摩耶東谷は、かなり古いガイドブックにも、載っている古典的ルートだ。
にもかかわらず、一度も登ったことがない。最も嫌いな摩耶南面だから。
人口密集地のすぐ上、人の生活の残滓が、色濃く漂う雰囲気が嫌だった。
もし、登るとしたら、いつが適期か。夏は論外、春も秋も他所に登りたい。
冬も寂しすぎるし、紅葉の葉がいくらか残っているだろう、この季節にした。
杣谷堰堤から、焼失した民家前を通り、すぐ上で西側の谷沿いの道に入る。
思いのほか、良い道が、行場小屋まで続いてる。見上げるとロープウェイ。
行場小屋には、人がいて焚き火をし、湯を沸かしておられた。
この小屋の上は、狭い岩尾根となっており、絶好の休憩場所である。
南西側に、廃墟ホテルが間近に見える。焚き火の煙が上っている。
東谷へは、砂防ダム手前から、右手を乗り越すのだが、踏跡は薄い。
堆積物で埋まった、谷芯を歩いて行くが、なんとも薄汚い谷筋である。
やがてスリット式の砂防堰堤が現れるが、難なくスリットを通り抜ける。
この上で、ゴルジェ帯が現れる。ゴルジェの最奥が、滝となっていて、
青い細引と、古いロープが下がっている。青い細引は、大きな松の木に。
古いロープは、朽ちた細い木に結ばれている。青い細引に頼って登るが、
いつまで、持つものかは分からない。少し手前から左側を巻けるかも。
この滝上で、谷が二股に分かれており、左側の谷に入ったのが大間違い。
谷はすぐに、岩屑の詰まった急斜面となり。右手の尾根に逃げる。
そのまま急な尾根を強引に登り、現れた岩場を右側に巻き上がる。
摩耶東谷の本谷が、東側に見える。ロープウェイの架線が目の前に。
少し登ると、ロープウェイの支柱。ゴンドラの底に、脱出口が見える。
作業路をたどると、山寺尾根から天上寺跡への水平路に突き当たる。
それにはかまわず、尾根通しに登っていくと、ロープウェイ乗り場すぐ横へ。
サンテレビの、電波塔裏に回り込み、登山者で賑やかな菊星台へ出る。
快晴の空を見上げ、こんな日を、摩耶東谷に費やしたことを、少し悔やむ。