摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

新穂高・三枚岩3ルンゼを登ってみる

4月16日に、三枚岩の2ルンゼと3ルンゼの中間尾根を登ったが、

その尾根から見た3ルンゼが、思っていたよりも、傾斜が緩いよう

なので登ってみようか。詰まっても左右の尾根に逃げられるだろう。

ロープウェイは5名の乗車。今日から連休の間は、夜間運行すると

いうのに、やや寂しいスタートだ。2週間前は薄茶色だった落葉樹

が、もう新緑となっている。季節の移り変りの早さに追いつけない。

天上寺前の駐車場を過ぎた所から、左の水道管理歩道を下って行く。

火曜日から水曜日にかけて、まとまった雨が降った。その為か谷の

水音が大きく聞こえる。三枚岩の各ルンゼも濡れていることだろう。

余談だが、何気なく生田川の対岸を見ると、写真の中央下辺りに露

出した岩場が見える。黄色の破線で囲った箇所が盛り上がっている。

恐らく「ヌクト・ゲートロック」。既に風化して木が繁茂している。

シェール道が生田川を渡る手前で、左岸沿いを上流に進む。小堰堤

を越えると小沢が一つ流れ込むが、これは高圧鉄塔辺りから始まる

小規模なルンゼだ。北側から数えると4ルンゼということになろう。

生田川左岸さらに進むと、また小沢が現れる。三角形の大岩が目印

になる。これが1・2・3ルンゼの流れを集めたもの。今日は僅か

に水流があるが、いつもなら枯れていて沢かどうかも分かり難い所。

すぐに二俣があり、左俣が1・2ルンゼ。今日は初めて右俣に入る。

ルンゼの呼称は便宜上付けたもので、前穂高岳の屏風岩と同じ様に、

向かって左から1・2・3ルンゼと勝手に呼んでいる。1ルンゼは、

609ピーク直下まで達するし、2ルンゼが最も大きな岩場なので、

右(高圧鉄塔側)から数えるよりは、妥当な呼び方だと思っている。

高圧鉄塔近くに付き上げる4ルンゼは、中では小規模な岩場である。

だが一般道から見えるので、そこを三枚岩と思われる方も多いよう。

最初の内こそ僅かな水流があったが、土砂とガレに埋まり伏流して

しまう。傾斜は緩いし藪も薄いので、1・2ルンゼへの取りつきに

比べると、比較的歩き易いと思う。まあ少々拍子抜けした感もある。

というのも水量が多い事を念頭に、フェルトシューズも持って来た。

上部の様子は前回に俯瞰したので、概ね分かっていたが、下流域は

険しいのではないかと考えていた。これならゴム底のまま通せそう。

前方が明るくなってきた。この先は岩場が続くだろう。今日も家に

ある装備は全部持って来た。登ったは良いが詰まって動けなくなる

のが怖い。取りあえず簡易ハーネスやシュリンゲを装着して進もう。

一瞬、雲が切れて陽光が差し込んだ。河床の色が全く違って見える。

この辺りからの上の岩場が、石楠花山から三枚に見える内の一枚かな。

家族が左から回り込もうとするが、下から見ると登れそうだったので

「真直ぐ行け。」と言った物の、いざ自分が取りつくとボロボロの岩。

右岸の水流沿いをフリクションを効かせて登れれば、気持ち良さそう

だが脆い岩質ではそれも難しい。左岸よりの階段状の岩を登って行く。

どれが信用できる岩なのか判らない。剥離して乗っているだけという

岩塊が多い。上から押さえつけるようにして確かめながら登って行く。

やや斜度が上がる。とは言え30度前後かな。普通の人ならフリーで

登れるだろう。年寄りは転ばぬ先の杖ということで、ザイルを出そう。

左岸から登り流れを渡って、上方の太い松の木でビレイ出来るだろう。

7ミリ30メートルの補助ザイルで、ほぼ長さ一杯使って右岸の松へ。

さほど緊張する所も無かった。家族もザイルは「まあ有るに越した事

はない。」という感想だ。家族には続けてツルベで登って行って貰う。

緩傾斜の岩場で、ザイルを使った言い訳をすると、上の写真で、中央

上の岩塊は剥離し只乗っているだけだ。手前に引けばごっそり抜ける。

ザイルを流すことによって、落石を誘発しないかと思ったが、それは

なかった。登って行く途中で緩んだりすると、浮岩に引っ掛かるかも。

三枚岩特有の葉の短い松が、花を咲かせている。下手に払うと煙幕を

張った様に、一面に花粉が飛び散る。固く鋭い涸葉が手に突き刺さる。

ルンゼは藪に消えてしまっった。それを追うのも良いが、2ルンゼと

の中間尾根には岩場が続いている。4月16日と同じ終点になるだろ

うが、少しでもスッキリ高みへ登り着きたいと思うので尾根へ上がる。

家族に難しそうな所を登っているようなポーズをとってくれと云うが、

緩傾斜はバレバレ。おざなりなランニングビレイ。そのシュリンゲは

確か38年前に買った物だ。登山用品店なら5年が寿命と言うだろう。

左手下方に高圧鉄塔が見える。その間に一つ尾根がある。確か一度は

歩いたことがあるはず。何処までを三枚岩と呼ぶのか判然としないが、

地理院地図に記された位置は誤りだ。三枚岩は鉄塔よりも北側にある。

2週間前とほぼ同じ所で尾根道に飛び出す。その時はミツバツツジ

花で薄紫に染まっていたが。現在はもう新緑の若葉だけになっていた。

お約束なので展望岩場に立ち寄って、指呼の間の新穂高の山頂を望む。

火曜から水曜にかけての雨で、ミツバツツジはすっかり落花したよう。

新穂高山頂に座り込んで、オニギリとビールの簡単な昼食を済ませる。

昼食休憩後は徳川道へ向けて東に下って行く。4月16日にはミツバ

ツツジが満開だった箇所。今は代ってシロバナウンゼンツツジが満開。

徳川道の分岐点に下ってきた。以前あった小さな私製道標が無くなり、

もう2年以上経つだろうか。新たに新穂高を示す道標が設けてあった。

午後4時近くになりやっと晴れて来た。ロープウェイ星の駅で歩数は

16900歩。ケーブル山麓駅からJR摩耶駅までで20000歩位。

とにかく今日は、ヨタヨタしつつも三枚岩3ルンゼを登れて良かった。