摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

屯鶴峯(154m)二上山(517m)・・・奈良県香芝市・葛城市

この5月、橿原神宮前から眺めた二上山がなかなかにカッコ良かった。

その成り立ちが火山である故らしいが、もちろん現在活動していない。

ただ二上山だけでは時間を持て余しそうなので屯鶴峯にも立ち寄ろう。

阪神電車尼崎駅で奈良行きに乗車し、鶴橋で近鉄大阪線に乗り換えて

二上駅で下車する。通勤通学客の乗降がとても多いので駅舎の写真は

撮らず仕舞い。右にニュータウン、左に農村風景を見ながら西へ進む。

長閑なようで交通量も多くなぜか落ち着かない所だ。穴虫交差点から

県道703号線に入る。昔のガイド本では近鉄関谷駅から歩くとされ

ているが、国道165号線に歩道がなくて危険な為このルートにした。

昔から名前は聞いているが、登山の対象とは思えずハムは初めて来る。

家族は中学生の時に友人と来たらしい。いかにも昭和な観光地という

看板に迎えられる。階段を上るとベンチがあるので朝食を兼ね小休止。

二上山の爆発により岩屑が沈積して、その後の隆起で凝灰岩が露出し、

1500万年間の風化浸食を経て奇岩群となったとか。話は壮大だが

スケールはさして大きくない。雨が降ると石灰質が溶けて滑り易そう。

その名前はツルが屯(たむろ)している様に見えるから付いたと云う。

自分に想像力が足りないのか、浸食が進んだせいか、ツルよりヒツジ

の方が適当ではないかな。取り敢えず154m標高点を目指して進む。

大和線四二鉄塔が立つ154高地。一応ここが屯鶴峯頂上と言えそう。

これから進む二上山の雄岳・雌岳が望める。その懐にピラミッド状の

造成地があって、盛んに重機が働く音が聞こえて来る。一体何だろう。

概念図では周回して入口に戻るように記されていた。154高地から

すぐ谷間に下りる。ここが非常に難解な四差路。三叉路にみえるけど

少し北寄りにも西側に上る道がある変則的四差路で、二度も間違えた。

終戦近くに陸軍航空部隊の指令室として造られた地下壕があるとかで、

それを見に行く道もあったようだ。私設道標も幾つかあったが我々の

目的には合わない。154高地往復だけの方が良かったかも知れない。

再び県道703号線を西進して穴虫峠。ここから大阪府太子町となる。

右側の山肌は葡萄を育てるビニールハウスが立ち並び、谷間には近鉄

南大阪線。珍しい景色だが歩道がなく大型車が多いので見てられない。

やがてダイヤモンドトレール北入口に着く。1970年大阪府により

整備された自然歩道。大昔に葛城山から金剛山を越えて紀見峠駅まで

歩いた事があるが、杉林の中の階段歩きに閉口した嫌な記憶しかない。

それ以来は縦走大会に誘われても絶対行かなかった。当時ダイトレと

呼ぶことが多くて大阪トレイルの略だと思っていた。今回調べ直すと

金剛石(ダイヤモンド)に因んだとか。何とも昭和っぽいネーミング。

早速に土留階段が連続して辟易となる。重機の音が大きくなり造成地

が見えた。住宅地ではなさそうだ。気になって調べてみたが何なのか

分らない。ヤマップ等の山行記事で言及している人も見つけられない。

北入口案内板も消えかかっていた。その後に現れる道標の類も同じだ。

最近に再整備されていないのは、やはりトレイルとして人気がないの

かな。80年代は年に何回か、各種団体の縦走大会があったと思うが。

ひたすら階段を上り下りするばかりというのは、今も変わらないはず。

この二上山の上りも小刻みにアップダウンを繰り返し、思ったよりも

消耗してしまう。早朝散歩のやりすぎで坐骨神経痛のハムにはキツイ。

ダイトレ北入口から60分で泉南東大阪線一二六鉄塔。正面には雄岳。

鉄塔の周囲は伐採されて陽射しがキツイ。気温も30度以上ありそう。

此の先路傍に私製ベンチが有り大阪市内のビル群を遠望しつつ小休止。

