摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

六甲川弁天滝から 長峰山を横断し掬星台に登る

12月最初の土曜日は、冬型の気圧配置。北西の風が寒気を流し込む。

FMラジオのDJも、寒い寒いと連呼しているが、快晴で陽射しは暖かい。

六甲登山口交差点から、大月大橋東詰まで歩いて来た。今日のルートは、

前方に見えるスカイライン。中腹までは落葉樹。その上は照葉樹の暗い森。

弁天滝の上で対岸に渡る。右岸には古い道跡や平地があり、かつては

何か建物もあったようだ。以前には西へ進み、道跡が途切れる辺りから、

強引に尾根に登った。だがコメント欄に古い道跡が有ると情報を頂いた。

右岸に渡り30mも進む。どうも此処の山側が、登り口のように思える。

一見、藪にしか見えないが、鋸で切られた灌木がある。登ってみよう。

ちなみに、此処のの南側は、六甲川河床まで断崖。踏み外さないよう。

今は歩く人もない道跡だが、登るにつれ明確になってくる。往時には、

荷車も通ったのではなかろうか。一部では路肩に石積みが残っている。

登り着いた所は、今は木が生えているが、石積みで人工的に作られた平地。

水場から遠く炭焼きの窯跡もない。何の為の小屋だったのか想像もつかない。

此の平地の隅に大きな岩があり、新六甲大橋が望める。車両の通行音が

大きく響き、落ち着かない所。六甲川を俯瞰でき、監視場所には好適地か。

平地からは上にも踏跡がある。登って行くと岩場が現れ展望が開ける。

前回登り着いたのも、この辺りだったかな。道があるのに無駄な労力を

使ったものだ。その時も踏跡が見て、別の登り口があるのではと思った。

今秋の台風11号による、アイスロード上部の土砂崩れが見えている。

現在は、復旧の見込みも無い。崩落を繰返しており、廃道になるかも。

更に登れば照葉樹の森。猪の獣道が縦横にあるので、それを拾って

九十九に登って行く。登りならば、高みに向かうだけで迷うことはない。

30分程のアルバイトで、緩やかで広い尾根に辿り着いた。これは

大月台へ下る尾根である。一般道へは、あと少し登らねばならない。

伐採地の下辺。大きな椎の木が3本ある所で、一般道に合流する。

この辺りでは、北風も弱く、強い日差しのせいで、暖かくさえ感じる。

伐採地から望む。ポーアイ沖の海が、不思議な色合いを呈している。

鈍色(にびいろ)と呼んでもよいだろうか。冬の始まりを告げるようだ。

さすがに主稜線に出ると寒さが厳しい。道には霜柱も立っている。

長峰山頂から、この後のコースを望む。杣谷へ下り登り返すつもり。

山頂下で、ハチノス谷西尾根の巡視路との分岐を、右側に下って行く。

これも巡視路だが、急峻で道も悪く歩き難い。六甲線一三鉄塔に到着。

鉄塔からは、知る限り3本のルートがある。今日は中央の踏跡を下ろう。

一三鉄塔の西側下にある大岩が目印だが、下る場合は踏跡を失い易い。

尾根通しに下って行くと、時折、ハッキリした踏跡も現れたりするが、

藪で分から無くなることも多い。まあ、細尾根なので迷うことはない。

少し抜けた所から、目指す寒谷南尾根。掬星台も三角形に見えている。

中腹辺りから古い電線が残っている。これに沿って下れば、目標通り。

下り着いたのは、杣谷道が摩耶第3堰堤を越した所。右の廃道を下る。

この道は、第3堰堤ができる以前の杣谷道。適当な所で河原に降りる。

摩耶第3堰堤上の堆積地。何時になく、水量の多い寒谷滝を右に見て、

上の写真の左端辺りから、斜面に取り付いて、立木を頼りに登って行く。

10mも登れば両側を、岩場に挟まれた凹地。上部で詰まりそうだが、

右手の岩尾根を、容易に越えられる箇所がある。これが絶妙なルート。

岩尾根を乗り越すと、岩屑の詰まったルンゼに出る。これより下方は、

滝というか急峻な岩場になっていて、容易に登降することは出来ない。

土砂の上に大小様々な浮石が乗っている。落とさぬように慎重に登る。

此処は、ちょうど風裏になるのか、風は吹き込まず余り寒さも感じない。

斜度は30度位。ほぼ同じ角度で稜線に突上げる。滑落する程では

ないしにろ、大きな落石が起きた場合に、安定した逃げ場所がない。

稜線が近くなっても気は抜けない。木の根を掴むと、それで落石を

起こしかねない。適度な緊張感を楽しみながら、ゆっくり登って行く。

稜線が見えてきた。もう少し下方で左の尾根に逃げることも出来るが、

どうせなら最後まで詰めたい。何とか一つの落石も起こさずに登れた。

尾根上は、割としっかりした岩が多くなる。落石の心配は無くなるが、

ツツジの藪が濃くて、コース取りを誤ると、体力を消耗することになる。

この上には巨岩群があるのだが、途中で藪を漕ぐのが嫌になってしまう。

ふと南側を見ると、谷の源頭を挟んで岩尾根があるので、そちらに移ろう。

岩尾根かと思いきや、これも大岩の積み重なりだった。胎内くぐりの様に

隙間を抜けて岩の上に出る。登って行けば、巨岩群に出会うと思いきや。

南側から回り込むような感じで、巨岩群の上に出てしまった。少し残念。

岩ケ谷の摩耶第5堰堤工事の、大きな作業音が、すぐ近くに聞こえる。

上端の岩場に座り込んで一休みしよう。バーボンのお湯割りをいただく。

葉を落とした樹幹越しに、長峰山から木の袋尾根にかけての眺めが良い。

緩やかな尾根筋を辿れば、山寺尾根に出る。仰ぎ見る掬星台は三角錐

ところで、この強い季節風の下で、ロープウェイは動いているんだろうか。

立ち止まって耳を澄ますと、発車のホーンが聞こえた。なら大丈夫だろう。

サラサラと葉をこする音がする。雪ではなくて、細かいアラレが降って来た。

六甲川から長峰山を横断して掬星台へ。変化があり楽しいコースだったが、

山寺尾根最後の300mは、今日のコースの何処より、辛く退屈な道だった。


(この山行は、コメント欄に頂いた「長峰大好き」さんの情報を元に歩きました。)