摩耶山の麓から

Mt.Maya Without a Map

御陰神社から大比叡(848m)

京都市内からも間近に秀麗な姿が望める比叡山。だが山上は延暦寺

伽藍で埋め尽くされ、山麓からはドライブウェイ、ケーブルカー等が

伸びている。故に山歩きの対象として少なからず敬遠する所があった。

京都一周トレイルで縦走して以来だけど、ヤマレコでいつも拝読する

yamaneko0922 さんが、興味深いルートを掲載されたのでトレース

してみようと思う。市内から京都バスに乗って八瀬駅前バス停で下車。

高野川対岸に渡れば叡山ケーブル八瀬駅。3月17日まで運休だとか。

昔は山上にスキー場があった事を思えば隔世の感がする。春節休暇の

中国人観光客も今年は見込めないのかな。駅前から南側へ下って行く。

対岸に叡山電車の終着駅を見つつ瀟洒な住宅街を進むと、瑠璃光院や

高級ホテル等が現れる。完全に場違いだなと思いつつも進んで行くと

御影神社の碑が現れホッとする。どうやら別荘の塀に沿って行くよう。

後から地図を確かめると花園橋バス停から北上しても距離はそれほど

変わらないし、市バスの均一区間(230円)でバス代も安く済んだ。

檜林の中の参道を進んで行くと、石垣に囲まれた立派な神社が現れる。

案内板によると由緒正しき神社のよう。高野川から見上げたピークは

御生(みあれ)山と云い東山三十六峰の一つとか。神社の一段下から

幅の広い古道が山上を目指す。ハイカー向けの標識等は見当たらない。

さらに進むと路傍に石垣が現れる。屋敷跡等ではなく此の道の擁壁の

よう。どれだけ重要な道であったのかと思う。断続的に100m程も

続いたが、この古道はやがて尾根を離れて右側の斜面へ向かって行く。

尾根にはハイカーが作ったと思われる踏跡がある。どちらを進もうか

と一瞬迷うが、古道はやがて斜面を迂回し尾根に戻るはずと推測して、

踏跡を追う事にする。しかし見た目より急峻で散策気分が吹き飛んだ。

一段上がっても古道は戻ってこない。それどころか尾根筋はますます

急峻となる。木の根を掴んでズリ上がって行く。浮いた岩もあったり

気が抜けない。ただし踏跡は続いているようだから間違いは無かろう。

再び茅場のような所に出た。存外に展望が良い。右に瓢箪崩山の尾根。

高野から岩倉の町並み。宝ヶ池プリンスホテルも見える。その背後に

雪の日に歩いた東山。右の学校のような建物は一泊数万の高級ホテル。

結局のところ古道は尾根に戻ってこなかった。そもそも斜面を行く道

だったかも知れない。両岸とも大きく崩落しているので道があったと

しても寸断され歩けたものではないだろう。怖くて崖上に近寄れない。

下生えは全くなくて歩き易いが、これ以上斜度が上ると嫌だなと思う。

比叡山京都市側は花崗岩で出来ている。専門的な事は分からないが

六甲山の花崗岩と比べると、真砂化すると粒が細かく粉のようである。

白川の名はそんな細かい砂が川底に沈殿している様子から付いたとか。

いい加減な事を言ってはいけないが、谷沿いの道は崩れやすいだろう。

尾根が斜面に消えると踏跡が乱れ分かり難くなる。高みに向かうだけ。

谷側の崖上に出てみると市内が望める。それどころか梅田のビル群や

ハルカスも見えた。その位置関係を確かめてみると成就山から見えた

高層ビルはハルカスとも思える?。梅田のビル群は天王山の陰になる。

曇天の今日でも視認できるので間違いないと思われる。命題の解決に

少し気分が良くなる。相変わらず踏跡は一定せず幾筋にも分れている。

獣道かと思う斜上する踏み跡も多い。かまわず歩き易い所を選ぶのみ。

やがて南側からの尾根と合流する。真下に見える溝状の地形は雲母坂