まだ頂上は遠そう。金剛山のように杉の人工林ばかりでないのが救い。

屯鶴峯へ立ち寄ったので此のコースを歩いているが、二上山だけなら

上ノ池横登山口から直接的に雄岳を目指した方がはるかに効率が良い。

鉄塔から20分程の所で現れた道標。二上山までは0.2kmとある。

一瞬ぬか喜びするが200mでは、雄岳はおろか雌岳も到達しえない。

この道標が意味する二上山とは一体何処だったのか。分からず仕舞い。

謎の道標からしばらくで疎林に笹原が広がる場所に出た。そこかしこに

ササユリが花咲かせていて、大勢の方がカメラを手に右往左往している。

そんなに珍しいかなと思うけど、思ったよりも広範囲に咲いているよう。

大阪側から舗装された遊歩道が上がって来ており、次々とハイカーが

来られる。少し下に駐車場があるそう。西向きの斜面に展望台がある。

皆さんユリにしか関心が無いらしく、展望台に上って来る人はいない。

ササユリ自体は珍しくもないし、密生していないので写真は一株づつ。

だが一本の茎に幾つもの花を咲かせているのに気が付いた。よほどに

此の場所の地味がササユリに合っているのか。それもちょっと不思議。

舗装遊歩道を上がって行くと展望草地やトイレのある馬の背という所。

全体に都市公園のような雰囲気。行政区分は大阪府太子町になるよう。

そこから雄岳へ500mの表示。韓国の山のような桟道を歩いて行く。

517mの標高点が打たれている雄岳頂上。展望は無いが存外に広く、

神社や行場、石碑等の宗教的な施設が点在している。それだけに息が

詰まる様な感じがして、腰を下ろす事もなくそそくさと下山にかかる。

馬の背に戻り100mで雌岳の頂上。こちらも平坦で広く眺望は僅か。

シートを広げるのに適した草地だが、陽射しが強くハイカーは東側の

日陰に固まっておられる。さて此処は大阪府だろうか奈良県だろうか。

山頂の南側には巨大な日時計。短い影がちょうど12時を指している。

我々も日陰を探し一休みする。ササユリが咲く草地は山頂の直下まで

広がっているよう。写真撮影するハイカーの声が間近に聞こえている。

雌岳から望む葛城山、その向こうには金剛山。少しボーっとした景色。

湿度が上がって来たよう。雌岳の頂上は学校遠足とかには良い場所だ

ろうが、我々には落ち着かない所だった。少し早いが下ってしまおう。

南側の岩屋峠まで下って来た。ここから祐泉寺を目指すのが最短だが、

まだ12時40分と少々時間がある。地図を見ると南東の尾根に原岳

というピークがあるよう。遠回りになるが時間調整に立ち寄ってみる。

竹内峠に向かうダイトレを外れて東へ下る尾根を辿って行く。やがて

小さな広場に達する。此処が原岳のようだ。私製ベンチが幾つかある。

座ってみると涼しい風が吹き抜けて気持ち良い。僅かな水分で小休止。

原岳から先は尾根が二分する。双方に道があるが我々は左の道を下る。

この下りが存外に雰囲気が良い道だった。植林帯は嫌いなのに何故と

考えたら、ダイトレから外れたので土留階段が無いからと思い当たる。

下り着いた所には大きな溜め池があった。池畔から二上山を振り返る。

雌岳と雄岳の鞍部はあんなに深かったのか。近鉄当麻寺駅を目指して

下って行く。當麻寺には寄る気はなかったが何故だか引き寄せられる。

つまり此の付近の道は、全て當麻寺に向かうようになっているみたい。

境内に関しては拝観料は不要なよう。北門から入ると立派な曼陀羅堂。

その向こうに西塔。その荘厳さに息を飲む。拝観者は我々のみの静寂。

もっとも信仰心の無い我々は門前の町並みの方が気に入った。歴史を

残しつつ現代の生活が営まれている様子が好ましい。駅前で中将餅を

二個(200円)買ったが、家族はこれは飲み物だ!と絶賛していた。


今日のBGM 


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