで朝食の弁当を使う。二人共気づかずに食べてしまったが、偶然

家族が用意したのは稲荷寿司。奉納してから食べればよかったと後悔。

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四ツ辻からは三ノ峰・二ノ峰と越えていく。峰とは言えど尾根上の瘤

に過ぎないが、それぞれお社と土産物店がセットになってある。階段

が続くので何処から持ってくるにせよ、商品の搬入は相当手間だろう。

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約一時間かかって稲荷山の頂上である一ノ峰(233m)に到着する。

だが石碑や奉納された鳥居が積み上げられ、頂上という雰囲気は全く

ない。写真を撮っている背後には売店があり、参拝用品を売っている。

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一ノ峰から周回路を通って四ツ辻に戻る。鳥居がここまで増えたのは

ここ数年の事という。確かに新しい鳥居が多い。表から見れば神々し

く見えぬでもない鳥居だが、裏から見ると人間の欲を並べているよう。

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奉納用のミニチュアの鳥居を売っていた。買えば名前を入れてくれる。

写真中央9000円のサイズが多く出てるよう。適当にそのあたりに

置いておけば御利益があるのだろうか。信仰心がない者には分らない。

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初めて見る独特の世界で、ハムは興味津々なのだが、家族はどうもお

気に召さないようで少々機嫌が悪い。少なくともこういう場所がある

という事は知っておいて損はなかろう。何より入場は無料なのだから。

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ややこしくなったので案内図で行程を説明しておこう。南西から上り

四ツ辻から三ノ峰・ニノ峰・一ノ峰と回ってきたが、案内図では逆の

時計回りが推奨されている。この後は四ツ辻に戻って荒神峰へ向かう。

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四ツ辻には参拝客やハイカーの姿が増えていた。コロナ禍前は外国人

観光客で溢れていたのだろう。もし其の頃に来ていたら人ごみを嫌い

お山一周もしなかったかもしれない。東山トレイルは右の石段を上る。

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荒神峰と言っても一ノ峰と同じ、石碑や鳥居が積み上げられている所

から、北に向かって進むと駐車場がある。なるほど土産物はここから

搬入されているよう。さして遠くはないか。モチツツジが終わりかけ。

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北に向かって下る舗装路は、灌木と竹林に囲まれた京都らしい雰囲気。

この先で瀟洒な住宅街に突き当たる。曲がり角に京都一周トレイルの

標柱4があり、階段道を降りて川を渡るジグザグな行程が記してある。

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逆コースを単独ハイカーが上がって来られた。何処まで行かれるのか。

どうして此処の写真を撮ったかというと、全行程で一番雰囲気の良い

標柱だったからだ。以降も色々なロケーションに標柱があって面白い。

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道標に記された以上にジグザグで難解なコースが、住宅街の中に続く。

私製道標が民家の塀などに幾つも架かっている。そうでもしなければ

始終道案内を請われるだろう。此の階段も難解で迷いやすいスポット。

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住宅街から石段を上ると宮内庁が管理する御陵があり、さらに進むと

泉涌寺の門前を通る。その先、今熊野観音寺分岐で行き過ぎてしまう。

原因は写真の通り。石燈籠の陰に道標がある。ここも道迷いし易いな。

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何でもない道だけど左手に京都タワーが見えてほっとする場所。大体

自分のいる場所を想像できる。御陵や寺社といった事に関心があれば

見所が次々に現れて面白いだろう。ただ植生は一般的な雑木林が多い。

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再び住宅街に出て三叉路にある道標9-1。ここも京都らしい雰囲気。

但しコースはスイッチバックするように住宅街に入る。再び森に入る

と「京女鳥部の森」という看板。京都女子大学が管理しているという。

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何か鳥を観察する施設があるのかと思いきや、いたって普通の雑木林。

少なくとも杉の植林帯でないのが救いかな。秋に来ればどんなだろう。

この林を抜けると京都市中央斎場への道路に出る。山奥だが立派な道。

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その道はすぐに国道一号線に合流するが、横断歩道がなくて渡れない。

西寄りに地下歩道があるというのだが、そうと知っていなければウロ

ウロしてしまいそう。信号のない脇道を渡らねばならないが危険個所。

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時刻は11時52分。気温も上がって疲れも出てきた。国道一号線を

潜るとまた階段道から林道が続き、標高232mの清水山に向かって

行く。聞いたことがない山だったが、清水寺の背後にある山という事。

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この登りが足に堪えた。少し歩いては休む繰り返し。先を歩いていた

家族も足が攣ったと言って路傍に座り込む。外出自粛明け初めての山

歩きなのが原因だろう。こむら返り対策に水分を多めにとっておこう。

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清水山の山頂は杉林に覆われて展望はない。トレイルから少し入ると

