安東(アンドン)市は、旅行者にとって、とても便利な街だ。
鉄道駅・観光案内所・市内バス停留所・市外バスターミナルが、横並び。
道路を渡ると、すぐに繁華街で、安ホテル・飲食店が沢山ある。
韓国ではバスターミナルから、市の中心部まで数キロ米あるのが、普通である。
登山を目的としていると、町外れのバスターミナル周辺しか、歩けないのだが、
安東市では、街歩きを楽しめた。といっても、とても小さな街だったが。
朝5時50分発の、清涼山(チョンリョンサン)行き67番市内バスは、
夜明け前、濃霧の中を50分程で、公園外の民宿村に到着した。
山門を模して作られた、売票所を通って、目的の登山口までは2kmほど歩く。
奉化(ボンファ)からのバスが、我々を追い越していく。
清涼山は行政区域としては、奉化郡に属しているのだ。
三つある登山口のうち、一番奥の登山口から登ることにする。
ようやく、夜が明けたばかりだが、自家用車で来た登山者が登っていく。
案内板によると、11月1日から一部の登山道が、例のごとく通行禁止となっている。
が、主峰の丈人峰をはじめ主稜線の主だったピークには登れるみたい。
道は、岩峰を大きな螺旋を、描くように高度を上げて行く。
樹林に囲まれているが、足元はすっぱりと切れ落ちていている山道。
バンド状の岩石層を、斜上しているようだ。
山中にある浮石寺(プソクサ)の立派な伽藍が見えてきた。
豊臣秀吉の侵略の際にも、破壊から免れたという古い寺だそう。
濃霧は、一応晴れたものの、靄がかかったようで視界は良くない。
最初のピークは、チャソ峰(840m)。山頂までは道がついておらず、
岩峰の肩の部分までしか登れない。よって展望も、270度ぐらいかな。
休んでいたら、後から登ってきたご夫婦に、リンゴをもらった。感謝。
主稜線上の別のピークから、チャソ峰を振り返る。手前の岩峰は、卓筆峰(タクピルポン)。
しばらく、樹林に囲まれた尾根を歩いていると、前方に黄緑色の建造物が現れた。
ガイドブックには載っていなかったが、最近にできたらしい岩峰間を結ぶ橋。
その名も「空の橋」(ハヌルタリ)。道標には、Sky Bridgeと英語名も併記されている。
旧道は、百米ほど下の谷底まで、一気に降りて、また登り直していたようだ。
800米の稜線上に、こんな橋を作るとは、素直にスゴイと思う。
感心したのは、資材置き場やヘリポート等に使用した跡地が、見当たらないこと。
周囲は自然のままの様子で、突然、空から橋が降りてきたようにさえ思える。
橋を渡り、コルに下って、登り返すと最高峰の丈人峰(870m)である。
丈人峰は展望はないが、少し進むと、岩峰の端に出て、西方向に視界が広がる。
相変わらず、靄がかかっており、遠望は利かない。昼食もそこそこに、下山しよう。
安東市行きのバス停まで下って、清涼山を仰ぎ見る。
対岸の滝は、山中の谷から土管で水を引いた、人工的なもののようだ。
バス停の背後は、モーテルや民宿、食堂、売店が集まった観光村となっている。
稜線上の橋といい、観光客誘致にかなり力を入れている様子だ。