この日は、まず本部富士と呼ばれるミムライに登り、その後で伊江島
に行こうという欲張りな計画を立てた。とにかく朝早くに出発したい。
5時過ぎに宿を出て65系統のバス停に向かう。途中で道に迷い焦る。
どうにか北部合同庁舎前から6時14分の始発に乗車。宿からバス停
まで遠すぎる。この便は登山口の謝花を経由せず、浦崎で下車。大型
コンビニが2軒ある便利な所。三角形の山が二つ。左がミムライかな。
浦崎から30分歩いて謝花バス停。分県ガイド沖縄県の山では此処で
下車と記されているが、実際は一つ手前の謝花入口バス停からだった。
付属地図のバス停名も誤りだった訳で、あてにならないガイドブック。
遠回りはしたが、本部富士(以下ミムライ)への私製道標を見つける。
ゴルフ場クラブハウスに向かう道だが、次の三差路で山側の道に入る。
幾つか宿泊施設の看板があるが、ミムライを示す道標は見当たらない。
東側に向かって坂道を上ると、強烈な朝日にさらされる。さすが沖縄。
10月下旬とはいえ気温がぐんぐん上がる。この道はゴルフ場の中を
貫通している。瀟洒な民宿が数軒あったりと、リゾートぽい雰囲気だ。
三差路に突き当たると左に案内板がある。本部ふるさと歩道の案内図
あくまで円錐カルストの麓を巡るだけ、山頂への道は記されていない。
分県ガイドでは、此処にキャンプ場があるとしているが見当たらない。
またキャンプ場左手にあるという、ミムライの登山口も分らないまま。
遊歩道を進んで行くよりない。植物の生育の早い沖縄では、数年間も
人が歩かないと道などすぐに消えてしまう。まあどうにかなるだろう。
駐車場と山里の分岐に到着。ここも同じ案内図があるが至極難解な図。
なぜなら山里という地名が二つあるし、謝花と記されてあればまだし
も、古島という地名を知らないし、おまけに登山道は記されていない。
ミムライは進行方向の左側にあるので、ピンクの道をもう少し進んで
みよう。全部で11の円錐カルストが描かれているが、その内で予定
してるのはミムライとデーサンダームイ。他は道があるのか知らない。
案内板から駐車場方向に数十mも進むと、私製道標が路傍に安置して
あった。左手の樹林へ良く踏まれた道が続いている。この道標がない
と行き過ぎていたかもしれない。しばらくは平坦で緩やかな道が続く。
徐々に道は岩がちになるが、昨日の雨で濡れている岩が恐ろしく滑る。
雨水で石灰質が溶けだして、表面がヌルヌルになっているように思う。
一見するとフリクションがよさそうだが、そのギャップに驚かされる。
雲南省の石林を思いださせる景色。雨が石灰岩を溶かして作った造形。
ギザギザした岩角が尖っているので、厚手の手袋は必携。しっかりし
た靴底でないと足が痛いだろう。思っていた以上の鋭さで歩きにくい。
南西にウフグシクムイ(237m)が見える。円錐カルスト群で唯一の
三角点があるピークだが、道は有るかないのか不明。存在感はあるが
人気がないみたい。その向こうは渡久地の市街。瀬底島も見えている。
ミムライの頂上は東西に細長く、両端が高くなっている。此方の方が
少し高いように思うが、西側のピークには何か立っている。後で寄っ
てみよう。一休みしたいがギザギザの岩だらけで腰を下ろす所がない。
足元はこんな所ばかり。尖った岩を渡り歩いていく。岩と岩との間に
嵌らないよう神経を使う。立ったまま水分を補給し小休止。標高は低
いが、360度の展望は広く大きい。吹き抜ける風が涼やかで爽快だ。
沖合に見えるのは仕掛け網かと思ったが、後で調べるとクロマグロの
養殖場のようだ。その向こうには水納島のラグーン。シュノーケリン
グをしてた頃に行きたいと思いつつ、未だに行った事のない島の一つ。
西側のピークに行ってみると、立っていたポールは地元消防団が登山
記念に立てたもので、山頂を示す物ではない。やはり此方は少し低い。
眼下にはゴルフ場から海洋博記念公園。そして沖合には伊江島を見る。
展望を楽しんだら元来た道を戻り、コンクリート舗装のふるさと歩道
を駐車場に向かって歩いて行く。100mも進んだろうか。峠状の所
で家族は気づかず通り過ぎているが、右側の藪に小さな看板があった。
