摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

杣谷から岩ケ谷を遡行する

この日は青春18切符を使って、南紀の沢に行く予定だった。

午前4時に起きたが、現地の天気予報が良くないので中止

することにした。沢歩きの用意を持て余し杣谷にやってきた。

杣谷堰堤の底上げ工事で、旧の杣谷道は通れなくなったが、

堰堤上の堆積地には、新道への誘導看板から裏手に進むと

良く踏まれた古い道があり、何の支障もなく下ることが出来る。

対岸への渡渉も増水時でなければ問題ない。最近は東谷

の出合で炊爨をする人が多いが、実は以前に飯盒炊爨の

人気場所だった河原は、工事によって無くなった訳でない。

人が入らなくなったので草木が繁っているが、東谷より

明るいし平坦なので、此方の方が好適地だろう。日よけ

小屋が作ってあったりと、穴場的な場所になりつつある。

堆積地の奥で、沢用の足拵えに替え入渓する。予想通り

水量は少ない。最初はハチノス谷に入ろうかとも思ったが、

こんな日は、泥の中を歩く羽目になるだけと、思い直した。

最初の淵にはメダカが沢山いる。以前にお爺さんが小さな

お孫さんと、釣りをされているのに出合った。どんな仕掛け

を使ってられたのか、バケツに釣れたメダカが一杯だった。

河床の岩盤が露出した平流を進んで行くと、また淵がある。

ここは小学生が左岸から飛び込んで、よく遊んでいた。この

上で現在の杣谷道が交差する。そちらに入り堰堤を越える。

杣谷道から第二堰堤上に下ってきた。右岸を越えることも

できるが、草木が煩いのと、下った所が泥地なので避けた。

この堰堤が下流の水質を悪くしている。上流は澄んでいる。

堆積地の奥に階段状の斜瀑が掛る。ここから摩耶堰堤

の下までの短い区間が、杣谷遡行のハイライトと言える

箇所。水流部分の岩の色が、赤いのはどうしてだろうか。

次の3m程の小滝は、水心にホールドが多い。今日の水

量ならば容易に登れる。左岸のバンドを巻くことも出来る。

そのバンドに新しいトラロープがあるが頼らない方が良い。

続く6m滝は見応えがある。直登は難しいが、左側壁に

ホールド多く登ることが出来る。見た目より傾斜は緩い。

右岸を巻くことも出来るが、スリップには注意したい所。

滝の上の取水施設が、コンクリで補修されていた。とい

うことは現役なんだ。長峰墓地に配水してるのだろうか。

すぐ上を杣谷道が平行する。ハイカーに出会うと恥ずか

しいが、気持ち良いナメなので、僅かな距離も歩きたい。

正副2基の摩耶堰堤に突き当たる。ここは杣谷道を使い

大きく巻いてしまう。その間に、滝が一つあるので惜しい

が、杣谷道から下り難いので、未だ遡行したことがない。

杣谷道が再び河原に近づく所で再入渓。美味しい所だけ

つまみ食いしてるような遡行の仕方で、少々後ろめたい。

大きなチェックストーン滝は、かなり手前から斜上して

巻いてしまう。滝下から同じ右岸に攀じる人もいるよう。

本流には3mのチムニー滝。その手前で東から岩ケ谷が

流れ込む。堰堤工事で爆破された砕石が谷を埋め尽す。

この谷の入口にあった高度感ある小滝は消えてしまった。

入口の滝が無くなったせいか、遡行する気も無くなって、

堰堤工事後は初めて来た。この先、難しい所はないはず。

ダムの堆積地奥に小滝が掛る。今はこの滝が岩ケ谷

のF1ってことか。寂しい気はするが、どうしようもない。

先日コメントで新しいトラロープがあると教えて頂いた。

測量用かと思ったが、工事関係者は7mmのトラロープを

安全確保に使わない。10mmを使うだろう。支点の木は、

2cm程の太さと危ういし、結束が甘くすっぽ抜けそうだ。

そもそもロープを、設置する必要がある場所とも思えず、

その真意を計りかねる。谷を下降する為につけられたか。

この支点の木は少し太いが、根がほとんど浮いている。

ロープを2m程伸ばせば、しっかりした木があるのだが。

杣谷にあったロープも同じ設置者なら、頼らぬ方がよい。

7mmのトラロープは標識用で、実際に落石などで傷が

つくと破断し易い。登山者ならクレモナロープを使って

ほしい。但しザイルは伸びるので、残置には向かない。

岩ヶ谷の滝は階段状で、どれも直登できるが岩は脆い。

残置ロープの上に、岩塊が乗ってたりする。試しにロー

プを引いたりすると、人為的に落石を起こしかねない。

それにしても蒸し暑い。梅雨が明けたというのは本当

かな。アメダスを見ると、高知から紀伊半島沖に雨雲

が連なっている。これが第2の梅雨前線じゃなかろうか。

V字状の谷を詰めて行くと、土壁に突き当たる。過去

崖下まで行って、左右に逃げたが、どちらも悪かった。

今日はかなり手前から、右岸の尾根に逃げてしまおう。

遡行を終了してから、30分のアルバイト。尾根には

楽に乗れたし、藪も薄かったので、今までで一番良い

ルート取りといえるのだが、暑さでもうヘロヘロ状態。

登り着いたのは、ハチノス谷西尾根の道と、一三鉄塔

への巡視路の合流点。長峰山の頂上へ、一投足の所。

久しぶりの長峰山頂。さすがに平日なので人影はない。

ドーナッツ3個を分け合って、遅い昼食休憩。座っている

岩が陽に焼けて熱い。帰りはハチノス谷西尾根を下った。