手許にある昭文社の地図(六甲・摩耶2012年版)を見ると、蛇谷
北山に芦屋市最高峰と付記されているが、違和感を持っていた。なぜ
なら芦屋市の看板がある東六甲ドライブウエイより、かなり低いはず。
阪急夙川駅から阪急バスに乗り終点の西宮甲山高校下車。土曜なので
運行本数も少なく生徒も一人しか乗車していない。バス停は敷地内に
あるが校舎が見えない。どんな高校生活かなと家族は興味を持ってる。
一方通行の県道16号線を歩いて、途中から車止めのある旧道に入る。
ロードバイクに何台も追い抜かれる。路面は清掃されているので歩行
者・自転車道路として管理されているよう。のんびり歩けて良い感じ。
ガードレールの切れた所から仁川を渡る。以前は在ったハイカー用の
ゴミ箱はやっぱり無い。相変わらず道標もない。此処は西宮市であり、
対岸の道を進めば芦屋市の奥池に抜ける。道標の有無で市域が分かる。
大藪谷沿いの歩道を進んで堰堤を二基越えると、崩れかけたケルンが
路傍にある。ここが三叉路となっていて、前方に大蛇谷が見えている
が、右の樹林に入って行き斜面に取り付くのが、小天狗山への登山道。
大蛇谷を遡行して適当な所で、此の道に出て下降した事は一度あるが、
小天狗山を通過するのは初めて。もっと密生した樹林の道だったよう
に記憶していたが、冬枯れの今は割合に明るいし、尾根も意外に細い。
これから進む尾根筋にコブが三つ見えるが、どれが小天狗山だろうか。
地形図を見ても六甲山の支尾根に過ぎないように思う。社家郷山など
から見ても、ピークがあるようには見えない。よく踏まれた道が続く。
小天狗山を示す小さな私製道標がある。尾根道から20m程北に入る
所が、標高点557のよう。私製の山名標識が一つある。尾根道から
の比高差は数メートルに過ぎず、全くピークという感じのしない場所。
東側が人工的に伐採され、甲山や阪神競馬場が見える。この付近では
ありふれた景色だし、狭い頂上は休憩する気も起きない。天気予報は
一日中晴れのはずだったが、段々と雲が多くなってきた。気温は高い。
標高点から5分も歩けば路傍に大岩がある。東の基部から10m程の
高さがあって立派なものだ。小天狗山という名からは此処の方が余程
頂上らしくある。三角点や標高点と山の頂上は一致する訳ではないし。
次の目標は熊笹峠。標高が上がるにつれて笹原が現れるようになった。
最初の内は都笹かと思われる丈の低い笹だったが、やがて葉の大きな
熊笹の原になった。分岐が幾つかあったが、常に高みに向かって行く。
芦有ドライブウェイに出た。反対側に歩道はない。45プレートから
南へ少し下ってみたが見つからない。歩行者は通行禁止なので道標類
が無いのは当然だが、古来から歩かれた道の通行権は主張できるかな。
結局47プレートまで上ってみると尾根への道があった。土曜日だが
通行する車は少ない。ドライブがレジャーという時代でもない。経営
は成り立っているのかな。奥池の住民でなくても公道化が望まれよう。
上がった所が熊笹峠らしい。「この先ハイキングロードなし」という
看板は芦有ドライブウェイが設けた物だろうが、笹を刈ったのは芦屋
市かな。ちょっと皮肉な感じはするが、作業の為で他意はないだろう。
それにしても広くてよい道だ。この道は奥池から始まるが、さほどに
需要が有ると思えない。奥池からスタートだと土樋割峠へのコースが
一般的だろう。波打つようにアップダウンを繰り返して疲弊する道だ。
いったん車道脇まで下りる。この広場は芦屋市の災害情報マップでは
臨時ヘリポートと記載されている。此処から林山(747m)に行く
踏跡があるというが定かでない。展望のない山らしいので興味もない。
芦有ドライブウェイの宝殿ゲートを右に見ると、しばらくして東六甲
ドライブウェイに出た。この道は自動車道路ではないので、自転車や
ランニングする人が幾組も通過して賑やかだ。芦屋と西宮の市境表示。
