摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

美瑛岳(2052m)・・・・・・2015年9月22日

9月22日。晴天を期待してテントの外に出るが、キャンプ場は

白いガスに包まれていた。昨夜、あれだけ雨が降ったのだから

仕方なかろうと、この時はまだ、晴れの天気予報を信じていた。

午前5時15分。キャンプ場の裏手から、十勝岳への道に入る。

針葉樹の中、昨夜の雨でぬかるんだ道。十勝岳だけに登るなら、

美瑛駅から、白金温泉経由の方が直接的だが、富良野岳を登る

ことや、宿泊場所の標高を考えると、吹上キャンプ場の方が良い。

ただ、白金温泉からの登山道と合流するまでは、1時間以上の

トラバースをしなくてはならない。ハイマツとシラタマの生える道。

十勝岳から流れる沢を渡る。水を飲んでみるが、酸っぱくて

飲めたものではない。昨夜の大雨にもかかわらず容易に渡渉。

たまゆらに けむりおさめてしずかなる 山にかへれば 美るに

したしも」 登山道に立つ、九条武子の碑。ここまで1時間は掛ると

思っていたが、30分程で到着した。これで、かなり気が楽になる。

黄色い硫黄を吹きだしている岩塔を横目に、水平道を進んで行く。

午前6時前には、十勝岳の裾野まで来れた。此の先で望岳台からの

道と合流する。体力は消耗してないが、前方のガスが濃いのが心配。

合流点からは、キャタピラー車が通るような荒れた道を登っていく。

左手に平行して道があるようだ。20名ほどの団体の影が見える。

午前6時20分、その道とも合流し美瑛岳分岐に到着。先の団体も

含め、ほとんどの人が此処から十勝岳へ向うが、我々は美瑛岳へ。

少し進むと滑らな小沢を渡る。ここでも水を飲んでみるが、苦い。

小沢を渡った先は、火山灰の土壌となる。植物が生えてないので、

登山道とそれ他の場所の区別がつき難い。足跡を追っていると・・。

道を失ってしまった。すぐ戻ればよかったものを、上方向に道が

あるはずと探し回る。後ろから単独の男性も、我々の足跡に誘

われこの斜面に入って来た。一緒に道を探すが、上方には無い。

元に戻れば横方向に、しっかりした道があった。30分のロス。

単独の男性もついて来られるのを、確認したうえで、先に進む。

富良野岳の稜線にも多かったが、此処では標高1000米辺り

から、シラタマの木が多い。白く丸い実は正に名前の通りの姿。

いつもながら地図は持っていない。古いガイド本のコピーだけ。

一般道を歩くのだから、道標だけで分かるだろう。そのガイド本

さえ、碌に読んでいない。だから、道に迷ったりするんだろうな。

延々と斜上して行く登山道。上に登っていると、気にならないが、

トラバースだと、何処にいるか考えてしまうが、思い浮かばない。

スコットランドには行ったことも無いが、こんな風景なのだろうか。

ガスが流れ時折、青空が見えるようになる。このまま晴れてくれ。

前方の斜面が晴れて来た。目指す美瑛岳の裾だろうか。確かめる

地図も無いので登山道に従って、ただ先に進むしかない。なにしろ、

摩耶山とはスケールが違うので、コースの距離感も全く分から無い。

前方に、深くえぐれた沢が見えてきた。白銀荘のひとが言っていた、

北向沢であろう。固定ロープに頼り、井戸の底のような場所に下る。

対岸へは10mの鉄ハシゴを登る。火山灰の斜面に設置されて

いるので何だか頼りなく思える。残雪の量は、思ったより少ない。

北向沢を渡って、一息ついた所で、歩いて来た道を振りかえる。

道は少しづつ下り坂になる。この一瞬後、右奥に険しい尖峰が

見えたが写真を撮り損ねた。それが美瑛岳の山頂だったろうか。

この時は、まだ幾らでも写真を撮るチャンスは、あると思ってた。

午前7時55分。ポンピ沢に下り着く。この水は飲んでも大丈夫。

昨夜に炊いた白米にフリカケをかけて食べる。簡単な割に満腹。

少し休んでいる間に、ここでは上り下りの、登山者3組と出会う。

ポンピ沢からはキツイ登りが待っていた。グイグイ高度が上がる。

その分展望が良い。此処まで歩いた、トラバース路が見えている。

左手に目を移すとピークが見える。何という山か知る由もない。

この登りの途中、先程一緒に、道に迷った男性に追抜かれる。

一眼カメラで写真を撮りながらなので、我々とスピードが合う。

美瑛富士と美瑛岳への登山道の分岐。ちなみに美瑛富士には、

1994年に白金温泉から山スキーで登っている。写真と記録は

あるのだが、記憶は完全に失っている。二人してボケてきたかも。

美瑛岳北尾根の道に入る。再びガスってきた。湿気の多いガスで

容易に晴れそうもない。昨日の天気予報では晴れのはずなのに・・。

大岩の重なる北尾根を登って行く。風がとても強く、寒くなる。

岩陰で雨具を着こむ。右側は火口壁のようで、断崖絶壁である。

美瑛富士分岐から、美瑛岳までのコースタイムは、1時間30分。

我々は、更に時間が掛るだろうから、2時間は要ると思っていた。

ちょうど、摩耶山黒岩尾根の取付きから、掬星台までと同じくらい。

そう思いながら歩けば、少々の我慢はできる。一瞬青空が見えた。

午前9時45分。美瑛岳の頂上に到着。美瑛富士分岐から1時間。

コースタイムより30分早い。これなら十勝岳まで縦走できるだろう。

強風の中、他の人は湯を沸かしたりしてるが、我々は余裕がない。

もう少し待てば、ガスが晴れるかもとは思いながらも、10分間も

居られなかった。此の先も長い。夕方のバスに、間に合うように

下山しなければならない。緩やかな岩稜を縦走路に向って下る。