摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

雪の大文字山(465m)・・・京都市左京区

十年ぶりの寒波が来ると予報された昨日は、午前中までポカポカ陽気。

大文字山を歩こうと丸太町通を東進し、岡崎神社に立ち寄ったまでは、

悪くなかった。だが哲学の道まで行くと、霰交じりの雨が降り出した。

寒冷前線が通過したのか、気温も急激に下がって雨も本降りになった。

ほうほうの体で撤退決定。その後一旦は回復するが夕方には雪が降り

始める。15センチ程は積もったか。一夜明けた今日出直してみよう。

とは言え京都でのランチは外したくない。11時30分開店のお店で

食事した後に大文字山に向かう。さほど気温が上がっておらず積雪は

溶けずに残っている。多少雪は舞っているがそう悪くはならないはず。

平安神宮の北側を通過する時点で12時30分。道が凍っているので

歩くのがかなり遅くなる。昨年も同じぐらいの積雪の日があったけど

午後にはすっかり溶けていた。その日に比べると寒波って感じがする。

昨日も立ち寄った岡崎神社。今年の干支のウサギが氏神の神使なので

札所は長蛇の列だったが、今日は人影もまばらだ。狛兎も凍っている。

さらに丸太町通を東に向かうと、事故処理の警察車両に続いて救急車。

交通量は極端に少ないが凍った道で、スリップ事故でもあったのかも。

白川通を渡ると高級料亭や美術館。それに宗教法人や個人の豪邸等と

広大な敷地の建造物が並ぶ。市バスも通る道だが少々遠慮がちに進む。

鹿ヶ谷通りから適当に疎水沿いの哲学の道に出る。散策する観光客の

姿も見られる。疎水東側の住宅が瀟洒というか個性豊かな邸宅が多い。

いつもはどうかと思っていた奇抜な洋館も、雪景色の中では様になる。

疎水に架かる法然院橋を渡って坂道を上れば、法然院の石段下に着く。

藁葺きの山門を潜って境内も少しだけ拝見するが、時間が気になって

よく見ていない。白砂壇も苔も雪に埋もれていたがそれはそれで風流。

急ぎ足で墓所に戻り大文字山へ向かう。入口には道標の類が無いので

分かり難いというか知らなければ入って行けないだろう。林に入ると

観察の森の公設道標に、大文字山への道であることが併記されている。

少し上がれば道は二手に分かれる。右の谷沿いの道は前回下ったので

今日は尾根筋の道を歩いてみよう。道は北側を目指して斜上して行く。

柔らかい粉雪なのでそんなに滑らないが、やっぱり歩き難く息が上る。

尾根に乗ると気まぐれな青空から光が差し込んだ。正面の白い山肌は

五山送り火の船形であろう。とすると手前に見える緑地は府立植物園。

中央の道路が北山通か。余り馴染みのない地区で同定には自信がない。

こんな景色を見ると何故か「森は生きている」という児童文学の題を

毎回思い出す。ストーリーは全く覚えていないのに題だけ頭に浮かぶ。

その本の挿絵だけ記憶にあるんだと思う。家族に話しても無視される。

すんなり尾根を詰めるかと思った道だが、銀閣寺側に回り込んでから

谷道との合流点に戻ってきた。既に多くの人が歩いてトレースは明確。

きっと積雪を知って、朝一番に家を飛び出して来られた方が多いはず。

特にカメラを趣味とする人が来られたろう。午後となったこの時間は

雪遊びする子供連れと単独ハイカーに出会っただけ。少し急な斜面を

こなすと火床の下の平坦地に着く。いつもは方向を見失いがちな場所。

でも今日は先行者のトレースを追えば、自然と第二画の下に行き当る。

此処まではそれほど寒くなかった。それどころか厚着しすぎた家族は

暑いとか言っていたが、火床の雪原を渡って来る西風がすごく冷たい。

金尾まで上がると冷たい風が更に強くなる。メインルートに合流した

ので雪面が踏み固められ凍っている。持参の簡易アイゼンを装着する。

滑って危ないからというより、歩き易くし体力を損なわない為である。

吹きさらしの大師堂で食事の準備してたカップルがいた。よほど森の

中の方が良いと言おうと思ったが、それこそ余計なお世話というもの。

