摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

凍った勧進滝を見た後、寒谷左岸の支谷を登る

ここ数日寒い日が続いたので、勧進滝が凍っているのではないかと思い、

その後どうするかは決めずに家を出た。六甲道駅から杣谷に向かう頃は、

青空も見えていたが、段々雲が多くなる。風は弱くてそれほど寒くはない。

どうかなって思ってたが見事に結氷していた。何しろ8日前は一片の

氷もなかったのだから、この数日で凍ったのだろう。厚みこそないが、

出来立てという鋭さが感じられる。曇天で日が差してないのが惜しい。

この滝は結氷する条件が余程揃っているのだろう。杣谷自体は南向

きだが、摩耶別山の影になって、晴れた日も午後から日が差さない。

水量は常に少なくて、ハングした岩から飛沫となって流れ落ちてくる。

泡立つような造形が面白い。杣谷道のすぐ側にあり気軽に見れる。

周囲に雪が積もることも少なく、唐突に氷瀑だけがあるのも特徴だ。

容易に近づけるが、氷が大きな塊で落ちてくる事もあり注意を要す。

勧進滝を見ると、もう杣谷道を登る気がなくなった。なにしろ前回

歩いているのだから。それならと寒谷左岸の支谷に向かう。春に

と考えていたが、他に行きたい所も思いつかない。行ってみよう。

寒谷北尾根の道からトラバースして、最初の堰堤を越える。越え

た所に小さな谷があるが、此れは違うかもと思い、2番目の堰堤

まで登ってみる。小滝が凍っていて登れない。結局、左岸に他に

谷はなく、最初の堰堤上まで戻ってきた。右岸から大きなガレの

押出しがあり、左岸の小さな谷は今まで全く気付いていなかった。

この谷を見過ごしたのは、入口が小さかったこともあるが、北側

から流れ込んでおり、方向から考えると寒谷北尾根のプラトー

りに突き上げるかと思ったから。堰堤上には粉雪が積もっていた。

実際に谷に入ってみると、すぐに方向を変えて西に向かって行く。

これならば中腹の岩場を越えた先まで続きそうだ。谷って入口は

狭くても、奥で広がったり、意外に長く続いたりということがある。

すぐに斜面に消えるかと思った谷も、ほどなく両岸が険しくなり、

河床の岩盤も露出して谷らしくなる。僅かな水流が凍っている。

階段状の岩場も出てきた。ブッシュが煩わしいということもなく、

楽しく登って行ける。指先がかじかまないので気温は結構高い。

見覚えのある場所にやって来た。かつて寒谷北尾根のプラトーに、

治山ダム工事の飯場小屋があったと思われる。そこから岩場の裾

を寒谷に向けて、道跡が残っている。過去に一度だけ歩いている。

その道が此の谷を渡る所。架線に使われたワイヤーが放置されて

いる。普通は地面に打ち捨てられているが、このワイヤーは上方か

ら垂れ下がっている。引っ張っても動かない。先端は何処だろうか。

道が交差する所からは、両岸の壁が立つ。特に左岸は高い岩場だ。

これは比較の問題だが、寒谷右岸のルンゼに比べ多少傾斜が緩く

浮いた石も少ないので、先行する家族の後を追っていても怖くない。

登るにつれ右岸の尾根が低くなる。左岸は相変わらず険しい岩場。

正直、寒谷北尾根を登るには、中腹の岩場をどうしても通過しなけ

ればならないと思い込んでいた。でも、こんな迂回路があったんだ。

前方で右岸の尾根が、左岸の主稜線に合流しているようだ。先行

する家族は、そのまま寒谷北尾根の道へ出ていった。右岸の尾根

から垂れているのは電話線だろうか。何処に繋がっていたものか。

右岸尾根には道跡があった。すぐに主稜線には出ず、斜面を絡ん

で行く。しばらく追ってみるが、先は土砂が流れ斜面に消えていた。

寒谷のダム工事は、相当長期間続いたようで、痕跡が随所にある。

辿り着いたのは、寒谷北尾根の肩。ツツジの密生地だ。開花期に

登って来れば、印象的なフィナーレだったろう。季節にまた来よう。

下界から見ると摩耶山の雪は溶けたようだが、木々の下はまだ

雪が積もっている。いつものスニーカーでなく、ハイカットの靴を

履いて来て良かった。寒谷北尾根の道を辿り、掬星台に向かう。

雪が積もっていて、子供連れで賑っていてもよさそうな掬星台

だが、10名ほどの外国人観光客(ブラジルの方かな)以外は

人も少なく寂しい。下りは天狗道から学校林道を経て三宮へ。

この山行は、長峰大好きさんのコメントを参考に行いました。