昨年の8月のこと。寒滝に立ち寄った折に、家族が2米ほど試登して、
「下段なら登れそう。」という感想を残した。上段は登れないにしろ、
中段に流れ込むと思われる、寒谷第一ルンゼの末端を確かめてみたい。
登れそうと言ったぐらいなので、家族にまずリードしてもらう。余り
信用の出来ない7mm径補助ロープと、簡易ハーネスを装着している。
だが水量が昨年よりも多いせいなのか、自信が持てないと下ってきた。
リードを交代してハムが登る。家族が詰まった所から、2歩上がれば
階段状になり傾斜も緩む。だが、小さなスタンスに乗りきれなかった。
情けないが、残置ピトンにシュリンゲを掛けて、A1で登ってしまう。
中段に上がったが適当な支点がない。落ち口近くで不安定な場所だが、
細い灌木でセルフビレイを、二三本纏めてセカンドの家族を確保する。
この選択は余り良くない。ビレイのセット・解除に随分時間が掛った。
さて寒滝の中段は広さ8畳程の平坦地で、驚くほど穏やかな所だった。
見上げる上段の滝は、思ってたより横幅があって実に堂々としている。
河原から見上げると、両岸の樹に遮られ細長く見えてしまうのだろう。
中段の右岸にガレが流れ込んでいる。これが寒谷第1ルンゼと勝手に
呼んでいる枝谷の末端だろう。写真中央の木に10mmザイルが残置
されていた。数米の長さがあり、確保や懸垂下降の支点用と思われる。
中段から右岸ルンゼに入る。傾斜は存外緩い。だが、このままで済む
はずがない。このルンゼは2度辿っているが、右岸巻きルートを使い、
寒滝より高い位置で入っている。そこから下は切れているかに見えた。
ルンゼが左に屈曲すると、理由が分かった。かなりの急傾斜になって
岩盤が露出している。このルンゼにガレが堆積していない所があると
は思いもよらない。壁は立っているがホールドは豊富で登って行ける。
岩盤が露出した部分を抜けると、少しの衝撃で落石が起きそうなガレ
となる。落石を恐れ家族と接近して行動する。此処が右岸巻きルート
の交差する所。右へ進めば寒滝上流に出るが、このままルンゼを進む。
ここまでフェルトシューズを履いていたが、スニーカーに履き替える。
小さな虻が纏わりつく。2016年に認可された、イカリジン15%
配合虫除けスプレーを使う。確かに居なくなるので効いてるのだろう。
この季節は、花には期待していなかったが、コアジサイが咲いていた。
以前よりも傾斜が緩く感じるのは、草や木の葉が繁っているせいか?。
このルンゼは最後まで、急傾斜な上に浮き岩が多く、落石を起こさな
いよう注意する。家族が動いてる間は待機して、落石の発生に備える。
寒谷南尾根の肩とも言える場所に登り着いた。此処まで来れば、後は
藪漕ぎさえすれば山寺尾根に出られる。午後2時なので昼食休憩する。
昼食を終えた後、藪の薄い所を登って行くと、右手に浅い谷状の地形
が現れる。いつもより若干南側を辿っているように思うが気にしない。
古い地図に「岩ヂャレ」と記されている、巨岩が累々と堆積する所の
末端に至った。ツツジの中では花期の遅い、ヤマツツジが咲いている。
岩ヂャレでは、毎回違った所を歩いている様に思える。いったい何個
ぐらいの巨岩があるのだろう。それぞれに表情が違って飽きない場所。
昼食を食べた所から、寒谷南尾根の頭までは、20分も掛っていない。
シロバナウンゼンツツジの藪に遮られて、もっと時間の掛る事が多い。
山寺尾根の一般道まで一投足の距離。右手に掬星台が三角錐に見える。
掬星台直下の丸木階段。この300米が毎回一番辛い。今日もヨレヨ
レになって、東展望台に到着する。外国人観光客が数組いらしただけ。
掬星台ではヤマボウシが咲いていた。まあ、事故もなく計画通り歩け
たので良しとしよう。さあ水道筋で香菜とプチトマトを買って帰ろう。
今日のBGM。星の駅でFMラジオから流れて来たMaroon 5の新曲。