摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

朱雀山(420m)徳龍山(425m)・・・・・全羅南道・康津郡・・・2015年1月1日

2015年の元旦も、まだ暗い内に宿を出る。外は昨夜来の雪で真っ白。

バスターミナルに行くと、市外バスは走っておらず、切符も売らないよう。

だが市内バスは運行していた。7時20分のバスに乗る。客は我々のみ。

20分程で、薪田(シンジョン)に到着。明るくなっても、雪は降り止まない。

バス停は村の外にあり、村に入っても登山口への道が分かり難くかった。

寒い中、散々探し回ると農協前から、山に向かう道があった。看板もある。

時に横殴りの強風も吹き、余程止めようかとも思うが、せっかく来たから、

行ける所まで行ってみよう。ただ心配は、アイゼンが1セットしかないこと。

つまり二人では、片足しか装着できない。岩場や氷が続けば、困るだろう。

畑の前に道標があったが、積雪で分からず迷う。農家の敷地に入ったり

したが、結局、元の道標に戻る。畑の中を横切って登山道は続いていた。

メインの登山路は、朱雀山休養林からのようで、いたって寂しい登山口。

森の中に入ると、風は弱くなった。釜山で買ったアイゼンとストックが、

ようやく役に立つ。雑木林の中を、黙々と登って行く。寒くなって来た。

バス停から1時間半程で、主稜線の一角に辿り着く。大きな施設がある。

パラグライダーの離陸場所だった。雪と風を避け、この下で小休止する。

康津のスーパーで買った、揚げた惣菜パンとカステラ。意外に美味しい。

パラグライダー場から、少し進むと展望台があった。この間には足跡も

残っている。早朝に朱雀山休養林方面から、登って来た人がいるようだ。

展望台から徳龍山を望む。写真は望遠で撮っているが、実際はかなり遠い。

「朱雀山自然休養林」のホームページの表紙は、険しい岩山が写っている。

その岩山を朱雀山と思いこんでいたが、どうやら、徳龍山の写真だったよう。

展望台の西側には林道の終点があった。休養林から登ってくるものだろう。

ところで、韓国各地にある「自然休養林」とは、摩耶山の自然の家の国立版。

コテージやキャンプ場等の施設がある保養施設。通行にも入場料が必要だ。

今日は何処まで歩けるだろうか。ぐるりと回り込んで、徳龍山を縦走して、

石問から道岩へ下るのが予定だが、此処から見ると、随分遠い道のりだ。

この時は地図上のコースタイムが、異様に長いことを気にしていなかった。

韓国の地図や道標には、誤ったコースタイムが記されていることもある。

時折、青い空が見えるようになった。雲の流れが早い。また曇ったりする。

朱雀山頂上に到着。展望も無く地味な頂上。こんなことなら徳龍山だけを

目標に来ればよかったと思う。自然休養林の名称になっていぐらいだから、

登る価値があると、思い込んだ浅はかさ。その為、長い距離を歩くはめに。

山頂から西側へ下って行くと、南へ続く岩稜が見えてきた。その向こうに

聳えるのは、道立公園に指定されている頭輪山。2011年5月に登った。

徳龍山から頭輪山。そして昨日登った達磨山まで南北に岩稜を連ね、

一直線に続いている。韓国でも特異な風景に違いなく、敢て朱雀山に

登る理由があるとすれば、この岩稜の展望だろうか。まあ、そう思おう。

一旦、林道に下る。登山道は稜線沿いについているが、林道でも

同じ場所に行き着けそうなので、此処はショートカットしてしまおう。

鞍部に到着した。更に林道を進み、次の鞍部まで行こうと思ったが、

これは甘い考えだった。無駄に1kmほど歩き、また引き返してきた。

鞍部から急斜面を登り、草原の稜線に出る。気温が上がったので、

チェーンアイゼンに、雪が団子状にくっ付く。剥がしても数歩で団子

になる。この繰返しが最後まで続いて、疲労を重ねることになった。

振り返ると朱雀山の全容が見える。その間の谷間に休養林の施設。

此処までも長い道のり。標高400mの山なら、もう十分な歩行距離。

一際高いピークに着くと、再び黒い雲が空を覆い、雪が降って来た。

ところで、此処にある道標には、徳龍峰頂上475mと書いてあった。

確かに標高は高いが、此の草山が徳龍山の山頂であるはずがない。

それどころか「朱雀山475m」という立派な山名碑もあったりして、

ますます混乱する。休養林の宿泊客へのサービスかと思ったり・・。

しばらく薄暗い吹雪の中を歩いて、このまま続くなら下ろうかと、

思った頃、また青空が見えてきた。前に見えるのが425高地か。

425高地に上がると、徳龍山の岩峰群が見えてきた。西峰かな。

手元の地図ではどちらが高いのか、道が有るのかも分からない。

此の先の鞍部に下山路がある。先に進むかどうか考えどころだ。

天気が悪ければ、迷うことなく下ったろうが、また日も差してきた。

時刻は午後1時。まだ時間はあるので、ここも行ける所まで行こう。

東側に見えるのは莞島(ワンド)。その間の水道は浅く薄いブルー。

最初の岩峰の手前まで来た。道標には、徳龍山(西峰)まで1.2km

と記されている。なので此の岩峰は西峰ではないと思ったのだが・・・。

見上げるとロープや足場はついてるが、とても安全に登れそうにない。

やや細い道が西側についている。岩峰の裾を巻く様に進んで行く。

天候はまた悪くなって、雪も吹きつける。何処かで岩峰に登る道を

見失っていたのかもしれない。思い返すと、どうもそんな気がする。

前方に第2の岩峰が見えてきた。これが主峰である西峰と思うが、

此方側からは、とても登れそうにない。北側に回り込めば道がある

かもしれない。第1と第2との岩峰間は距離があるって時間が掛る。

西峰と思われる岩峰を回り込むと、岩の基部に金属製のステップが

設けられていた。これが西峰への登り口かは、道標が無いので不明。

とにかく登ってみようかと取り付くが、数メートルも登った所で詰まる。

雪が積もってホールドが分からない。すぐにあきらめて下ってしまう。

更に北へ続く縦走路を覗くと、かなり険しい岩稜が続いている。4km

ほどの距離にコースタイムは3時間余り。その理由が此処で分かった。

時刻は2時半。北に進めばコースタイム通りでも、暗くなってしまう。

我々の技術・体力では無理。西峰の南側の鞍部に戻って下山しよう。

400mほど南に戻った所に、水良村(スヤンマウル)に下る道が

あった。この道は、手元の地図には記されていないが、助かった。

でなければ1時間程歩き、最初の岩峰の南まで戻らねばならない。

最初の内こそ順調に下っていたが、谷底に下ると岩が積み重なる

道となる。積雪のせいで、何処に足を置いてよいのか、分かり難い。

おまけに片足アイゼン。慎重に下るが、薄暗くなるしで心細かった。

それでも標高は低い、1時間足らずで人家のある所まで下って来た。

風がまた強くなり、すごく寒いがホッとしている。東の街道筋に出る。

バス停はあるが時刻表はない。2km先の土岩(トアム)まで歩こう。

徳龍山を望む。一体どこが頂上なのか、何処まで歩いたのか、岩峰が

幾つもあり分からない。朱雀山は登ったが、徳龍山に登ったと言えない。

土岩に着くと、すぐ康津行きのバスが来る。まだ、運は残っていたのか。