であるとか。今は倒木に埋もれ通行止めになっている個所。南側には

ベンチがありハイカーの姿も見えるが、このまま尾根を辿ってみよう。

尾根の踏跡はやがて雲母坂の古道と合流する。倒木処理はされている

ので歩く人はいるのだろう。現在の一般道は数十m南側の斜面にある。

この道の出口にはトラロープが張られていたが、旧知の場所であった。

一般に四つ辻と呼ばれている比叡山の山上の一角。右へ行けば大比叡。

左に進めばケーブル山上駅を経て延暦寺だが、電波塔を経由する道で

繋がっているので周回できる。前回縦走した時は左の道へ進んでいる。

真っすぐ大比叡へ進もうかと思っていたが、ほんの僅か寄り道すれば

展望が得られそうと家族が勝手に西側に進んで行く。三本の電波塔の

西側に回り込むと大展望が広がった。木々に薄く積もった雪が綺麗だ。

昨日の夜に街を歩いていると、空は晴れているのに何か降っていると

家族がしきりに呟いていた。ハムは感じなかったが風花が舞っていた

ようだ。ベンチがあるが寒いので休む気にもならず先に進む事にする。

電波塔の裏から植林帯を一登りすると、明るい斜面に出る。上空には

叡山ロープウェイの架線が走る所。やはり冬期運休中。全長486m、

標高差136mと、駅舎への上り下りを考えると歩いた方が早いかも。

ロープウエイ山上駅舎下の車道に出て巻き上がって行くと、いきなり

広大な駐車場に出てしまう。事前に何の予備知識もなかったので吃驚。

目指す大比叡は駐車場の向こう。そうかバスで来ると此処に着くのか。

その代わり北から北西にかけての眺めが良い。ひときわ大きい山容は

蓬莱山だろうか。遠く湖北の寒風から赤坂山辺りの山々も見えている。

右側には琵琶湖の水面。島が見えているのは恐らく近江八幡沖島だ。

北西へ目を転ずれば京都の北山。どんぐりの背比べで同定は出来ない。

道標の類は見当たらないが駐車場脇の歩道を辿って行けば、大比叡に

行き着きそうだ。歩道から林道に入り分岐があるが何方でも良さそう。

何となく高みに歩いて着いたのが大比叡頂上。一等三角点があるけど

樹林に囲まれて眺望は皆無。背後には延暦寺の巨大な貯水槽があって、

とても山頂らしい雰囲気ではない。ハイキングの目的地としては不適。

西吾妻山以来の「がっかり山頂」だと家族も同意。休む気にもなれず

帰る事に。駐車場から車道をケーブル山上駅へ下って来た。運休中で

トイレも使用できないが、保守点検の為か大勢の人が働いておられる。

ケーブル山上駅から電波塔下に戻ってきた。驚いた事に1時間半前は

雪が積もっていたベンチがすっかり乾いている。太陽の力って凄いな。

テルモスの湯でインスタントスープや紅茶の小休止。日差しが暖かい。

帰りは市バス均一区間の花園橋バス停を目指そう。四つ辻から雲母坂。

午後からは快晴で光が溢れている。そういや比叡山の最高峰に登った

のに仏教寺院の一つも見ていない。大比叡で折り返すのも悪くはない。

今はそうでもないだろうが、延暦寺はハイカーに対して居丈高だった。

ハムも家族も悪い印象しか持ってない。出来るなら近づきたくはない。

真っすぐ下れば修学院へ。我々は水吞対陣之碑から西側の梅谷へ下る。

下り始めこそ荒れた感じの山道であったが、谷に下り着けば林道状に。

上りは結構なアルバイトだったが、下りは標高の割にあっけなかった。

真夏に京都一周トレイルを辿った記憶とは、疲れ具合がずいぶん違う。

梅谷登り口でグーグルマップを見ると、花園橋バス停まで徒歩20分。

正面の小山を北側に回り込むのが一番近道とか。便利になったものだ。

きっちり20分で花園橋。ちょうど京都駅行きバスが来て飛び乗った。