摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

大国見山(500m)・・・奈良県天理市

阪神電車で奈良方面へ直通で行けるようになって久しいが、ようやく

その便利さを実感している。運賃は高いが見知らぬ土地に訪れるのは

新鮮で楽しい。暑さは厳しいが今回も駅から歩ける低山を探してみた。

冷房が恐ろしく効いた近鉄車両で大和西大寺で乗り換え終点の天理駅

JRと近鉄が直角に交差する珍しい構造の駅。一階は近鉄で四面三線

の櫛型ホームを有する終着駅。二階はJR桜井線が南北に走っている。

天理市役所のサイトから印刷したハイキングマップに従って行く計画。

駅から商店街を東進する。県庁所在地にありそうな立派なアーケード。

朝早いので閉まっている所が多いが、それなりに商売されている様子。

やがて南側に巨大な建物が見えて来た。母屋という天理教の宿泊施設。

京都の東西本願寺前にも地方の信者の為の宿泊施設があるけど、少々

スケールが違っている。その上これら母屋の数は百数十軒あるらしい。

商店街を抜けると天理教協会本部。我々無信心な者は思わず身構えて

しまうが、後で調べると誰でも見学させて貰えるようだ。この辺りは

信者の方が多数行き来されていて活気がある所。常設の屋台等もある。

さらに東進すると石上(いそのかみ)神宮。大国見山に登るだけなら

少し回り道になるけど、ハイキングマップに従って立ち寄ってみよう。

境内には東天紅鶏烏骨鶏など30羽ほど鶏が放し飼いにされている。

官幣大社で相当社格の高い神社だそう。何気なく立っている楼門も

1318年の造営で重要文化財だとか。事前に少しでも調べておけば

興味を持って参拝できたかもだが、すぐに境内を東進して出てしまう。

立派な道標は山の辺の道。三輪山麓から奈良までの約16kmの古道。

その名は知っているが歩こうと思った事はない。季節を選べば楽しい

かも。さて前方に見えるのが目指す大国見山かどうかは同定できない。

布留川の右岸に移り旧道を歩いて行く。途中の下滝本は立派な石垣が

並ぶ集落。天理市街から僅かな距離なのに山深い雰囲気となる。国道

25号線に合流するとしばらくで桃尾の滝の道標。此処から山に入る。

滝までは舗装路が続き駐車場や東屋がある。一見すると15m位かと

思われるが、公称23mで上段にも滝が続いていそう。それにしても

水量が多く立派な滝である。家族は飛沫でずぶ濡れになってしまった。

滝までの区間に沢山の幟があり、古今和歌集にも詠まれた名滝とある。

ところが古今の部分が全てガムテープで隠されているのは何でだろう。

不思議に思い乍らも東屋で遅い昼食を済ませ、大国見山への道を進む。

中腹の大親寺までは幅広い道が続く。奈良時代に建立されたが明治の

廃仏毀釈政策により廃寺になったと案内板にある。確かに無住のよう

だが、苔庭が養生されていたり清掃もされている。趣きのある山寺だ。

江戸時代には100石分の寺領があったという。いつの時代の物かは

分らぬが石仏が点在している。中でもコブラのような蛇を持った石仏

に興味を魅かれた。近くにはもっと古い時代の摩崖仏もあったらしい。

大親寺の上には日本山妙法寺関連の施設がある。此方は新しいだろう。

ここから山道らしくなる。足場の悪い所には桟道が設けられていたり、

迷いやすい所は道標が設けられている。それなりのハイキングコース。

主稜線へ上がり峠状の所で小休止。涼しい風が吹き抜け居心地が良い。

杉の植林帯が続いたので僅かな雑木林でさえ目に優しい。一人当たり

1リットル持ってきた水も残り少ない。後500mもう少し頑張ろう。

下生えにササの繁った尾根筋を行く。ここまで眺望は全く無かったが、

この季節は日差しが遮られ却って好都合。やがて路傍に大岩が現れる。

この一か月ばかり散歩もろくにしていないので体が重くて仕方がない。

11時30分ようやく大国見山の頂上に到着。天理駅から約3時間半。

小さな祠と山名板。標高500mとあるが三角点や標高点は打たれて

いない。点在する岩には丸い穴が穿ってある。狼煙に使われたようだ。

名前が付けられた頃には大展望があったろうが、現在は北西に僅かの

眺望があるのみ。眼下の白く大きな建物はシャープ総合開発センター。

その先に大和郡山市街。そして鉄塔が沢山立ち並ぶ生駒山が望まれる。

肝心の天理市街は見えないかなと探して見ると、30センチ四方位の

隙間から、天理教教団本部や独特な意匠の母屋群を見ることが出来た。

冬場に来ればもう少しは眺望があるかも知れない。一休みして下ろう。

お約束で岩に蹴りを入れる家族。ヒビが走っているがもちろん家族が

蹴ったせいではない。登りはでは感じなかったが峠までは急坂が続く。

とすると石上神社裏から眺めた三角錐の頂が大国見山だったのだろう。

峠からは北側へ下って行く。車道に出るまでずっと緩やかな道である。

杉の人工林が続き見るべき物もなかったが、麓近くで澄み切った淵を

左下に見た。後で地図を見ると池もある。下りてみれば良かったかな。

車道に出ると前方には名阪国道がある。次から次へと大型トラックが

走行していく様子は壮観だ。この日の奈良地方の最高気温は36度で

あった。この先は天理駅まで炎天下のアスファルトの上を歩いて行く。

バスでもあれば乗りたいところ。名阪国道の高架を潜り高瀬川右岸へ

渡ると豪壮な民家が現れた。奈良県に来ると住宅の立派さに毎回驚く。

農耕地が少ない山間なのに凄い。林業だろうか何か特産があるのかな。

更に下って岩屋集落に入る。我々が歩いているのが旧伊勢街道だそう。

街道と高瀬川間の狭い隙間に民家が密集しており、宿場町とは様子が

違う。どの家も大きく立派だし酒造場も一軒ある。とても豊かな地区。

その後、名阪国道の天理東インターに突き当り東に行くべき所を南に

下ってしまう。ハイキングマップを見ずに進み大失敗。歩き難い上に

交通量の多い危険な道。東に行けば白川大橋等見所もあったのに残念。

豊田町で幹線道路を外れ集落の中を歩いて行く。此方も長屋門のある

御屋敷が立ち並んでいて驚かされた。前に見える大きな建物は天理教

第百母屋である。この先は天理教関係の建物ばかりが続いている感じ。

振り返ってみる大国見山。手前は第三十八母屋。これだけ宗教施設が

多くあると固定資産税が入らない。どうしているんだろうと思ったら

天理教から市の地方税収と同額程度の寄付があるそう。正に宗教都市。

天理駅を越えてさらに西に進み天理大学近くにある食堂を目指したら、

なんと臨時休業の貼紙。失意と暑さでヘロヘロになり乍らJR天理駅

に戻ると、次の奈良行きは50分後であった。何だかついてない結末。


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