沢登りのジャンルに「本流遡行」というものが、あると思う。いや、あったと思う。
沢登りというと「滝」を攀じるという印象だが、清流を歩いていくのが「本流遡行」。
それなら何処でもできそうだが、林道が縦横に走る日本の山では、ほとんど不可能だ。
沢登りより難しい。近畿でそんなゆったりした沢歩きができるのは、私の知る限り、
由良川源流(京大演習林内)・愛知川源流・神納川南股(いずれも現在は無理かも)
淵をへつり、瀞を泳いだりしながら上流に向かい、日が暮れれば川原に幕営し、
清流をただ歩いて、稜線に向かう。そんな谷歩きが、好きだったことがある。
いくつもの堰堤に寸断されているので、遡行する価値はほとんど無いと言って良いのだが、
トゥエンティクロスと呼ばれる生田側上流部も、林道が無いので本流の雰囲気がある。
特に、八州嶺堰堤手前には明るい滑滝が見えるので、一度歩いてみたいと思っていた。
分水嶺越への分岐手前から入谷し、二十渉堰堤は登山道で巻き、再度谷に入り、
八州嶺堰堤の手前まで歩いてみた。梅雨明け直後で増水状態で、腰まで浸かる所は、
すぐ脇の登山道に逃げたので、まあ全部の区間を歩き通したわけではない。
それでも、本流遡行の気分を、ほんの少し味わえたかな。
残念ながら、八州嶺堰堤手前の滑滝は存外小さなもので、期待したほどではなかった。