摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

地蔵谷の枝谷から天狗道に抜ける

6月4日に山へ行って以来、約10日間というもの引き籠っていた。

自宅が雨漏りしたり、家族が上腕に痛み(原因不明)を訴えたりと

いう事もあるが、なにより何処に行こうか目的を持てずにいたから。

14日は梅雨の晴れ間という予報。リハビリ目的で何度も歩いてい

るが地蔵谷に行こうか。斜瀑を巻くという条件で家族も行くと云う。

紅葉茶屋の犬は誰か待ってるみたい。でも我々ではなかったようだ。

地蔵谷に入ると一般道を歩いて、第2堰堤上の堆積地から入渓する。

第1堰堤上から入っても良いが、やや平凡な渓相であるし、時期に

よっては水質が悪いことがある。今日はハイライト部分だけ歩こう。

堰堤上の堆積地を過ぎると、明るいナメが現れる。一年に一度位は

歩いても良いかなと思う。三宮から徒歩僅か1時間程の場所ながら、

ナメ歩きが楽しめるのは貴重だ。水質も生田川本流に比べれば良い。

地蔵谷唯一の滝らしい斜瀑。先行する家族は、約束通り中段から左

ガリーへ逃げる。足幅ほどの岩溝にスタンスを求める所があるが、

家族は足が小さく、すっぽ抜けそうで苦手なよう。ハムは直登する。

落ち口から滝壺を見下す。水流の右岸隅にホールド多くて、上部は

傾斜も緩む。水量が多い時はホールドが見えなくて難しい事もある。

斜瀑から上は、明るい色のナメが続き、地蔵谷でもっとも楽しい所。

2米の小滝の上が一般道の徒渉点。ところで何度も歩いているのに、

上の写真右端に、小沢が流れ込んでいるのに初めて気づく。今日は

割合水量が多いので分かったのか。どんな感じの沢か覗いてみよう。

河床の岩盤が露出している。見る限りは少し先まで続いているよう。

予定を変更して、この枝谷を遡行してみよう。先で平凡になるなら

又戻ってきても良い。黒い色は苔によるものか、それほど滑らない。

天狗尾根に突き上げる谷で短いとは思われるが、水量も多少はある。

まあガレに埋まってないのが良い。河床は洗濯板みたいで歩き易い。

1米もない小滝だが直瀑が現れる。どうやって越えようと頭を使う。

小滝を越えると沢はシダ藪に覆われる。だが河床自体は岩盤が露出

している。思ったより続くというのが実感。まだ興味は途絶えない。

シダ藪帯を抜けると、かなり古い石積み堰堤があった。明治時代の

建造ではないかと思われる。過去に見た中でも、ごく素朴な造りだ。

それでも堰堤としての役目は十分に果たしていた。上流から流れ出た

大量のガレを、しっかり受け止めている。伏流して、この先に変化は

期待出来そうにないので、一瞬、地蔵谷に戻ろうかとも思ったのだが。

今度は右岸の岩壁が立って来た。実は岩壁が現れるなら左岸と思って

いたので意外だった。地蔵谷の第2堰堤から一般道徒渉点までの左岸、

つまり天狗尾根側は険しい岩壁が続いている。もう少し進んでみよう。

右岸の岩壁はどんどん高くなる。ただ左岸は岩場がないのでゴルジェ

という感じはしない。もう地蔵谷に戻ろうという気は全く無くなった。

この先どこへ、天狗道の何処に登り着くか、確かめずにはいられない。

沢が前方で左側に屈曲している。両岸の岩壁が屹立して沢幅も狭まる。

先行する家族は、あたかも古代遺跡の石門に入って行くように見える。

少々大袈裟だが、沢歩きの魅力の一つが、先の見えないこういう瞬間。

その石門の中には、何があったかというと。滝ではないが巨岩が詰ま

って出来た壁って言ったらよいだろうか。チェックストーンの集合体。

それが垂直の壁を作っているのが不思議。一気に詰まったのだろうか。

太い倒木を登っていけないかと思ったが、不安定でくるりと回りそう。

家族は二つの巨岩に挟まった岩に、抱きつくようにして登っていった。

どれか1個でも抜ければ、全体がガラガラと崩れ落ちそうな気がする。

続いてハムも同じように登ったが、大雨が降ると岩と岩の間で接着剤

の役割をしている土砂が流れて、不安定になることも十分考えられる。

チェックストンズ(複数形?)を越えると、谷は広がり開放的になる。

右岸は相変わらず岩壁が続くが、段々と低くなりそうだ。左岸は斜面。

もう一つ古い石積み堰堤を越えると、樹幹越しにスカイラインが見え

てくる。ヤマツツジの花が、短い遡行の終了を祝ってくれてるようだ。

天狗道に飛び出した。この水平な部分というと、555ピークの東側。

家族はもっと標高は高いはずと、信じたくないようだったが昨晩スマ

ホに入れた「国土地図」というアプリを見ると、正に555ピーク東。

仕方ないので嫌いな天狗道だが登って行く。平日だというのにハイカ

ーの姿は多い。ほんの少し休んでいる間に、4組も通過されていった。

今日の昼食は天国ベンチ。一日中晴れの予報だったのに、曇っている。

NHKの電波塔では保守なのか、大勢の工事の人がいたりして賑やか。

昼食の間も何組ものハイカーが通過された。ヤマボウシが咲いている。

掬星台ではアジサイの花が色づき始めている。下りのロープウェイは

観光客4名と我々の6名乗車。ハイカーの皆さんは歩いて下るのかな。

ロープウェイ利用のコースを提案し、ハイカーの乗車も取り込みたい。

中間駅の展望台で、なんともカッコイイ色彩のケムンパスを見かける。

ごく短い谷だったが楽しかった。摩耶山には知らない所がまだ々有る。

さて、水道筋商店街で香菜(パクチー)ミニトマトを買って帰ろう。