いつもなら景色を楽しみ立止る火床だが、振り向きもせず駆け上がる。

樹林に入れば風は止む。ただし気温は低いようで雪はサラサラのまま。

アイゼンに雪が付着してダンゴになるような事もない。いつもは下り

に使う道だが上がってみると緩斜面が続く。もっと急だと思っていた。

山頂が近づくとトレースが幾つかに分散する。今まで気づいていない

脇道が色々あるのかも。迷うのも嫌なので一番西寄りを踏跡を追った。

火床からは15分足らずで前方が明るくなった。頂上が近いのだろう。

14時、三等三角点のある大文字山頂上に到着する。既に多くの方が

来られていたようだが、今はもう閑散としている。意外にも風は弱く

気温が低い事を除けば休憩適地。でもザックには水しか入っていない。

それに時刻的に先を急いだ方が良い。ところでどっちに下るとしよう。

北面の谷筋を回って銀閣寺に出るコースが魅力的だが時間が足りない。

南に向かって南禅寺から御池通りに抜けるのが効率的かと思えて来た。

頂上からほんの少し南側に下るだけで雪が緩んでくる。斜面の向きで

気温も変わるのだろう。ずいぶん沢山の雪を被った木。重いだろうな。

歩いた事はあると思うが、記憶の中の地図と実際の景色は違っている。

如意ヶ岳方面には一人位しか進んでおられない。その為か違った道を

進んでいるような気がして仕方ない。でも京都一周トレイルの道標を

見て現在地が分かった。西へ行けば鹿ヶ谷。町には近いが少し急かな。

回り道になるが南へ向おう。トレイルが林道と交錯する地点まで来た。

家族が雪原に飛び込む。漫画でチャーリー・ブラウンが良くするそう。

カフカに積もった落葉や雪を見る度、真似をして飛び込む人である。

聞いて見ると飛び込んでも地面の固さは感じなかったそうだ。積雪は

20cm以上有ったのかも。あの林道の状態はノルディックスキー

楽しむのにちょうど良い感じとか話しつつ下ると、雪が益々湿っぽく。

アイゼンの下で湿雪がダンゴになる。高下駄を履いているような感じ。

我慢できなくなって足を振り回すと拳大の雪塊が飛んでいく。しかし

外す気にはならない。この先にまだ急な箇所がある事は分かっている。

また京都一周トレイルの道標に助けられる。南禅寺や若王子神社への

分岐まで来た。頂上から此処まで50分。思っていたより遠かったな。

トレイルを進み七福思案処から下るより、初見の道で南禅寺に下ろう。

京都一周トレイルから外れて下って行く。奥之院の滝行場に着くはず。

そんなに標高差もないしすぐに滝の上の谷間に入ると思いきや、延々

植林帯の中を歩いて行く。途中に小さな池が有ったが変化がなく退屈。

時間は20分程だが長く感じた。ようやく道が小さな谷に入り下って

行くと見覚えのある磐座。小さな木橋を渡って石段を下ると人工的に

作られた滝行場に到着。この先は山道ではなく舗装された歩道である。

ちょうど一ヶ月前に来ているが、雪が積もった景色はまた新鮮である。

階段道の雪が踏み固められ凍っているので、アイゼンは外さずに下る。

8年前に韓国で間に合わせに買った安物だけど、意外にも役に立った。

最勝院の裏門でアイゼンを外し境内を通らせていただく。雪を被った

伽藍がとても絵になる。台湾や韓国からの観光客の姿もチラホラ見る。

交通機関がマヒして多くの場所には行けないだろうが観光には良い日。

と思いきや南禅寺は此の日は拝観を中止し、売店も門を閉ざしていた。

JR線は午前中運休だったので、職員の出勤も儘ならなかったのかも。

水路閣に来るとどうしてもアーチを潜りたい人。観光客のお邪魔だよ。

有料区域は休止でも門を閉ざさずに、観光客に境内を開放されている

大度には感服する。その一方で古都税騒動を思い出したり、京都市

広大な面積を占める寺院が、固定資産税を納めていない事を考えたり。

御池大橋に戻って来たのは16時過ぎ。青空も見えるが時折雪も舞う。

市街に戻っても路面に雪が沢山残っていた。それに何となく違和感を

感じる。京都市内では雪かきって習慣はないのかと思う府北部出身者。