摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

日柳川を遡行し、天狗梁(テングハリ)を登る。

11月23日の日曜日も朝から快晴。気温も20度近くに上がるらしい。

こんな日の為に、温存していた計画を実行しよう。護国神社に向かう。

護国神社では、恒例の蚤の市が開かれていた。さして来客が多いとも

思えないが長く続いている。業者さんの出品で買いたい物は何もない。

境内東側通用口から抜け、海星病院裏側の川沿いの道を歩いて行く。

目的は日柳川の伯母野山第二堰堤。スリット式で中央を通過できる。

今日はズック靴を履いている。濡れないように、石の上を歩いて行く。

堰堤を抜けると、台風のせいか、新しい砕石が沢山積み上がっていた。

沢用の足拵えを用意してこなかったので、その代わりにメットをかぶる。

F1、堰堤から沢に入ってすぐに現れる小滝。左岸のガレを小さく巻く。

F2、右岸を登れそうだったが、取りついてみると恐ろしく滑りやすい。

F3、ヌメッとした4m程の滝。取り付く島もない、左岸を巻き上がる。

F4、三つの小滝が連続する。これを滝の一つと数えるかは、微妙かな。

F5、10mほど手前から、左岸のバンドに沿って歩いて越えられる。

F6、階段状の滝で、見た目よりも簡単。中段に桜の木が手掛かりになる。

F7、複雑に入り組んだ小滝。古いトラロープがあるが、支点は細い灌木。

このF7の落口に見覚えがある。今年の4月5日にハチノス谷東尾根から

下り着いた所だ。落口から見上げると、天狗梁頂部が樹幹越しに見えた。

F7の上流で、右岸からガレ沢が合流する。この二俣の中間尾根が目的の、

天狗梁南稜の末端ではないかと思うが、自信が持てず、もう一つ滝を登る。

F8、ホールド多く中央を容易に登る。右手に残置ロープあるが頼らない。

この滝の上に最後の滝があり、その上は長い平流となる。記憶を手繰る。

どうやら、これ以上遡行を続けると、天狗梁東面に出てしまうと思われる。

F8の落口から、右岸の斜面に取り付く。急斜面を立木を頼りに登って行く。

岩場に生えている割に、立木はしっかりしている。朽ちた木もあるが少ない。

岩自体も堅く、ホールドが剥がれることもない。腕力は使うが何とか行ける。

大きな岩場があらわれ、天狗梁基部かと思いきや、上部とは連続していない。

見上げれば、まだ登って行けそう。藪っぽく写っているが、それほどでもない。

砂礫の斜面から岩尾根に登ると、見覚えある天狗梁頂部が、間近に見えた。

計画では天狗梁の基部を、立木頼りに巻き上るつもりだった。登り過ぎかも。

今日の装備はシュリンゲ3本。もちろん直上はできない。詰まるかと思いきや、

西側へ幅広なバンドが続いていた。さらに西側へ回り込むことも出来そうだが、

右手の2m弱の岩場さえ越せば、ほんの少しの登りで、頂部へ辿り着けそうだ。

バンドから眺めは良いが、景色を楽しむ余裕はない。問題の2m弱の岩場

には、手掛かりとなりそうな松の木がある。シュリンゲを投げ引いてみると、

朽ちているようでグラグラする。はたしてハムの体重に耐えられるだろうか。

左にあるのが良い位置にある松の木。だがシュリンゲを巻いただけで外皮が

剥がれ落ちる。既に朽ちており信用するに値しない。右の灌木は位置が低い。

ところが家族は、「私の体重なら大丈夫かも?」と、松を手掛りにあっさり登る。

ハムは家族に、「情けない!」と言われながら、シュリンゲを垂らしてもらい、

ゴボウで登って行った。その昔に錫杖岳で、最後のピッチをどちらが登るか、

ザイルパートナーと争ったことを思いだす。だが、今日は家族に完敗だった。

無論、天狗梁を直登したとは言えないが、天狗梁の弱点を突いて登ったとは

言えるだろう。往時、六甲学院山岳部の生徒達が、この岩場に親しんだ頃を、

思い起こすことができた。久しぶりに味わう、心地よい緊張感に包まれている。


今日のBGM・・・Wake Me Up