摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

二十渉第三堰堤から谷を遡行して黒岩尾根へ

3月16日の日曜日。最近は短いコースばかり。なので今日は摩耶山まで登ろう。

いつもより早く家を出る。上空は晴れているだろうが、霞がかかって薄曇りのよう。

日曜日なので人出が多い。木曜日の雨のおかげでか、貯水地の水量が回復した。

五本松の隠れ滝も水流がある。今日は運動靴で、谷を歩くつもりだが大丈夫かな。

生田川沿いに歩いて行くと、高尾山堰堤の上流が、不思議な光景になっていた。

堰堤の出水口が詰まったのかな。上流の堰堤工事前より水量が多くなったよう。

もっと不思議なものがあった。渡渉点に橋ができた思いきや。尻切れトンボだ。

まるで飛び込み台。出来た時は砂州があったのに、その後に侵食されたのか。

それはさておき流れる水が澄んでいる。上流の工事は終わったのかもしれない。

二十渉堰堤では、補強工事が終了し後片付けの最中。迂回路の階段も解体中。

以前の登山道も整備中であった。作業の手を止めていただき、通過させてもらう。

森林植物園東口分岐の手前、黒岩尾根から小沢が流れ混むところまで来た。

白い看板が目印。常に涸れた、か細い沢。だが両岸には、顕著な尾根がある。

両方の尾根共に道があり、黒岩尾根まで至るので、いずれもよく歩かれている。

右岸の道を少し登ると、正副2基の二十渉第3堰堤がある。この堰堤の間には、

黒い水が満ちている。とても静かで好きな場所だ。広い堰堤の上で小休止する。

「鴨の浮き寝」という言葉があるらしい。つがいだろうか、二匹の鴨が正に、

水に浮かんだまま、頭を背の羽毛に突っ込んで、眠っているように見える。

最初は岸の近くにいるが、僅かな流れや風もあって、中央に押し出される。

風に押されてクルクル回ったり、二匹が離れ離れになったり。近くにいる

我々のことは全く気にしていない。うたた寝くらいかな。岸からある程度

離れると、また泳いで岸辺に戻る。そんな繰り返しを飽きずに眺めていた。

小休止のつもりが30分も、副堰堤の上で休んでいた。もとの道に戻って、

正堰堤へ回り込む。二十渉第三堰堤と銘板にある。谷の名前は判らない。

この堰堤の、上流側は大きな段差の階段があり、なんとか谷底へ下れた。

生田川に流れ込む状態からも、夏の沢歩きの対象とはならないと考え、

ヤブの煩くない季節に、一度歩いてみようと思った。堆積地を過ぎると、

ゴーロの詰まった谷筋となる。水は伏流している。此処までは想像通り。

だが、小滝が現れた。簡単に右岸を巻くが、少ないながら水流もある。

次に現れた小滝は、3米ほどの高さだが側壁が立って、簡単には巻けない。

右岸を大きく巻くが、上流は急傾斜の滑(ナメ)となっていた。直登は難しそう。

その後も岩盤が露出した河床が、断続的に続く。水流の細さに比べると、

特異といえる。両岸の尾根は岩場が少ないので、この谷の様相は意外だ。

とはいっても、岩が無く藪の濃い部分もあるので、夏向きの沢ではない。

谷の斜度がキツくなり、背後にドントリッジが、見えるようになった頃に、

6米程の滝に進路を遮られる。この滝も右岸を巻き上がると上部は滑。

6米滝の上には、4米程の小滝だが上部は急な傾斜のナメとなっており、

何処までが滝なのか判然としない。この滝の下で左岸に渡り巻き上がる。

ところが谷筋には延々と、急傾斜のナメが続いていて、中々近寄れない。

かなり登って斜度が落ちる所で一息つく。そこから見る流心は、プールの

ウォータースライダーのような様相。上の写真では緩いように見えるが、

かなりの急傾斜だ。飛び込めば50米程下まで、一気に滑り落ちるだろう。

斜度が落ちてからも、岩盤が露出した所が続く。落葉で隠された部分も、

磨かれた岩場だったりする。スリップしやすく、木につかまりながら登る。

やがて水流も岩盤の露出も無くなり、斜度も落ちて藪が濃くなってくる。

それほど歩かずに、稜線のスカイラインが見えてきた。薄い藪を分けて、

飛び出せば目標通り黒岩尾根のベンチへ。意外に面白い沢歩きだった。