摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

鴨川水系 八池谷(八淵ノ滝)巻いてばかりの遡行記・・・滋賀県高島市

8月に入ると空気が乾いて来た。この日の滋賀県の天気予報は、

晴れ時々曇りで降水確率10%。自宅を出た時は晴れてたのに

逢坂トンネルを抜けると、空はどんより、比良の稜線はガスの中。

JR近江高島駅からガリバー旅行村へのバスは、土日に2往復。

但し夏休み期間中は毎日ある。経営状態を心配したくなるほど

閑散とした旅行村内を通り過ぎて、八淵ノ滝の登山口に向かう。

登山口の死亡事故多発と髑髏マークが書かれた案内板。

トラロープ柄のラインは、滝巡りの一般道。概ね同じ所を

遡行して行くので、巻き道には事欠かないという事になる。

大摺鉢に直接向かう歩道を進み、しばらくで魚止滝への

分岐がある。これは遡行者向けの案内ではないが、これ

より下流は平凡だし、入渓点にすんなり入れてとても楽。

一般道が渡渉する所で、沢シューズに履き替え入渓する。

今回は、吉岡章著「関西起点沢登りルート100」を参考に

来たが、同書のグレードでは1級の沢となっている。なので

シュリンゲの数本も持てば良いかと思っていたが、前日

になってネットで見ると、フル装備で登っている人の写真

ばかり。慌てて手持ちの装備を、全てザックに入れてきた。

とはいえ簡易ハーネスと補助ザイル。要るか要らないのか

分からないが、遭難した時に軽装だと非難されるのが嫌だ。

水量は少なめだと思うが、ゴーロの大きさに迫力を感じる。

すぐに魚止滝。此処は左側をへつるとあるが、難しそうだ。

右側の巨岩を回り込めば簡単に巻けるので、苦労する事

もない。と思ってしまう時点で、この沢の遡行者として失格。

障子滝の側壁には、ステップや鎖等が取りつけられている。

これも滝巡りの一般道で、ハイカーはゴム底の靴で、ここを

通過する訳で相当ワイルド。下段3m滝の落口に巻き上がる。

障子滝上段7mは水心の左を登るという。取りついてみると、

ホールドはありそうだが、自信が持てない。背後に立派な巻

き道があると、積極的に登る理由もないなんて思ってしまう。

続く3段の空戸滝は、下段の斜滝8mは左岸を登るが、落ち口

のチェックストーンで、振り返ると家族がいない。滑落したかと

思ったら、巻き道から手を振っている。この先も難しそうで下る。

結局、ほとんど滝巡りの一般道を歩いて、大摺鉢に到着した。

少し早いが、家族の作ったソーセージパンで、昼食休憩する。

ハムは此処に来るのは初めて。家族は遠い昔一度来たらしい。

大摺鉢の上のナメは気持ち良く歩ける。裏比良の谷に比べ、

岩の色が明るく、谷の周囲に植林帯も無い。鈴鹿ほどでは

ないが、気持ち良い谷。これで晴れていればと思ってしまう。

小摺鉢が何処にあったかも気づかずに、屏風滝下まで来た。

この滝はガイド本の記事でも、直登は困難として巻いている。

深い釜を見る所までへつって、右岸の巻き道に逃げ上がる。

巻き道から貴船滝が見えてきた。この辺りから見ると高さ

だけでなく幽邃感が漂う立派な滝だ。一般登山道としては、

かなり危険だと思うが、好んで訪れる人が多いのも分かる。

貴船滝の下流で、滝巡りの道は断崖を下り渡渉している。

外れる恐れのあるチェーンだが、頼って下るより仕方ない。

確かに立派な滝だ。今まで来た事がない方がどうかしてた。

断崖には随所に、イワタバコが可憐な花を咲かせている。

渡渉点からは対岸の断崖を、梯子やらステップに頼って、

落ち口まで巻き上がる。平日だが谷の中では、幾組かの

登山者に出合った。休日には混み合いそうな場所である。

貴船滝を越えると、谷は穏やかな様相となるが、この先

にも幾つか滝があるという。滝巡りの歩道は左岸を進む。

岩の上でじっと動かないカエル。昆虫でも狙ってるのかな。

巨大なチェックストーンの10m滝。水心を登って隙間を

滝上に出るというが、到底我々には無理。ガイド本の記事

ではあっさり通過している。右岸の巻き道で越えてしまう。

七編返し滝は緩やか。中段でバンドを伝って水心に近づく。

七編返し滝の上段は水心の左を登る。この日、滝を登った

ような気がしたのは此処だけ。後はひたすら巻いてばかり。

中庄屋直編著「関西周辺の谷」で、比良の沢を歩いた経

験からすると、「関西起点沢登りルート100」の遡行記録

通り歩くなら2級上で、全部巻いたら1級ではなかろうか。

ナメ滝7mは軽快に登るが、この上の斜滝7mは左岸を巻く。

今日は曇り空で気温はさほど上がっていない。そのせいか

泳いでまで滝に取りつこうという気は、最初からなかったし、

へつりに失敗して淵に落ちるのも嫌だった。どうにも弱気。

まぼろしの滝6mは、右側壁のガリーから小さく巻き上がる。

ふと気が付くと蛇がいた。体が平たいので毒蛇かも。踏ま

ないで良かった。何を狙ってか、この蛇もじっと動かない。

巻いてばかりいることで、敗北感たっぷりだけど、水は

澄んで綺麗だし、周囲の林相も比良にしては悪く無い。

上流になって岩質が変わってきた。3段7mのスラブ滝

は、左側壁の残置ロープに頼って登ってしまう。後から

見ると結束が緩んでいた。まあそういう事もあるだろう。

バームクーヘンの様な層を見せる4m滝。水心の左側を

登れるというが我々には無理。残置ロープに頼って登る。

後は平流を歩いて遡行終了点に到着。ガイド本のコース

タイム最大4時間半のところ、6時間も掛かってしまった。

天気が良ければ八雲ヶ原に抜けようと思ったが、今にも

降りだしそうな空では、その気にならず。広谷道を下って

戻ろう。だが、旅行村を経由するバスには間に合わない。

旅行村から3km弱の道を駆け下って、鹿ヶ瀬道に17時

22分通過のバスにギリギリ間に合った。巻いてばかりの

遡行だったが、大過なく帰宅できるのは良かったのかな。



今日のBGM

ハムの知ってるワニさんは、知夫里島に赴任して行きました。