三等三角点がある。更に進めば清水寺に下る道があるが、台風被害を

理由に通行止めとなっている。本当の理由は拝観料徴収の問題だろう。

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東山山頂公園に到着する。東西に展望所がある外は駐車場とトイレが

あるだけ。ヘリポートから南東に見る山科の町並み。右側にあるのが

阿含宗の総本山。聞いたこともない公園だが、けっこう来園者は多い。

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ついでに西側を展望も張っておく。東側は老人の憩いの場所だったが、

こちら側は車で上がってきた家族連れが多い。自粛明けのホッとした

空気が流れている。京都市街南部からポンポン山辺りが見えてるのか。

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東山山頂公園から将軍塚青龍殿への車道を進み、途中から敷地を迂回

するようにトレイルは巻いていく。とても立派な伽藍だが拝観停止中。

この位の距離でも、不快なセキュリティシステムの警報音が鳴り響く。

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ただこの迂回路が広く伐採されて爽快な所。山歩きという点では今日

一番気持ちよかった。再び樹林に入ると青龍殿の舞台の下を通過する。

最上部だけが木製で、基礎はコンクリートなのが清水寺と違うところ。

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その昔は牛車も通ったに違いないと思われる幅広い道を下って行くと、

右に都ホテルの敷地を見るようになる。宿泊客専用の散策路が広範囲

に設けられている。再び市街に降りると粟田口三条通を東へ向かう。

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三条通に入ると強い違和感を感じる。それもそのはず此の通りを走っ

ていた京阪電車の線路が無い。35年前大津にいてよく利用していた。

だが廃線は全く知らなかった。浦島太郎ってこんなことを言うのかな。

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今は市営地下鉄が走っているそう。三条通から横断歩道を渡って蹴上

インクライン跡に入る。京都一周トレイルのルートから離れているが

名所なので立ち寄りたい。見た事もないほど幅の広い軌道に感心する。

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ひとしきり疎水の施設を観覧し、疎水に架かる橋で京都一周トレイル

に戻る。いつのまにか標柱番号が32になっている。ここから急坂の

車道が続き足が止まってしまう。路傍の石に腰掛けて水分を補給する。

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トレイルは二手に分かれるが、日向大神宮の境内を通過する左を選ぶ。

伏見稲荷大社とは全く違う雰囲気だ。天照大御神を祀る由緒ある神社

だが、神社本庁には属しておらず神社本教所属というのが京都らしい。

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日向大神宮から大文字山へ最後の登り。もっと暗い山と思っていたが、

登り始めは背の低い灌木が多く、中腹は台風による倒木帯。頂上直下

は新しく林道が開通していて、良くも悪くも明るい山に変わっていた。

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蹴上からは2時間もかかって大文字山頂に到着。京都一周トレイルは、

なぜか頂上手前で鹿ケ谷に向けて下ってしまう。大文字の火床に寄ら

ないのも惜しい。という訳で銀閣寺の門前までトレイルを外している。

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大文字山頂に来たのは確か3回目。今日は存外に展望が良く、あべの

ハルカスや梅田のビル群も見えている。平日にも関わらず次々とハイ

カーが訪れる。来たばかり留学生っていう感じの人もいて京都らしい。

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山頂から北へ伸びる尾根を辿って、大文字焼の火床へ到着。家族は膝

の裏の筋肉を傷めたのか、階段を下ると痛むそう。もう三回目なので

大きな眺望に感動はない。どうしても人工的な雰囲気なのは否めない。

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火床へ登って来る人は結構多い。数年後この記事を読むと何を言って

いるのという事になろう。まだコロナ禍による緊急事態宣言の余韻が

残っている時期だから。山歩きというより散歩の延長線上らしい場所。

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下った銀閣寺門前は閑散として人影もない。数軒が営業しているのみ。

土産物街を抜け、疎水沿いに白川通今出川交差点から、今出川通りを

西へ進んで行く。 疎水がこんな北まで、回っているとは思わなかった。

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吉田山の麓で振り返ると大文字山の火床が見えていた。今日は夕食を

済ませて帰ろうかと思う。両側に京都大学のキャンパスを見るように

なって、理学部の先に目的の食堂がある。時刻は17時を過ぎている。

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学生食堂といった雰囲気が残る洋食店。実際に先客は京大生のようだ。

参考にしたネット記事よりは値段が上がっていた。ビックリ盛り定食

を頼んだら、半分ぐらいで満腹感を感じてしまう。もちろん完食した。

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東大路通が歩きにくく、二条通で鴨川右岸に出て南へ下る。木屋町

飲食店しか営業していないように思ったが、三条大橋から見ると床の

営業は行われているようだし、鴨川のカップル等間隔も復活している。

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だが三条通の人出はごく僅か。山歩きとは言えない行程ではあったが、

京都らしい見所は多くて、終日飽きずに歩くことができた。京都一周

トレイルの中で最も観光的な区間だろう。今日の歩数は56656歩。