デーサンダームイへの登路を示す私製道標だった。やはり良く踏まれ
た道が樹林に続いている。この道も分県ガイドに記された道ではない。
ふるさと歩道の最も標高の高い箇所から、頂上を目指す効率的な道だ。
藪っぽく見えるが、ミムライの道と負けず劣らず、良く歩かれている。
急峻だがクレモナロープがしっかり張られている。安価なトラロープ
や、使い古しのザイルでないのが嬉しい。沖縄にも分ってる人がいる。
分岐から5分ほどでデーサンダームイ頂上に到着。ミムライと同じく
石灰岩だが、此方は平たい岩が多いので座って休憩することが出来る。
南側には、山里集落や円錐カルストが、箱庭のように見えて興味深い。
先ほど登ったミムライが大きい。本部富士と呼ばれるが、ハム的には
少々疑問。何々富士と呼ぶには姿形と独立峰であることが要件。後者
が当てはまらない。同地区のギシキリムイのほうが富士山に似ている。
山に入ってからはずっと蝉が鳴いていた。聞いたことの無い鳴き声で、
一言でいうと金属的。帰って調べるとオオシマゼミという蝉で沖縄で
は9月から11月に鳴くらしい。どちらかというと秋の風物詩だそう。
遊歩道から駐車場近くの道路に出た。因みに分県ガイドでは此処から
デーサンダームイへの登山道があると記されているが、見当たらない。
山里にはバス便がないので、渡久地に向けて3km車道を歩いて行く。
円錐カルストの風景、沖縄らしい建築と車道歩きもさして苦痛でない。
彩色された数珠が吊るされているのは拝所だからか。でもその上には
アンパンマンとバイキンマンもある。ギシキリムイも登りたかったな。
渡久地に着いたのは11時。新垣ぜんざい屋に行ったが12時からの
営業で諦める。かといってバスは1時間半待たねばならない。それな
らと本部港へも、歩いて行くことにした。適当過ぎる計画が災いした。
山里からの道と違って、交通量の多い車道歩きは退屈で辛い。家族に
何時の船に乗るのと聞かれ、2時間おきにあるって答えたが、改めて
ネットで確認すると11時の便の次は15時発で、13時の便は無い。
今から本部港に行って15時の伊江島行きの船に乗っても、折り返し
が最終便で滞在時間30分になってしまう。なんという粗忽さ大失敗。
でも、とりあえず昼ごはんを食べたいので、本部港前の食堂に行こう。
本日2番目の目的地。みなと食堂。此処も素敵なお店だったので別項
で紹介したい。食事を終えてもう宿に帰ろうかとも思ったが、半日を
無駄にするのも嫌だし、それなら瀬底島に渡ってみようかと思いつく。
本部港から700mほど北へ戻ると瀬底大橋がある。797mのこの
橋は1985年に開通している。1989年の5月連休に沖縄一周の
サイクリング旅行をした。その時この橋を渡っただろうか覚えてない。
なぜか行っていない水納島の事は、妙に覚えているのだが、そもそも
本部半島は回っただろうか。全部忘れてしまった訳ではないが、部分
的にしか記憶が残っていない。沖合に城山が印象的な伊江島が見える。
瀬底島に渡っても特に見るべきものはない。繁体字の看板が今の島の
様子を表わしている。島の反対側にある瀬底ビーチが唯一の見所らし
いので行ってみよう。大型リゾートが建設中で工事車両が何台も通る。
瀬底ビーチに降り立ち、沖合に水納島を見ると一瞬にして思い出した。
此処で2泊したんだ。雨が続いて水納島に渡るのを諦め停滞している。
ツェルトで旅行していたので、雨を避けて浜の洞窟の中で張っていた。
今はキャンプは禁止されているが当時は鷹揚だった。我々が寝ていた
のは小さな洞窟で、隣の大きな洞窟で村の人が一晩中、三線を弾いて
酒盛りをしていた。上の写真がそこ。家に戻ってアルバムを確かめた。
断片的にしか思い出せない。二日も食事なんかはどうしてたのだろう。
結婚式の前撮りが二組。ウエディングドレス姿で海に入ってまで撮影。
中国人かと思いきや日本人で意外。我々も服を着たままで少し泳いだ。
沖縄の海水は泳いだ後もベタベタしない。洞窟で着替えて帰途に就く。
ビーチから集落の中を通って帰る。防風林の奥に伝統的な家屋が並ぶ。
この道を自転車を押して歩いたな。本部港まで戻りバスで名護に戻る。
家族のスマホ搭載のアプリによると、この日の歩数は46,709歩。