摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

木の袋谷出合から杣谷を遡行して六甲線一四鉄塔へ

8月31日の日曜日は、掬星台からアゴニー経由で、木の袋尾根を下って来た。

木の袋谷出合から杣谷本谷を遡行し、摩耶第4堰堤下に流れ込む小さな沢を

登ってみようかと思う。出合の河原でスニーカーから、沢用の足拵えに変える。

台風11号のせいか、いつも流れのある出合は、土砂に覆われて伏流している。

食事中のハイカーの前を失礼して、杣谷本流へ進んで行く。すぐに水流が現れる。

最初に小さな鋼製の堰堤がある。この時はまだ、平凡な河原が続くと思っていた。


ところが谷が左側に屈曲する所に、小さいとはいえ滝があった。嬉しい驚きだ。

傾斜は緩いし、適度にホールドやスタンスがあるので、水心を直登して行ける。

この小滝の真ん中に、5cm程の節足動物がいた。ヤスデとは違う。初めて見る。

(調べて見ると「オオゲジ(大蚰蜒)」という虫らしい。人間には害は少ないようで、

ゴキブリなどの天敵なので、益虫の範疇に入るらしい。歩肢の数は15対ある。)

下段の小滝を登りきると、落口にチェックストーンがある、上段の滝が現れる。

難しそうだったが、チェックストーンが良いホールドになって、水心を通過する。

実際には、もっと明るくキレイな小滝だが、写真が下手で暗く写ってしまった。

チェックストン滝を越えると、明るい色の岩肌のナメ滝が現れる。素晴らしい。

他所と比較することができない独特の明るさ。石灰岩でもなく花崗岩でもない。

赤い苔と乳白色の岩肌。もしかすると台風11号が押し流した土砂で、苔が

洗い流され、岩肌が露出したのかも・・。摩耶山の他所では見たことが無い。

ナメ滝を越えると、杣谷の一般道が交差する。かまわず遡行を続けるが、

岩が積み重なるだけで興趣はない。杣谷道を歩く度に此処を通っている。

なので、勝手にこの間の杣谷は、ゴーロの平凡な谷だと思い込んでいた。

数十メートルも登らないうちに、また杣谷道が交差する。杣谷道には

何時になく人が多く、変な所から現れた我々を、訝しく見られていた。

杣谷は、この渡渉点の上で摩耶第4堰堤に突き当たる。そこで右手から

流れ込む支沢に入る。入口付近はガレが積み重なるが、20米も上れば

水流が伝う一枚岩のナメが現れる。此処が今日の本来の目的地だった。

6月2日に摩耶第4堰堤上から、長峰山の主稜線に突き上げる支沢を

探していた時に、誤って入渓した沢だ。その時には、どうも違うと思って

引き返した訳だが、一枚岩のナメは印象的で、次の目標と考えていた。

ナメを登りきると、同じ様な岩質のノッペリとした、10米程の滝に行手を

遮られる。水流は岩肌を濡らす程しかない。直登は難しいかと思ったが、

滝身の左側から斜上するバンドを登って、最終的に落口中央に登り着く。

岩は順層で、ホールド・スタンスとも豊富。但し浮き岩も多いので注意。

滝の途中に鮮やかなピンク色の花を見かける。名も知らぬがキレイだ。

10米滝の上にも小滝があるが、その上で伏流してしまうので遡行終了。

スニーカーに履き替える。水流があるのが不思議な位の短い沢だった。

特異な地形だが、その前の杣谷本谷の美しさに比較すると印象は薄い。

沢筋の右手を詰めて行くと、丸い巨岩に突き当たる。この辺り全体が、

こんな岩で出来ているのだろうか。そういえば此の付近の地籍図上の

地名は「大石」である。昔、禿山だった頃にはもっと目立っていたはず。

巨岩を右手から回り込んで行くと、あっさりと六甲線一四鉄塔に出た。

ごく短い支沢だった割には、思ったよりも標高の高い所に登り着いた。

一四鉄塔からは、急峻な巡視路を登って、長峰山の主稜線に辿り着く。

救急通報プレート「な48−8」の道標のある所。さてどっちへ向かおう。

長峰山を越えて下って行くか、掬星台まで戻ってロープウェイで下るか。

やっぱり下るのは嫌いなので、掬星台まで登り返し、ロープウェイで下山。

しかし、今日遡行した杣谷本谷は、短い区間ながら、とても美しい所だった。

杣谷道は何十回と歩いているのに、まだまだ知らない所の多い摩耶山だ。