正月といって予定も無かったが、ふとビジネスホテルって休日が続く
と安くなるのではと思った。実際に予約サイトで検索すると安売りし
ているホテルが散見されたので、まずは広島駅の近くで一泊予約した。
青春18きっぷ利用で、6時に家を出てJR海田市駅12時33分着。
快速なら広島駅の一つ手前の駅だが、古い町並みが残っている。街の
背後に見えるのが日浦山(ひのうらやま)。低いが展望が良いと云う。
海田市駅から東へ10分歩き、町役場の前から熊野神社の階段を上る。
正月の準備が整えられつつある。石造物が立派なのは山陽道の寺社で
は共通の特徴のようだ。本殿の裏手に回って、いったん住宅地に下る。
道標に従って細い路地を入って行くと薬師禅寺の境内に入る。駅から
黄金色に輝いて見えていたのが「ひまわり観音像」。そのまま階段を
登って行くと墓地の奥に、日浦山Aルート登山口の道標が立っている。
列車から風雪で霞んでいる様子も見られたが、山の懐に入ってみれば
南向き斜面な事もあり、風も無いし寒さもそれ程でない。衣服を調整
して歩き始める。整備された遊歩道を歩いて行くだけの気楽なハイク。
斜面は櫟(クヌギ)の落葉で一面覆われている。炭焼きの二次林だと
思われるが、その役目を終えて今は照葉樹も混じる林相となっている。
照葉樹ばかりの摩耶山に比べれば、はるかに気持ちよく歩ける里山だ。
とはいえ薬師禅寺から20分も歩けば、岩がちな尾根筋に出て展望に
期待できるようになる。本当は笠岡辺りの島嶼に渡ってみたかったが、
日が暮れるのが早い冬、駅から近くて短時間で登れるこの山を選んだ。
路傍の大岩の上に立てば、一気に展望が広がった。ガイド本等で頂上
からの眺望が良いのは知っていたが、これは期待以上だ。因みに分県
ガイド「広島県の山」では何故だか、このルートは紹介されていない。
さらに露岩の道を進むと、地獄岩と名付けられた岩場が見えた。この
岩場を登る私設ルートもあるのだが、ネットで見るとトラックロープ
やアルミ梯子などが、縦横に張り巡らされたパラダイスになっていた。
例えば荒地山のボルダー群に、ロープが張り巡らされているとしたら、
クライミングゲレンデとしての価値は大きく下り、景観も損なわれる。
もっとも地獄岩の頂部へは、一般ルートから僅かにそれるだけで着く。
地獄岩の頂部からの展望も素晴らしい。宮島の弥山や天応烏帽子岩山
といった旧知の山も見えているし、明日に予定している江田島の山も
正面に見えているはず。繁華な市街地と瀬戸内の島々の対比が見事だ。
地獄岩頂部からの眺望を十分に楽しんだら頂上へ向かう。天気予報は
晴れ時々曇りぐらいだったと思うが、上空は暗い雪雲に覆われている。
親子三人連れのハイカーと出会った。寂しい空模様なので少し嬉しい。
14時8分、日浦山頂上に到着。JR海田市駅から1時間半も掛った。
普通の人なら1時間位だろうか。南北に長い頂上は過剰に伐採されて
いる。確かに眺望は良いのだが、素人の仕事で不自然な感は否めない。
やはり南側の展望が素晴らしく、敢えて他の方向まで伐採する必要は
無いように思う。夏は日陰も無くて暑そうだ。広島駅も右側に見えて
いる。市街地南端の山が、黄金山という面白い名前だと案内板で知る。
ちらちら小雪が舞う中、岩場に座り込んで昼食休憩する。といっても
バナナとチョコの行動食。家でテルモスに入れて来たコーヒは生温い。
新幹線のトンネルが足元に見えたが、時刻が悪いか2台しか通らない。
さて下山はBルートをとろう。JR海田市駅近くの大師寺に下り着く。
途中に急斜面を横切る様に伐採された箇所がある。新たに道を作ろう
と南面の岩場に続いている。積雪地ならば雪崩を起こしそうな状況だ。
行政も苦慮し真新しい看板が設置されているが、止む気配は無いよう。
広島市安佐北区や小屋浦の土砂災害は記憶に新しい。同じく風化した
花崗岩地質の此の山において、土砂崩れの起因となっておかしくない。
ネットで呑気に伐採され展望が良くなったと、書かれた記事を見ると
首を傾げたくなる。行政の事後の対応を待つより、広島の山岳団体が
こういった行為の是非を表明すべきと思う。中国電力の高圧鉄塔標識。
さして見所も無いBルートを下って行くと、寄進された石仏が88体
並ぶ道となる。四国八十八ケ寺の本尊が模されているよう。分県ガイ
ド「広島県の山」では、この退屈なBルートを上りに紹介されている。
大師寺の急な石段を下って住宅が密集する海田市(かいだいち)町内
に出る。かつては海が山の際まで迫っていたというのも頷ける街並み。
大晦日、年越しそばの代わりに、ラーメン食べようと有名店に向かう。
予想されたが大晦日から正月三日までは休業だった。宿代が安いのは
よいが、食事に関しては諦めざる得ない事が多い。広島市内のお好み
焼き店も休業が多い。駅ビル等の支店は営業してるが何だか味気ない。
JR海田市駅から見る日浦山。広島駅へは約10分で到着する。予約
した宿は再開発が進む広島駅北口にある。その都会的な様子に神戸は
つくづく田舎と思ってしまう。夕食はスーパーで買った総菜で済ます。