摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

大月大橋から六甲川を遡行する

6月下旬から本格的な梅雨となり、雨もそこそこ降っているし、

7月に入った途端、急に暑くなった。そろそろ摩耶山系の沢も

楽しめる頃だろう。というより暑くて普通の道は歩きたくない。

以前コメント欄から教えて頂いた、六甲川を遡行してみよう。

表六甲ドライブウエイの旧道に入り、大月大橋の西詰めから

河原に降りて行く。朝の内は晴れていたが、雲が多くなった。

3月に来た時は、車道から河原が見える程だったのに、凄い

草木の繁りようだ。薄気味悪さを感じながらも藪の斜面を下っ

て行く。棘のある植物が繁茂しており、半袖の腕が傷だらけ。

大月大橋の上流に宮坂堰堤があるので、橋から数十m先で

河原に降りる。渡渉する時ズック靴を濡らしてしまう。こんな

ことなら橋の上で、沢用の足拵えに変えておけば良かったな。

しばらくは平流が続く。車道沿いの川なので、斜面はもちろん

川の中にもゴミが多い。河原の石がなぜか安定してないもの

が多い。大丈夫だろうと足を置くと、グラッと揺れて歩きにくい。

ようやく釜が現れた。右岸をへつろうと思っていたら、家族は

嫌だと言い左岸を進んでいった。雨の為か濁りはあるものの

裏六甲の沢に比べれば水質は良い。防水袋にカメラを仕舞う。

その上にも釜を持つ段差が連続する。こんな感じが続けば

嬉しいけど、そうは行かない。川は蛇行しているが、大月大

橋から弁天滝までは、車道を歩けば200mほどに過ぎない。

5m程の小滝が現れた。両岸とも岩が発達して、容易には

巻けそうにない。写真を撮る度に、カメラを防水袋から出し

入れするので遅れ気味。先行する家族も考えている様子。

ルート探しの楽しみは先行の特権と言わんばかりに、ハム

が追いつくと家族は何も言わずに、右岸側壁に取りついた。

問題なく登っていったが、滝の上で何だか考え込んでいる。

上段の滝が登れそうにないのだろうか。降りてくる様子は

ないので続いて登る。スタンス・ホールドとも豊富にあった。

上段は2m弱の小滝だったが、大きな丸い釜を持っていた。

右岸の壁を斜上できないかと考えていたら、「先に行く。」と

半ば泳ぐようにへつって、最後は腕力で登って行ったようだ。

ハムは泳いで取り付くが、水中にスタンスが見つからず

腕力が無くて体を引き上げられない。2度試すが登れず、

家族にシュリンゲを垂らして貰い、アブミ代りにして登る。

ところが何でもない所で、スリップして釜に落ちてしまった。

都合4回も泳いで越えた。更に進むと白布を掛けたような

な立派な滝が現れた。廃パイプが引っ掛ってるのが残念。

ここは階段状の側壁を登る。土砂が載っていて嫌な所だ。

家族は落口近くに回り込んで行くが、下から見ていても

スリップしそうで怖い。ハムは側壁を直上して滝上に出る。

その上には弁天滝が聳え立っていた。此処にも廃パイプ

が残されている。何かの工事の残骸だとは思うが、国立

公園内ということを考えると、どうにかならないのかと思う。

弁天滝を見ていて、「水心左側のリッジなら登れそうかな。」

と呟いたら、家族に「自分の実力を考えろ。」と一蹴される。

先程の事もあり何も言い返せない。踏跡を辿り車道に出る。

土曜なので車の通行が多い。突然、崖下からびしょ濡れ

の人間が出てきて驚かれたろう。車道から弁天滝を望む。

歩行距離は1kmに満たないが、変化があって楽しかった。

一応の目的は果たしたが、まだ14時。もう少し歩こうか。

弁天滝の上は岩の露出する小広い所。堰堤工事の架線

場が設けられていた事もある。車道をすぐ上に見て進む。

相変わらず河床の岩盤は露出するが、穏やかな渓相が

続く。車道から見て、藪が五月蠅いのではと思ってたが、

杞憂だった。それに今の所、蜘蛛の巣もそれほど無い。

しばらくで堰堤に突き当たる。此処は左岸を巻き上がる。

堰堤上の平流で見上げれば、ドライブウエイのループ橋。

さして変化も期待できないので、遡行を止めようかとも

思うが、此処で右手に上るとドライブウェイの有料部分

に出てしまう。それはマズイので、先に進むことにした。

左岸に大きな支流が流れ込んでくる。暗渠の上は道路だ。

進めば、真水谷か前ヶ辻谷に至ると思われ、一瞬、遡行し

ても面白いかなと思うが、幾多の堰堤群に阻まれるはず。

そのまま上流に進むと、3面護岸された上に、頭上には

ドライブウェイに蓋をされてるという閉塞的な場所に来た。

進めるのかなと不安になるが、鋼製の流木止めの先には

再び自然な渓相が見えている。だがそれも長くは続かない。

とても大きな堰堤に突き当たる。これが六甲堰堤であろう。

上の車道は何度となく歩いているのに、石積の雰囲気が

残されているのは気づかなかった。不思議に静かな所だ。

右岸斜面から車道に出る。下生えのない林で楽に登れた。

ところが上流側はこのとおり。足元も判然としないほどに

草木が密生している。天端から上流に向かって、結構な

距離を斜降して行く。探せば踏跡が有るのかもしれない。

堆積地の中に滑がある。周囲の雰囲気から美しいとは

とても言えないが、昔日の様子はどんなであったろうか。

右岸に古い車道の残骸が残る。質素ながらも凝った意匠

から、昭和3年に開通したドライブウェイで、昭和13年の

水害で廃道となった旧々道ではと。これは勝手な想像だ。

めっきり水が澄んでいる。とすれば六甲堰堤が水質を悪化

させているか、真水谷方面からの水質が悪いかどちらかだ。

山上施設の多い事を考えれば、後者という事になるだろう。

さして変化もないが、紅葉の季節に来れば綺麗かもと思う。

5m程の斜瀑が現れる。水量によっては階段状で登れそう。

写真で見ると側壁を登れるかも。ところが、なぜか二人共、

ルートを探す気が無かった。戦意喪失なのか疲れてたかも。

右岸の斜面を僅かに登れば、先の旧々道から山田堰堤。

道なりに歩けば、再び表六甲ドライブウェイの旧道に出る。

時刻は15時30分。此処で遡行を終了し、車道を歩いて

帰るのでは何だかつまらないな。長峰山に登って帰ろう。


今日のBGM