摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

杣谷から支流を遡行し、天狗塚に直上する(ナバ谷編)

5月22日の日曜日、4月に散々迷った杣谷の支流を詰めて、

長峰山頂上に登るのが目標。でも、せっかく沢用シューズを

履いてきたのだからと、杣谷本流で遊びながら、歩いてきた。

摩耶第三堰堤を越え、木ノ袋谷出合の手前に、左岸から支流

が入る。無名谷だが、中央図書館でコピーした古い地図には、

入口付近にナバ滝と記されている。仮にナバ谷と呼んでおこう。

六甲線一三鉄塔と、一四鉄塔のある尾根の間の谷と言う方が

解りやすいかもしれないが、長くて面倒なので、ナバ谷が良い。

入るとすぐに二段の小滝がある。中段で右に渡って直上する。

続く上段も快適に登れる。総じて岩は固くフリクションも効く。

だが名前が付けられるほどの滝かというと、そうは思えない。

ナバとは、九州地方の言葉で、キノコ(茸)を意味するという。

二つ目の小滝は、流心左の苔の生えた側壁にルートを求める。

この滝には、ダム建設当時のトラロープが垂れて下がっている

が、結束が解けたものが、岩に引っかかっているのに過ぎない。

三つ目の小滝も流心左を快適に登る。こんなに明るい小滝群

が続くなら楽しくて仕方ないのだが、それは此処までで終わる。

四つ目の小滝は小さいがハングしている。あっさりと右岸を巻く。

すぐ上には1番目の堰堤が立ち塞っている。ところでパソコンで、

ナバタニと入力し変換すると茸谷となる。存外一般的な名かも?。

下流から1番目の治山ダム。4月17日には南側の尾根から、この

堰堤上に下り、長峰山頂に向かうつもりが一三鉄塔に出てしまった。

堰堤上の堆積地に、黄色く鮮やかな花が咲いていた。近づこうとすると、

棘のある枝に阻まれる。帰って調べてみると、ジャケツイバラ(蛇結茨)

というマメ科の木。周囲の枯れた木も鋭い棘が残っていて数か所負傷。

1番目の堰堤上で、本流は90度に屈曲して北に向かう。50mも

行くと、また90度に屈曲して東に向かう。ゴーロの転がる平凡な

沢だが地形は面白い。堰堤の無い昔はキレイなナメだったかも。

2番目の堰堤を越える。この谷は総じて右岸が緩傾斜。滝も堰堤も

右岸から乗越す。この堰堤は4月10日に北側の尾根から下った所。

その時には、1番目と2番目の堰堤の区別が全くできていなかった。

1番目の堰堤と同じく、2番目の堰堤上にも二俣がある。北に曲がる

本流には小滝がかかっている。階段状の側壁を登ることも出来るが、

敢て流心を登ってみる。フリクションが効く。滝の上は平凡なゴーロ。

再び東へ屈曲すると、この谷のハイライト。50mのナメが現れる。

岩床が幅広いので、頭上の樹林は抜け、明るい日差しが降り注ぐ。

水量の多い時に来れば、もっと楽しかろうと思うが、欲張り過ぎ。

気づけば目前に3番目の堰堤が聳え立ち、現実に引き戻される。

3番目の堰堤下で昼食を摂った後、やはり右岸から乗り越す。

棘のある木が多くて、結構苦労する。皮手袋をした方が良い。

3番目の堰堤の上にも二俣がある。左俣を行けば、長峰山北側の

最低鞍部に達する。ここで右俣を登れば、長峰山頂上の天狗塚に

達するはず。今日はそれを確かめに、此処までやってきたと言える。

出だしこそ伏流しているが、僅かな水流が現れる。左右どちらが

本流なのかは悩む所。この右俣は、より標高の高い所まで至るし、

水量や谷の深さは、左俣に軍配が上がる。まあどちらでも良いが。

出合から100mほどで、最後の堰堤がある。4月2日に六甲線

一三鉄塔から斜上して、辿り着いたダムだ。つまり、今日初めて

歩くのは、三番目の堰堤上の出合から、此処まで100m足らず。

常にはないだろうが、今日は堰堤上でも水流を見る。滑の上に

不安定に砕石が乗っており、不用意に足を置くと崩れてしまう。

登って行くとツバキの純林に入る。急斜面で辛い登りが続く。

水が切れてから稜線に出るまでの長さが、左俣の2倍はある。

ツバキの純林が終わると、斜度は少し落ちて、笹藪が現れる。

上方から子供の声が聞こえて来て、天狗塚が近いことを知る。

笹藪の中では小さな発見をして、頭上の子供達以上に騒ぎ

乍ら登っていた。子供達も、何事だろうと思ったに違いない。

唐突に笹藪を抜け、南北に細長い岩壁に行く手を遮られる。

岩壁の切れ目から、潅木を手掛かりに、強引に登って行くと、

神戸市の滑落注意の看板。天狗塚の上の子供の顔も見えた。

ナバ谷(茸谷)から長峰山頂に、至るという目標は達したが、

2度目だし感慨はない。ボーイスカウトの子供達が休憩する

天狗塚には寄らず、このまま杣谷峠経由で掬星台まで歩こう。