摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

とこなげ山(445m)・・・京都府亀岡市

JR亀岡駅前の宿が気に入った。充実した入浴設備がある上に無料の

朝食もそれなりの味だ。京都市内ではないので宿泊税も賦課されない。

加えて市内のバス料金が無料となる、ノーマイカーデーを選んで来た。

週間天気予報が外れて初日は雨。唐櫃越から歩いて亀岡入りしようと

いう目論みも御破算で、京都でランチを済ませて丹波口からJR利用。

翌の土曜日は晴れ。10時37分発JR園部駅行きの京阪バスに乗車。

車窓から今日歩くとこなげ山と行者山がずっと見えていた。市街から

見た行者山が尖っていて気になっていたが、南側にバスが回り込むと

穏やかな山容になってしまう。奥条バス停で下車。本来は420円也。

バス停からは瑞巌寺を示す道標が、辻々にあるのでそれに従って進む。

大きく豊かそうな家並の奥条の集落を抜け、立派な瑞巌寺の石垣の下。

ここにハイキングコースを示す公設案内図がある。手書き風で和む絵。

獣除けのフェンスから山道に入る。落葉が厚く積もっていてフカフカ

ハイキングコースと云う割には歩かれてないよう。来るにあたっては

亀岡市公式のユーチューブ動画を参考にした。ちょっと様子が違う?。

大きく掘れた幅広い道が続く。荷車が通れる幅員があり緩やかである。

山頂を目指す杣道ではなくて、旧の瑞巌寺への参詣道であったようだ。

500年の歴史を持つ瑞巌寺が現在の場所に移転したのは昭和35年。

そんな広い道を歩いていながら倒竹帯に突き当ってしまった。進めず

山側に回って行ったのが間違いだったか、谷側に迂回路があったよう。

さすがに突破するのは無理と諦めて、少し戻って適当に高みを目指す。

下生えの無い落葉樹の林を上って行く。あんなに広い道を外したのは

情けないし、瑞巌寺の遺構も見れなかったのも残念な事。ただ新緑が

美しいのが慰めだ。斜面はやがて尾根状になり詰めて行くと峠に出る。

この山塊の東側に山陰本線が走っている。JR千代川駅をスタートし

行者山を越えて千手寺(とこなげ山)を往復、或いは鹿谷に下った後

JR並河駅へ歩く人が多いよう。奥条から歩く人は少ない様ではある。

それにしてもこんな広い道を何処で迷ったんだ。右手の斜面は倒竹を

処理された跡なのかな。今年に生えて来たような若竹ばかりで爽やか。

此の先で千手寺墓所に出会うと、そこからは舗装林道が伸びている。

臨済宗妙心寺派獨鈷抛山(とこなげさん)千手寺に到着。弘法大師

唐から投げた独鈷が松の枝に引っかかっていたというのが開山の謂れ。

従前は娑婆山と云い。獨鈷抛山というのは寺の山号という位置付けか。

445m標高点が背後のピークに打ってあるが、そこが獨鈷抛山頂上

という認識も薄いようだ。山門越しに見渡す稗田野の農村風景が良い。

じっくり楽しみたいが、その前に展望所があるというので行ってみる。

境内は隅々まで清掃されて美しい。ハイカーにも開放的な所も本山の

妙心寺を思い起こさせる。種々の案内や山門脇の由緒書きなども親切

で分り易い。石段を登って行くと小さな稲荷社がありその上が展望所。

杉林の中に私設ベンチがあるので一休み。足元に山門。稗田野の田園。

一番遠くに見えるのはポンポン山だろうか。その手前左側には唐櫃越。

亀岡市街は更に左に小さく見える。実に穏やかで豊かな日本の原風景。

もう少しゆっくりしたかったが、四人組が上って来られて山門へ下る。

元々京都の愛宕神社の山門であったが、明治期の神仏分離政策により

移築されたのだそう。上階に鐘があって鐘楼門と言うのが正式な名称。

此の先で二等三角点(行者山)のピークを越えて行くが、展望皆無と

聞いている。今しばらく眺望を楽しんでおこうか。針葉樹が少なくて

落葉樹の新緑が未だ瑞々しい。期待以上の景色で来て良かったと思う。

立派な石垣の下には滝行場も設えてあった。一方で手水舎の吐水口が

素朴な木魚という禅寺らしくて好ましい。余り寺社仏閣に関心のない

方だがこのお寺なんか良い。因みにドローンやコスプレ撮影も可とか。

鹿谷(ろくや)に下る古道があるようだ。現代の参道は舗装路なので

避けていたが、古道があるなら紅葉の頃にでも再訪してみたいと思う。

行者山に向けて舗装林道を歩いて行く。どうも神前集落まで続くよう。

峠状の所に案内板がある。此処で舗装路を外れて堂徳山から行者山に

向う。ハムは五月から腰痛に加えて、微熱と咳症状に悩まされている。

大した上りでもないのに息が上る腰も痛む。家族がどんどん先に行く。

堂徳山頂上には「従是南鹿谷村」と村界を示す石柱がある。神戸市と

山田村との境界争いで摩耶山中に「神戸市界」の石柱があるのと同じ。

山道沿いに稗田野財産管理区の新しい看板もあり、今も現役なのかも。

山から採れる山菜や薪炭が、重要な資源であったのはそう遠くない昔。

神戸の脊山に同じ名前の山があるので、堂徳山という名には親しみを

覚える。その名の由来を知りたいと思うが、案内板等はなく分らない。

堂徳山から緩やかな尾根筋を10分ほどで行者山。二等三角点がある

ものの展望は皆無なうえ、尾根の高みにすぎず山頂らしさは感じない。

此処で一休みするが、まだ々腹に朝食が残っていてお茶を飲んだだけ。

千代川に向って下って行くと巨岩が現れる。基部には祠が刻んである。

守護荒熊大明神と記されていて修験道なんだろう。山歩きしていると

諸所で見かけるが、神道でも仏教でもない訳で何なのか説明できない。

さらに下った巨岩には岩屋があり、役行者が前鬼と後鬼を引き連れた

像が祀ってあった。全般にそれほど古い物ではない。現代に至っても

信仰を集めているよう。もう一段下の岩屋は不動明王が祀られていた。

巨岩群から下って行くと石の鳥居や燈篭があった。実に立派なもので

往時の様子が偲ばれる。此処より下は山道の両側に広い平削地が次々

現れる。それぞれに建物が立っていたとしたら相当に大きな宗教施設。

山道も三車線ほどの幅になる。帰って調べてみたら鹿谷には大谷鉱山

という錫やタングステンの鉱床があったそう。その遺構かも知れない。

だが位置関係も不明だし案内もないので、実際の所は分からず仕舞い。

巨大な貯水槽が並ぶ場所に出て、更に下って行くと京都縦貫自動車道

をトンネルで潜る。左に先月歩いた三郎ヶ岳、パラグライダーの離陸

施設も見える。右には牛松山が、更に背後には地蔵山と愛宕山の連嶺。

京都市内からほんの僅かな距離に、豊かな農村風景を残した亀岡市

見直した一日であった。JR千代川駅から嵯峨嵐山駅へは240円也。

阪急嵐山駅から金券ショップで買った株主優待券400円で帰宅する。

 

今日のBGM 


www.youtube.com