石宝殿の東口で再び西宮市に入る。鉢巻山トンネルを抜けるのが早い
とは分っているが、トンネル手前から旧道に入る。阪神大震災の折に
土砂崩れを起こし、その後トンネルが完成したため廃道となった部分。
後鉢巻山をぐるっと巻いて崩落現場に着いた。途中神戸市北区方面や
西宮市山口町辺りの景色が広い。震災経験の風化という事が取り沙汰
されるが、この古色蒼然とした案内板を見ればそれも当然と思われる。
東六甲ドライブウェイとの出合からは、六甲全山縦走路に入る。普段
トンネルを通過してしまうので、この部分は一度も歩いたことはない。
緩やかに東へ向かうが、やがて三叉路があるので西へ戻るように上る。
石宝殿からするとグルグル2度回ったような感じで、後鉢巻山の頂上
に着いた。関西電力の通信施設があるが、樹林に囲まれて展望はない。
鉢巻山と記された私製の山名標識がある。地理院地図に山名はないが、
昭文社の地図や芦屋市発行のガイドマップには、後鉢巻山とあるので、
そちらの方が適当だろう。因みに蛇谷北山と林山との中間に鉢巻山が
ある。どちらもドライブウェイがピークを巻いてるのが名の由来かも。
頂上の一角に座り込み昼食にしよう。スーパーで買った水餃子を寒い
のでスープ餃子にして頂く。薬味は台湾土産の金鉤朝麻辣椒。この種
の辣椒の中では最強の辛さ。数滴垂らすだけで十分で、コスパもよい。
昼食を終えたら三叉路を東へ下る。トンネルの上を越えたのでドライ
ブウェイの南側に出る。ちょっと変な感じ。そのまま石宝殿の境内に
入って行く。 駐車場からは、海や市街・最高峰も見え意外な展望所。
下山道は完全に芦屋の市域に入っている。標高870mから下り鞍部
が800m。登り返して蛇谷北山の標高は840m。頂上には芦屋市
最高峰と記された山名標識がある。一見すると公式かと思う立派さだ。
だが設置日が記されている点で、五助山や天狗岩、鉢巻山と同じ人が
作った私製でないかと思う。それなりの根拠があるのだろうが、隣に
芦屋市の公設標識があるが、最高峰云々といった記載はもちろんない。
頂上から見える市街は神戸市東灘区。さて芦屋市発行のガイドマップ
では後鉢巻山に芦屋市最高地点と付記があり、蛇谷北山は何の記述も
無い。最高地点がピークでなく斜面であれば、最高峰が低い事もある。
だが地理院地図を見る限り、後鉢巻山の頂上は、神戸市・西宮市との
市境になっており、十分芦屋市の最高峰と言えると思うがどうだろう。
土樋割峠に下ってきた。東お多福山を越えてもよいが、奥池に向かう。
初めて歩く奥池の邸宅街ではちょっと迷う。全部で三つある池の内で、
一番大きな池は奥山貯水池ていうのか。そんな事も初めて知る。対岸
に見えるのがゴロゴロ岳なんだろうが、とても山という感じではない。
真中の池が奥池というらしい。時刻は既に16時15分。日が傾いて
薄暗くなってきた。奥池からは観音山を越えて、鷲林寺に下るつもり。
摩耶山で日頃ロープウェイで下っているので、そろ々足が疲れてきた。
飯盛尾根の分岐。此処がまた西宮市との市境である。以降は西宮市の
公設道標は一切ない。それに業を煮やしたか、新しく私設道標が分岐
ごとに設置されているが、通行の多い道ゆえ、行政のすべき事と思う。
観音山の頂上で紅茶とチョコの小休止。バスの時刻なんて考えてない。
のんびりしてたら17時近い。暗くなる心配をしなくてはいけないと、
パノラマコースを駆け下る。15分程で鷲林寺の境内まで下ってきた。
ほっとしてバス停にゆっくり向うと、目の前を阪急バスが行き過ぎる。
一時間待たなくてはと覚悟するが、10分後に阪神バスの便があった。
同一資本でバスカードも共用できる。真暗な中5分遅れでバスが来た。
今日のBGM
Godzilla KOTM - Making the Music - Bear McCreary (official)